Marumaru's TinyPlaza

(2013.04.24)(book)届け物はまだ手の中に

『届け物はまだ手の中に』/石持浅海


この人の話は構成が本当に面白い。一つのネタ(トリック)を膨らませて綺麗に話を組み上げられたが読んでいてすごく気持ち良いんです。

今まで読んだ石持さんの作品は、この本を含め一つの限られた世界だったり空間がテーマの短編が多かったように思います。どこにでも居そうな設定の普通の立場の登場人物達が与えられた舞台の中、会話を重ねる中で進んで行く物語の中で生まれる違和感から謎が深まっていく展開がいつもながら見事でした。

今回は、復讐の為の殺人を行った主人公が、殺した男の首を友人に見せる事で復讐が完了すると考え、首をボストンバックに入れて友人宅を訪れたところから始まる物語。友人に復讐の証拠を見せ、自分は逮捕される事で積年の復讐劇は終わるはずだった。ところが、友人に会えないどころか気付けば友人の息子の誕生日パーティーに参加する羽目に。その中で主人公はホスト達の様子が何かおかしい事に気づく。その疑問はやがて確信に変わり……そんなお話。

あらすじだけ見れば、殺人があったり、その首を持ち運んだりと何やらバイオレンスな内容に見えますが、実際に読むとそれらの要素はあくまでトリックを成立させる為の要素に過ぎないんだと分かります。むしろ、字面から感じる生々しさを取り除くように軽やかに進む展開と、最後の見事な大団円。殺人から始まっているのに、最後の見事な大団円に、思わずこれは喜劇なの?って思ってしまったぐらいです。

それにしても、頭の回転が速い人達が繰り広げる行間を読んだ会話劇は個人的に大好きです。自分が会話しながら考え事するのが苦手なので、賢い会話と言うものに憧れる部分があるのかもしれません。




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