Marumaru's TinyPlaza
(2025.07.03)(book)栞と嘘の季節
『栞と嘘の季節』/米澤 穂信
先日読んだ『本と鍵の季節』 の続編。
前作は根底のテーマが繋がっている短編集でしたが、今回は1冊まるっと使った長編小説です。
いやー、もう本当に面白かった。本に没頭する時間の幸せ。
高校が舞台で、図書委員の仕事中に偶然見つけたトリカブト入りの栞を巡る話なのですが、日常に潜む非現実感の描き方が巧みなんです。どこにでもある学園生活の中で生じる違和感、その謎を追っていくうちに話はどんどんと広がっていきます。しかし、気づいてみれば物語の風呂敷は綺麗に畳まれ、また普段の日常に戻っていきます。
実際はこんなに上手く行かないかもしれない、こんなに綺麗に全てが繋がる事なんて有り得ない。だけど、物語の中ぐらいは、日常と地続きの危険と謎に身を投じて奔走し、そして全てが綺麗に繋がって収束するストーリーがあっても良いと思う。
ミステリというと、とかく殺人事件が発生するものですが、危険な匂いを漂わせながらも結果的に誰も天に召される事のない、そんなミステリがあっても良いと思う。それが青春ミステリと言われる所以なのかもしれません。
今作は、前作の最後で姿を消した友達、詩門の謎に迫る物語かと思ったら、詩門はあっさりと戻ってきていました。そして、失踪した原因について二人の間で交わされた言葉と仕草が最高に格好良かった。人生何回転生したらこんなコミュニケーションを交わす事が出来るんだろうか。詩門の失踪についてはこれだけで一本書けそうな気がするから、また読める日が来るのかな。
構成に関しては、まさにチェーホフの銃が活きる展開でした。その関係性をミスリードさせる伏線も張り巡らされていて、まんまと綺麗に騙されました。なんてやさしい嘘。
あと、表紙と装丁の雰囲気がとても好き。余談ですが、本についている栞の色も表紙に合わせてあって素敵。このタイトルで栞がついていないと片手落ちですよね。
ワクワクしながら読め、青春っていいなと思わせてくれる物語でした。
