Marumaru's TinyPlaza
(2026.03.19)(movie)パリに咲くエトワール
『パリに咲くエトワール』
『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』を観に行った時に宣伝が流れていて気になっていた作品。
一言で言うなら劇場版世界名作劇場といった映画でした。奇を衒わず正統派の実力で観客を魅了してくれた。
画家を目指すフジコとバレエに憧れる薙刀道場の跡取り娘の千鶴がパリで出会ってお互いの夢を目指す、所謂ガールミーツガールなんですが、二人がパリで出会うまでの過程をばっさりと流していた構成に驚きました。確かにそこは時間をかけるところではないけれど、こういう演出で一気に飛ばすのもアリなのか、と。
とにかく二人の情熱に圧倒される作品ですが、お互いが夢を目指す過程で、明確なゴールに向かって進んでいく千鶴と、千鶴の夢を応援するという大義名分の元に自分の夢は後回しになっているフジコ、その対比が印象的であり観ていて辛い部分がありました。ですが、初めて観て感動を覚えて自らのパッションの源泉となっているバレエの『ジゼル』、その演目を応援する千鶴が最高の舞台で踊っている姿を観て、迷いが吹っ切れ自分の道を見つける。そんな展開が本当に綺麗でした。
こんなある種の王道ストーリーを、圧倒的な熱情と技巧で描かれているんだから、そりゃ圧倒されて何も言えないです。特にバレエシーンや各種絵画や背景美術などの力の入れようがすごい。誤魔化さずに徹底的に真正面から力押しで突き進んでいるような感じ。抽象的な表現ばかりですが、この映画についてはあまり他の人と語るような事はないかもしれません。ただただ自分の中に栄養として取り込まれている。
緑黄色社会の主題歌、挿入歌もよかった。
アニメーションが持つ力のようなものを感じさせてくれた作品でした。子供に観て欲しいし、アニメが好きだって自分で思ってるような人は観ると良いんじゃないでしょうか。
2026.03.20追記
ストーリーに関してですが、何者にもなれなかった私はすべての感情に蓋をしてましたが、真面目な人、特に創作に携わる人ほど感じるものがあるのではないかと思いました。アニメとして正統派で真正面から王道で殴ってくる一方、テーマ性としてもすべての言い訳を真正面から打ち砕いてくれます。
あまりキャラクターについて語る作品ではないかと思って敢えて書かなかったのですが、オルガさんが本当に格好良くて大好き。自分が取り組んできたものに対しての真摯な態度、そして教え子であろうともオペラ座のバレエ団に入団した千鶴を一人のバレリーナとして敬意を持って接する態度。本当に格好いいんです。
オルガと千鶴の関係は、オルガが自分の練習衣裳を渡すところも尊いですし、ただでさえ東洋人としてダンサーの中で浮いている千鶴が赤い派手なロシアンバレエの衣装を着て踊っている姿はとても目立つものです。ですが、そんなことよりも強い意志と確かな実力で未来を勝ち取っていく千鶴の姿、いつまでもオルガを師として尊敬する姿が本当にもう。
余談ですが、フジコと千鶴、そしてジャンヌについて、それぞれの衣装の色がフジコ:黄、千鶴:青、ジャンヌ:赤(ピンク)だったのがとても印象的でした。
この映画は観る人によって評価が分かれると思うんですよね。描きたいものを描く為に様々な部分に取捨選択が存在します。その細かい部分が気になる方も居るでしょうが、取捨選択をしてまで伝えたかったテーマというのは、見た人の価値観や生き方によって受け取り方が違う部分です。
1912年パリという文化が隆盛を極めた時代、場所に日本から来た少女二人がそれぞれの夢を叶えるために青春を全力で駆け抜ける姿は、ただただ胸を打ちます。この時代が作品の舞台としてしばしば取り上げられるのは、この時代にしか存在しない良い意味でのごった煮感があるんですよね。第二次産業革命を終えて世界中の文化が凄まじい勢いで発展して、移動手段も確立され世界中が交じり合う。文明の発展の結果もたらされる後の大戦までの間の本当に限られた時間にだけ存在する煌めき。その時代に駆け抜けた人達の物語は物語を創るにあたってとても魅力的なものだと思います。
