Marumaru's TinyPlaza

(2015.08.11)(book)塩の街

『塩の街―wish on my precious』/有川浩


有川浩さんの初期作品。今の作風からみるとびっくりするぐらいのSFファンタジーでした。

東京湾に巨大な結晶が落下してきてから、世界は人間が塩に変わる「塩害」が発生し、日本は人口の半分が死滅した荒れた果てた世界になっていた。そんな世界が塩に変わろうとする世界の中で繰り広げられる、少女の恋のお話。

エンターテイメントのお手本のような作品。起承転結がしっかりあって、話の展開もうまいし、登場人物が少なくて読みやすい話でした。恋愛要素もしっかり入ってるし。電撃小説大賞の大賞受賞作らしいですが、そりゃ大賞も獲るわって作品でした。

突然飛来した結晶(というか隕石)によって人々が塩になってしまう。そんな極限状態の中の話ですけど、何故そういう状況になったかとか、それが何なのかとかは全く書かれていないんです。ただただ、その極限状況の中で必死に生きて恋をしようとする少女と、それを取り巻く人たちの話。これって所謂「セカイ系」になるのかな?読んでいて、頭の中にずっと「最終兵器彼女」が回っていました。

しかし、「少女の願いが世界を救う」(物語的にはだいぶ違います)という王道テーマは、王道だからこそ上手に調理してあると、本当に美味しくいただけました。繰り返しになりますが、電撃大賞を受賞したのが納得の作品でした。

これは文庫版ですが、後から内容を修正、加筆したハードカバー版が出たそうです。




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