Marumaru's TinyPlaza

(2016.02.14)(book)あの日

『あの日』/小保方晴子


手記だから仕方ないのかもしれませんが、一人称視点で語られる私語り……と言うか、「私を見て」感がすごい。この人は自分の事が本当に好きなんだろうな。学生時代から研究者への流れを読んでも格好良いものに憧れるというか、流されてる感を覚えました。私にもそういうところはあるから、共感する部分はありました。

あと、とにかく表現が芝居がかってる。自分の半生なのでどれだけ修辞法を尽くして語っても良い訳だけど、あまりやりすぎると、物語の主人公のはずの小保方さん自身が、自分の人生を絵空事のようにある種、他人事のように見ているように感じてしまう。

で、何より、一番知りたかったのは「STAP細胞は本当にあるのか?」「再現できるのか?」という部分なんだけど、結局その部分についてははぐらかされてるんです。試料をすり換えられた、研究所の人にはめられた、心がボロボロだ、「私は悲劇のヒロインだ」うん、それは分かった。じゃあ、結局肝心のSTAP細胞はどうなったの?って話です。

実験対象の細胞は生き物だから、毎回微妙な加減が必要。再現実験では、監視が厳しく、実験後の試料に手が触れられなかったから調整が出来なかった。うーん……その辺りを再現可能なようにデータとして記録するのが研究者のする事じゃないのかな。それとも、STAP細胞の研究は量子力学の世界に足を踏み込んでいるんですか。

何かにつけて、実験している時が一番心が開放される、自分が自分で居られる、みたいな事が書かれているんですが、実験自体じゃなくて、「実験をしている私」が好きなんじゃないだろうか。

レトリックの宝庫なので、手記としてではなく、エッセイとして読むと面白いかもしれない。




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