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(2022.04.27)Kindleの「3月のライオン」セールについて

Kindleって便利です。昔は本はやっぱり紙じゃないと!と思っていましたが、いざちょこちょこと買いだすと、どこでも読める便利さと手軽さでどんどんと買う本が増えています。読み返す時に便利なんですよね。嵩張らないし。

電子書籍の強みを生かして、大幅割引のセール等もよくやっているので、セールにつられて買ってしまう事もしばしば。

そして、試し読みもシリーズものの最初数巻をまとめて無料とかにする事が結構あるんですよね。最近はSNS等で最初1話を試し読みで公開してくれてる作者も多く、今まで知らなかった作品に触れることが出来て嬉しい限りなんですが、最初の数巻をがっつりと読ませて貰うと、完全に心を掴まれてそのまま続編を買い続ける事も稀によくあったり。

そんなKindle(電子書籍)の無料販促戦略ですが、何だかんだでフェアの時に無料分だけをDLしてそこで終わってしまっている作品が多い事も事実。やっぱり無料と有料(金額問わず)の壁は大きいです。


閑話休題。

ところで、最近開催されているKindleセールに『3月のライオン』が含まれていました。

2022/04/27現在のセールの為リンク切れの可能性があるのでスクリーンショットを貼ります。

このセール、最初見た時は2巻・3巻だけのセールで1巻は通常?不思議なセールが開催されてる!?と思いましたが、ちゃんと見てみるとすごく考えられているセールで、思わず唸ってしまったので、ちょっと紹介させて頂きます。

まず、1巻なんですが、514円の定価販売(紙媒体は513円)。なんですがポイントが483pt返ってくる大盤振る舞い(実質94%OFF)。

そして、2巻・3巻が30円です。

このセールを利用して『3月のライオン』を買おうと思った人は、まず1巻を購入すると思います。すると483ptが返ってくるので、そのままポイントを使って安くなっている2巻・3巻を購入すると思います。この時点でポイントの残りは423pt。

で、4巻・5巻も374円で定価(535円)からすると30%OFFの値段になっています。なので、余ったポイントでそのまま4巻を購入する人も多いかと思います。最初は買う気が無くても、3巻まで読み進めて続きが気になって、ポイントも余っているとなると、勢いもつくというもの。

ここからがこの売り方の上手いところで、4巻まで購入するとポイントが49pt残った状態になります。そして4巻まで読んだ後に続きが気になった時、5巻も同じく30%OFFの474円で販売していたとしたら……。ポイントもちょっと余ってるし5巻まで買っちゃうか!ちょうどセールだし。となってもおかしくないんですよね。

こうして余った49ptを使って、474円→425円で購入したとすると、定価から比べた割引率はほぼ20%。5巻までの購入を誘導した時点でセールの目標は達成していると思われるので、それ以降は気になった人は定価で買ってね、と。本当に上手いと思いました。


1巻をポイント94%還元、2巻・3巻を30円、4巻・5巻を30%OFFのセールでしたが、これ、1巻~3巻までを無料にして4巻5巻を30%OFFにした場合のセールよりも多分5巻まで購入する人の割合が高いと思います。

無料でばら撒けば多くの人がDLするとは思うんですが、それは『3月のライオン』という理由以上に「無料」という理由があるから。3巻まで無料で読んで、そのまま続きを購入する人も多いでしょうが、無料分だけ読んで後は買わないという層も同じように多いと思うんです。

だから、まず94%ポイント還元の「ほぼ実質無料」という撒き餌で1巻を買わせて、貰ったポイントだから使わないと勿体ない心理で30円の「ほぼ無料」の2冊を「自分の意思で購入」させる。この時点で購入へのハードルはだいぶ下がっているんですよね。そこへ、474円(30%OFF)という「常識的な値引き率の巻」をポイントが余ってるからと言う理由で同じく「自分の意思で購入」させる。

そして最後に、残った49ptを使って5巻を実質30%OFFで購入させる。ここまでくると普通によくやってるセールで購入するのとそんなに違わない値段になっています。

「無料(≒実質無料)だから」って事で手を出した作品を、気づけば「普通によくあるセールの値段で購入」と言うところまで持って行ってるこの手腕。そして、何より大切なのはお客さんに自分のお金でこの作品を購入した、という「経験」(実績と言っても良いのかな)を受け付けている点。

で、前提として『3月のライオン』ってすごく面白い作品なんですよ(途中までしか読んでないけど)。1巻無料や1話無料みたいな何らかの形で作品に触れたら、一定数の人はそのまま継続購入すると思う。そんな面白い作品を、前述の巧妙な手段で5巻まで購入した日には、色々とテンションが上がってそのまま買っちゃう人もそれなりに居ると思うんですよね。

例えここで5巻までしか購入しなかったとしても、自分のKindleライブラリの中に5巻までの閲覧権と購入経験があれば、次に『3月のライオン』がセールになった時にもチェックする可能性が増えるだろうし、セールごとに数冊ずつ買っていくという事にも繋がっていくんじゃないかと思います。これは最初3巻を無料でばら撒いただけでは出来ない事だと思う。

あと、最初に購入した時のポイント還元を使ってそのポイントで続きをジワジワ買っていく、というプロセスの購入体験自体が、ゲーム的な要素を持っていてちょっと面白い。と書くと言いすぎでしょうか。まとめ買いで一括購入した気持ち良さとはまた違う気持ち良さを感じられるような気がしました。

なんかポイント還元セールで変に語ってしまいましたが、電卓叩きながら見てると本当によく出来たセールだなと思ったもので。

あ、ちなみにここまで書いておいてなんですが、このセールに関連して、1巻~3巻は期間限定でブラウザ上で無料閲覧出来ます。無料で読んでみたいだけ勢と、購入して自分のものにしたい気持ちがある勢を完全に分けて考えているところが、ますます上手だと思った次第。




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