Marumaru's TinyPlaza

(2011.06.20)(movie)星を追う子ども

『星を追う子ども』


※出来るだけ具体的には書かない様にしていますが、ネタバレと取られても仕方ない書き方をしています。予めご了承下さい。


全体

新海誠監督の新作映画がやっと大都会岡山に来たので見てきました。『ほしのこえ』や『秒速5センチメートル』の人と言えばピンと来る人も居るのではないでしょうか。

この映画を観て、新海誠さんは物語よりテーマを重視して描く人なんだ。と改めて感じました。今までの新海さんの映画のテーマは「時と時間を越えた想い」「喪失」辺りだと思うんですが、今回は「喪失からの旅立ち」と言ったところでしょうか。ワクワクする冒険心を満たしながら、考えさせられるテーマが描かれています。

この「喪失からの旅立ち」ですが、ストーリーの骨格の1要素として使われる事はあっても、作品の全てをつらぬく背骨として描かれる事は少ないように感じたので、2時間の尺を全部使ってこの”テーマ”を描いたこの映画はある意味新鮮でした。

どうしてこんな描き方をしているかと言うと、ラストがテーマを語り終えたところで終わっていると言うね……。え?登場人物達のその後は!?みたいな(笑)ですが、すっきりして後味は良い展開でした。世界のその後や登場人物のその後をきっちりと描く事が主題ではないと映画を観ていれば分かるんですよ。そう言う意味では所謂、セカイ系と言える作品かもしれません。

逆に「ほしのこえ」を始めとする他の新海さんの作品を観ている人だと、「今までと毛色が違うけれど、やっぱり新海さんの作品だ」と確信出来るはずです。

展開について

観ていて一番気になったのが、とにかくシーンの切り替えが多い事、これに尽きます。1回が10分程度のシリーズものを観ている感じで、少し話が進んだら「次回に続く!」とばかりに場面転換があります。この場面転換の多さと唐突さが、物語よりもテーマ重視と感じた理由です。シーンをテーマを描く為のパーツとして扱っているように私は感じました。

そして、シーンごとに天門さんの壮大で格好いいBGMが流れるんですが、一つのシーンが短すぎて、BGMが盛り上がってきたところで次のシーンと言うような感じだったのが本当に残念。シーン的にもBGM的にも、盛り上がりきったところをもっと味あわせて欲しかった。

後、見栄えの関係かもしれませんが、やたらと高いところから落ちる&飛び降りるシーン多すぎ!確かに、飛び降りたり飛び込んだりするシーンは冒険心を満たしてくれてワクワクするんですけどね。

それに、これは新海さん映像の真骨頂なので突っ込むのは野暮かもしれませんが、夕日→夜→朝日と続くシーンがあったんですが、夕日と朝日の逆光表現を効果的使いたいから逆算して夜のシーンを入れたのでは?と勘ぐってしまいました。いや、逆光シーンは本当に素晴らしい表現でしたが。

美術について

新海さん作品と言えばこれと言える美術。特に「空」「逆光」「自然・風景」相変わらず綺麗です。本当に綺麗。なんと言うか新海さんの描く風景は、「こう在ったら良いな」と言う理想の景色を、現存する物・景色を使って描いている気がします。だから、「本物のように綺麗」ではなくて「本物より綺麗」なんです。それは、格好良さの象徴として描かれる都会であり、童心の情景の象徴として描かれる田舎であったりします。

だから、確かに現代の風景なんですが、そこには理想や思い出のフィルタがかかっていて、綺麗なものはより綺麗になるようにコントラスト調整されている気がします。そんな純粋に綺麗な景色の中、どこまでも広がる空、そこに浮かぶ雲。その中を突き抜ける光の筋。そして回るカメラワーク。正に新海節とでも言うべき職人芸です。

関係ないですが、この映画のEDクレジットを眺めていると、美術スタッフの数が群を抜いて多いんですよ。一般的な劇場アニメだと動画スタッフが多い印象だったんですが。それだけこの映画の美術にかける意気込みが伝わってきます。

まとめ

絵もテーマもストーリーも、良い意味で純粋な映画でした。この映画を観るメインの層はいい年をした大人なのかもしれないけれど、子供や思春期の少年少女に本当に観て欲しい映画だと思いました。新海さんの名前で観に行ったオタクがこんな場末のBlogでグダグダ書くような映画じゃない気がする。浪漫と冒険、ワクワクやドキドキを何の疑いも無く追いかけられる時期に真っ直ぐに観て欲しい、そんな映画でした。

その他

細々した事を箇条書き。

  • 雲が広がる青空→射し込む逆光→回転するカメラワーク→走るキャラクター→天門さんBGMで盛り上がる。と言う一連の流れは、OPなりPVなり予告編で一番威力を発揮すると思った。他意はないですよ?
  • 新海さん映画の好きな順番は、『ほしのこえ』>『秒速5センチメートル』=『星を追う子ども』>『雲のむこう、約束の場所』 やっぱり「ほしのこえ」が一番エッセンスが凝縮されていると思う。伝えたい事がストレートに伝わってくる。
  • ヒロインの声がイカ娘の人で、声もまんまイカ娘だったので、いつか「~ゲソ」と言い出すんじゃないかと気が気じゃなかった。
  • 最後のアスナの台詞。あの言葉をあのシーンでアスナに言わせるのは、私は説得力が足りないと感じた。




<(2011.06.15)そうだ 京都、行こう。 (2011.06.21)スタジオ行ってきた>