Marumaru's TinyPlaza

(2018.05.17)(book)ブラッドハーレーの馬車

『ブラッドハーレーの馬車』/沙村広明


先日、ネットの試し読みで魅かれて、沙村広明の「波よ聞いてくれ」を買ったんです。んで、友達と「この人って『無限の住人』のイメージだったんだけど(未読)、この本も面白かったですよー。」みたいな話をしていたところ、「沙村広明なら『ブラッドハーレーの馬車』ただし、自己責任で読んでね。私は好きだけど!」みたいな会話があったんですよ。何それ、超気になる。

ってことで、Kindleで買ってきました。アマゾンプライムに登録した関係で、Kindleがワンクリックで購入できて……便利な反面ちょっと怖い。


学生時代に桐生操とか読んでいたんですよ。「本当は恐ろしいグリム童話」とかの。んで、サブカルにかぶれて完全自殺マニュアルとか、世界史の拷問図鑑みたいなのを見たりする訳です。有名どころだと、苦悩の梨とかファラリスの雌牛とかね。

それはさておき。歴史を紐解けば、場所に関わらず裏では色々とエグい事が行われていた訳です。人間がやってることですからね。モリスンさんも「この世に悪があるとすれば、それは人の心だ」って言っていますし。

ただ、行為の描写は非道いものだとしても、それは物語を描く上で無くてはならないものなら、それは必要なものなんですよね。エロやグロをフィクションとして割り切り、それを必要とする物語と作品として受け取る事が出来る。それが精神的に大人になるという事でしょう。


この作品、救いが無いんですよ。でも、そこが魅力的なのかもしれません。何と言うか「館モノ」に通じる魅力を感じました。現実と隔離された場所で行われる退廃的な行為。時間の経過と共に失われていく権力。それでも、その繁栄の残滓にすがりつく様に体裁を保とうする人々。

そんな中、時代は移り変わろうとしている。屋敷は忌まわしい出来事の記憶と共に消え去り。全ては歴史の闇の中に葬り去られる。うん、館って最後は炎上しないとね(ちょっと違うけど)。

読む人によって印象に残る場所が違うかもしれないし、人によっては嫌悪感しか覚えないかもしれないんですが、私は印象に残った作品でした。好きっていうのとは少し違うかも。

ここまで書いて思ったんですが、以前に「親なるもの 断崖」の読んだ時の感覚に似ていました。




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