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(2016.11.22)(book)げんしけん21巻

『げんしけん』21巻/木尾士目


げんしけん二代目の最終巻。

私は、物語を読む時に一旦特定の要素が気になりだすと、その部分だけを追ってしまう癖があるように思います。森博嗣のS&Mシリーズも、途中から犀川と萌のやり取りばかり気になっていたし。

そんな私にとっての「げんしけん」は初代・二代目を通じて、斑目と咲のお話だと思っています。。告白してフラれてそれでも想い続ける斑目の一途さと、全てを分かった上でいなし、諭し、次への手助けをする咲の姉御気質溢れる優しさに惹かれていました。

二人の関係は、初代の最後で、咲が斑目の片想いを見事にスル―して想像の余地を残した事で悶々としたものですが、二代目の途中、舞台裏を明かすような感じで当時を振り返り、進展するんです。斑目が咲に事実上の告白をして、咲がそれを断る。曰く、高坂とつきあってるから。もし、高坂とつきあって居なかったらというifに対しては「そういう未来もあったかもね」と応えています。

このシーンのやり取り好きでした。セリフだけ書くと普通なんですが、げんしけんってセリフ以外にも背景、表情の使い方がシーンの行間を描くのに上手に使われています。想像の域ですが、斑目の事は決して嫌いじゃない、そしてげんしけんの集まりも居心地が良い、だからその全てを壊さないように気を使った。そして、勇気を出した斑目に対しては精一杯の思いやりをみせる咲姉さんが格好良すぎる。

そして、そんな中で迎えた二代目最終回前話。心の中で想いを引きずる斑目に対して、咲さんは手を差し伸べて、背中を押してくれる。「ここから先は私はもう一切知らないから 自分で考えて決めなさい」

好きな人に告白して、フラれて、すっきりして、それでも気持ちはどこかで燻っていて。そんな斑目を巣立たせる咲さんが最高でした。咲さんの澄んだ目が最高です。そして彼女は意外とよく泣く。

「げんしけん」は物語の節目となる部分で、部室の扉を外から見たカットを入れますが、それぞれのシーンで意味合いが違っていて面白いですよね。幾度となく挿入される扉のカットは、読者視点から見た「げんしけん」の物語に対するイメージだと思っています。




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