Marumaru's TinyPlaza
(2017.01.29)(book)ツァラトゥストラへの階段
『ツァラトゥストラへの階段』全3巻/土橋真二郎
デスゲームもので個人的定評のある土橋真二郎さんの初期の作品。
この人の作品、『生贄のジレンマ』を最初に読んだんですが、未だにそれを超える作品に巡り逢えて居ない気がします。
特殊能力を持った主人公が、能力者だけが呼ばれる「囚人ゲーム」というのに参加をしながら、別れた姉の足跡を探す……ってストーリーなんですが、まず何よりもゲームのルール説明が不十分に感じました。主人公の周囲の情報だけ物語展開に応じて(読者に)公開されるので、ご都合主義を非常に感じました。
それと要素を詰め込みすぎ。特に、姉を含めヒロインの数を増やしすぎたんじゃないかと。最後の流れでどうして彼女を選んだかっていうのがちょっと納得出来なかった。あと、お姉さんどうなったの?
あと、能力的なものを便利に使いすぎ。電脳空間の絡みもあって、ちょっと何でもアリにやりすぎたのではないかと。
総じて、読むのに非常に想像力を使う作品でした。仄めかして終わるのと丸投げは違うと思うんだ。
(2017.01.29)(book)光秀の定理
『光秀の定理(レンマ)』/垣根 涼介
所謂、「モンティ・ホール問題」がテーマの一つになっている一風変わった歴史小説。
理屈を知っていても分かりにくい確率論を賭けに使い日銭を稼ぐ坊主とその坊主に引き寄せられた侍、そして侍に辻斬りにあいかけた浪人、明智光秀。
登場人物それぞれの立場は違えど、それぞれの立場に応じた、世の理みたいなものを考えながら物語が進んでいきます。群雄割拠の血なまぐさい戦国時代だからこそ、力ではなく叡智で世を生きていこうとする人たちのお話。理を説明するにあたって、原始仏教の教えを多く引用しているようでした。
個人的に面白かったのは物語が一段落ついてからの最終章。明智光秀の供養の為に本能寺の変の真相を登場人物が話し合うシーンがあるのですが、この小説で脈々と語ってきた理は、この最終章を説明する為にあったんじゃないかと思えるぐらいに面白かったです。
後で知ったんですが、最近になって光秀関係の資料が色々と発見されて、光秀の考察が熱を帯びていた時期だったんですね。
余談ですが、光秀の妻、煕子の描かれ方が非常に素晴らしかった。優しくて賢くて、恋人のようで母親のようで、こんな奥さんが居たら側室つくらないよね、と。
色んな要素が入っているので、どれか一つでもひっかかりがあれば楽しく読めるのではないかと。ここ最近読んだ本の中ではヒットでした。よかったらどうぞ。