Marumaru's TinyPlaza

(2010.11.27)(book)プラナス・ガール

『プラナス・ガール』(3巻まで)/松本トモキ


※作品内容のネタバレを含みます。ネタバレを気にする方は気を付けて下さい。


を読んで興味を持ったので現在発売している3巻まで買ってみました。

女の子の格好をしているんだけど、身体は男の子(本人談)と言う、所謂「男の娘」のお話です。この手のジャンルは局所的にはかなりの盛り上がりを見せているらしいのですが、自分は好き嫌い以前に興味が無いジャンルでした。

ネットを見ていても、「男の娘」が出ている作品と言うだけで"またか"とスルーしていました。強いて言うなら、作家買いで『少女少年』/(やぶうち優)を読んでいるぐらい。

正直な話、上記リンクのレビューが自分の言いたい事を簡潔にまとめてくれているので、細かい感想を飛ばして、自分の結論から書きます。

自分が思うプラナス・ガールの魅力は、ヒロイン・絆の「男の娘」故の罪悪感。これに尽きます。

作中でヒロイン・絆は主人公である槙に好意を寄せていて様々なモーションを仕掛けます。槙は普通に女性が好きなので、中身が男(であると公言している)の絆には当初、恋愛感情を感じていません。「見た目は可愛いけれど、中身は男だから恋愛対象としてはナイナイ!」というスタンス。まあ、普通ですよね(笑)

槙は絆の事を嫌っているかと言うとそうではなくて、むしろ仲良しなんです。外見が可愛くて気さくに軽口を叩き合えて、しかも中身が男で男心を分かっているから、男友達として接することが出来る、遊べる。

いつしか、槙に対して健気で男の好みのツボを押さえたモーションを仕掛け続ける絆に対して、心変わりがおきます。「あれ?絆の中身は男だけど……ありなんじゃない?」と。

でも、絆からしたら槙が好きとは言え、槙が自分の事を本当に好きになったら困ってしまいます。だって、二人とも男ですから、いくら好きでも一線を越えることは出来ません。

この部分で生じる、「好きなんだけど、好きになってもらっても槙の思いを受け止めることが出来ない」という罪悪感。でも、槙は好き!っていう感情の葛藤が切な過ぎる。

上手く言葉で説明出来ないので該当シーンを貼ります。

  • 3巻 第16話:理想的偽装カップル?(後編)
    • $2
  • 3巻 第17話:男子高校生な日常?
    • $2

相手の事が好き。でも、相手も自分の事を好きになってくれると将来的に二人とも不幸になってしまう。これって辛いことですよね。

だから、絆はどれだけ槙の事が好きでも、一方的にチョッカイをかけるだけの片想いに留めておかないといけない。そんな風に振る舞おうとする絆が、明るくサバサバとした行動と相まって余計に切ないんです。その辺りの心情の描き方が上手い。

『プラナス・ガール』を読んで「男の娘」というジャンルに対する見方が変わった気がします。最終的に一線を越えられないという障害があるからこそ、「好き」という感情のプラトニックな部分だけが漉されて、その純度が高まっている。……と言ったら言い過ぎかな。

でも、男の娘が居て、男性に恋愛感情を抱いていたなら決して避けては通れない問題。今まで考えたことも無かった問題に気づかせてくれたというだけでも『プラナス・ガール』は意味があると思う。

絵柄も爽やかで可愛いですし、ファンタジーだと割り切って読めば面白い漫画だと思います。まだ3巻までだから追いかけやすいですし。

あ、最後に一応断っておきますけど、私は普通に女性が好きですよ(笑)




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