Marumaru's TinyPlaza
(2013.11.22)(book)砂の王国
『砂の王国』/荻原 浩
ホームレスになった元証券マンの主人公が新興宗教を作るお話。
新興宗教と言うと響きがあまり良くないですが、宗教自体は人の心の拠り所となる大切なものですよね。何かを信じる事によって心に大きな幹が出来、生きる活力になったり、辛い時の支えになったりする大事なものだと思います。
そんな宗教ですが、この話の主人公は競馬で大当たりしたのをきっかけに、占い師とイケメンのホームレス二人と組み、三人で新興宗教を立ち上げます。そこで書かれている人身掌握術のような描写がとても面白い。
どんな人でも最初は他人を警戒して心を開きませんが、相手が自分の事を見透かしたような言動をすると一気に心を開いてしまうものです。曰く、この人は私の事を分かってくれている。曰くこの人を信じて付いていけば幸せになれる。と言った感じで。そして悩みを抱えた困っている人程、一度心の扉を開いてしまえば妄信的になるものかもしれません。
その辺りの人の心を掴みながら団体を大きくしているプロセス、そして大きく膨れ上がった団体の「意思」とはどこに存在するのか?と言う辺りが上手く描かれていました。最後がちょっと物足りない終わり方に感じました。ちゃんと伏線を張ってるんだから、次回作でも良いから続きを読ませて欲しいです。
最後に、読んでいて印象に残った一文を引用します。
救いを商売にしてしまった私に、救いを求める場所はもうない。
『砂の王国』/荻原 浩