Marumaru's TinyPlaza
(2012.12.21)(book)八月の魔法使い
『八月の魔法使い』/石持 浅海
今までに何冊か読んでお気に入りになっている石持浅海さんの本。(この国。、君がいなくても平気)
とある一部上場している洗剤メーカーでお盆の閑散期に開かれた重役会議。半ば役員の暇つぶしの為に開催されたその会議は突如登場する「工場事故報告書」によって様相が一変する。その会議にPCのオペレータとして参加していた女性は助けを求める為に階下で働く彼氏に会議の様子を電話で流す。それを聞いた主人公がひょんな事から事件の内容を推理することになるが、そこで露になる真相とは……。そんな話。
この話(この人の話)の何が好きって、主人公が普通のサラリーマンなところ。島○作みたいにスーパーサラリーマンが一夜を共にした女性の力で成功する訳じゃなくて、草食系と言われても仕方ないようなサラリーマンが知恵を絞って何とかしようと頑張っている姿が読んでいて面白い部分かもしれません。
一つの会社の会議室と総務部フロアと言う二部屋で展開されるほぼ会話オンリーで進む謎解き話。サラリーマンらしく社内の力関係に配慮しつつ推論を重ねて真実に近づく展開は、ともすれば地味で退屈なものかもしれませんが、そこにリアリティが生まれるのかもしれません。そして、実際でもこれだけ思慮深く話せたらこんな風に未来が変わるのかな?と思わせてくれるような話。
最近よく聞くフレーズですが、「人の死なないミステリー」ってこういう話にこそ相応しいと私は思います。
とにかく舞台が狭くて話が飛躍したりもしない、一つの建物の中で完結する話なので、落ち着いて読めます。こういう話好きです。
余談ですが、人の心を掌握して思い通りに物事を運ぶ人は、傍から見ると「魔法使い」って感じてしまいます。