Marumaru's TinyPlaza

(2019.08.25)(book)M 愛すべき人がいて

『M 愛すべき人がいて』/小松 成美


浜崎あゆみは私達の世代の共通言語で、好き嫌いは別にしても、誰も表立って話題には挙げなくても、通じるんですよね。時代を作る歌手ってそういうものかもしれない。

私も当時は、特に好きと言う訳でもなく、むしろ世間で流行ってるからって理由で毛嫌いしてる節もありましたが、それでも当時はまだ音楽番組がTVで普通に流れていて、私も林原めぐみさんがランクインするのを楽しみにCDTVをチェックしていたりすると、必ずと言っていい程に上位に入っていて、聞く気は無くても有名どころの曲は頭に残ってる、そんな歌手。

それから少しして、多少ぼかしますがごく一部で有名になった『awareness』の動画に浜崎あゆみの『monochrome』が使われており、オタク特有の手のひら返しでその曲を好きになっていたりしたぐらいの頃、『M』が出たのを覚えています。教会の中で輝かしい光を浴び、ドレスを纏い、舞い散る羽と共に歌っているMVはとても衝撃的で、CD初回にMVが付くと知ってすぐに買いに走った記憶があります。

前振りが長くなりましたが、そんな浜崎あゆみの「事実をもとにしたフィクション」作品です。と言うか、別にどこまでが事実だろうか虚構だろうかはどうでも良いです。もともと僕らが見ていたのは歌手でありアイドル、偶像としての浜崎あゆみなので、偶像として求める姿を提供してくれる方が大事。

で、内容なんですが、女の子が敏腕プロデューサに見初められ、稀代の歌手としての階段を上っていく段階でお互いに恋に落ち、そして訪れる別れ……。うん、アイドルとプロデューサの話ってエンタメの定番ですよね。ちょっと内容が薄い感じもしましたが。

ただ、浜崎あゆみの歌詞は全て本人作詞で、その経緯と、それらは全て浜崎あゆみからプロデューサへの公開ラブレターだったって件は面白かったです。歌の歌詞が一曲丸ごと挿入される場面が何度もあったんですが、確かにその歌詞の内容が物語の展開に沿っており、話を盛り上げていました。

そして、作品のタイトルにもなっている『M』の歌詞が作品の〆として物語と上手くリンクさせて使われてるのが、曲が好きな人として嬉しかったです。

浜崎あゆみがどうこうと言うよりも、この構成を考えて作品にした人がすごいな、と。そしてハードカバーとは思えない時間で読み終わりました。




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