Marumaru's TinyPlaza

(2019.10.13)(movie)空の青さを知る人よ

『空の青さを知る人よ』


※ネタバレがありますのでご注意下さい。





































鑑賞後すぐに書いてるので、箇条書きで。

前情報無しで観てるので違ってたらすみません。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」「心が叫びたがってるんだ」に順ずる3部作の最後になるのかな。原作一緒だし、舞台も一緒だし。

相変わらず、秩父の田舎を舞台に繰り広げられる小さな人間関係に焦点を当てたお話。

あの頃描いた未来に、今の私は立っていますか?そんな問い掛けを感じる映画。

作中曲のガンダーラ、赤いスイートピーは流石に年齢層上過ぎるだろ、と思いつつも対象年齢は30~50ぐらいを想定してるんじゃないかって作品。

鑑賞後の気分がとても気持ちの良い映画でした。

多くを語り過ぎていないのが好き。最後のシーンも、それまでの流れがあれば、オニギリの味を昆布からツナマヨに変えようかって一言で全てを語られてるんですよね。あの描き方が本当に心地良い。

最後はライブで終わるかと思いつつ、そこをばっさりカットしてるのが新鮮。うん、だってそれは別に描きたいところじゃないものね。

エンドロールで二人のウェディングボードがあって、おっ!?って思ったら、がっつり写真の流れで描いてて良い意味で気持ち良かった。そりゃあの展開だと、後からくっつくのは自明だもんね。

ただ、しんのすけって結婚したってことは秩父に帰ってきたのかな。その辺りの事が気になる。ノベライズとかで補完されてるのかな。

結婚式の写真と成人式の写真が並んでるのが涙腺にくる。

多分だけど、あかねの境遇からして子育てをしてる母親にすごく刺さるんだと思った。

31歳ってもう子供が大きくなってる年だもんね。

楽器のシーンが音の鳴り方、メンテナンスとかのシーンも含めてリアルだった。歪ませたベース音にノイズが乗ってる辺り。てか、ベース弾きながらガンダーラ歌えるって熱い。

劇場を出るとき、前に居た中学生ぐらいの子が「天気の子と似てたね。空を飛ぶシーンとか。」って言ってて印象的だった。そう見るのかー、と。

確かに空を飛ぶシーンは印象的だけど、生霊が出てる時点でもう何でもありだと思ったから、アニメならではの演出って感じにしか見えなかった。

どうせなら音楽でやって欲しかったけど、それをやると「ここさけ」と同じになっちゃうもんね。

観光促進な意味もあるんだろうけど、背景の実写がとても違和感を覚えた。実写そのままだとアニメと混ぜた時に汚く見えちゃう。その辺り新海監督はすごいって改めて思った、実写を実写以上に綺麗に輝かせて描いてアニメとして違和感無い背景にしてるものね。

エンディングのあいみょんが良かった。あいみょんって何だかんだで使いやすいんだなって。テーマに寄せた曲だし、下手に無名の歌手を使うよりは良かった。サビ前の進行が「君はロックなんか聞かない」を思い出した。

これは好みなんだけど、登場人物も少なくて、狭い人間関係・世界の中の話を掘り下げて描く作品がとても好き。そういう作品にはマリーさんの脚本がとても合ってると思う。

酔ったしんのすけをホテルに連れて行った時の会話が好きだなぁ。

繰り返しになるけど、最後のオニギリのシーンがとても好き。母親代わりで育ててきたあおいが、いつの間にか当時母親役にならざるをえなかった自分の年まで育って、これからは自分の幸せの優先順位を上げても良いよね。っていう心の機微をオニギリの具で書く妙。あそこでスパっと話が終わっているから余計と格好良い。

つまり、話のヒロインはあかねってことだよね。というか、あかねの物語だと感じた。

なんだろ。昔思い描いていた未来、なりたい自分になれたのかどうかは自分にしか分からない。でも、過去はもう変えられない。納得して今から先の未来を考えるべきだ。そんな事は分かりきっているんだけど、自分が歩いてきた道を自分に問いかけるという意味で、一定以上の年齢の人に刺さる映画だと思った。

作中であおいの活躍が色々あったにせよ、結局あかねは全部自分で決めてるんだよね。しんのすけが帰ってくる事も知らなかった。で、今の姿のしんのすけを知った。心を交わした。あおいの成長を実感した。そして自分の心に素直になった。

しんのすけも、何だかんだで紳士だったのがね。ホテルのシーンとの対比で余計に。

関係ないけど、映画を劇場で見るのって本当に娯楽を享受してるなーって改めて感じました。楽しいだけの時間を過ごしてる。



ぐら 「空の青さを知る人よ」、大人が見た方が楽しめるのは高校生の男女よりも30代の不器用な恋愛の機微が丁寧に描かれてるから。30歳を越えた人ほど刺さると思う。アニメオタクで無くても刺さるはず。失恋したあおいがラストシーン手前で一人で歩いて帰るシーンが、彼女の成長とやるせなさを見事に演じていて、胸をつかまされる。 (2019/10/15 23:07:25)

まるまる コメントありがとうございます。ノーガードBBSだったので広告に埋もれて気づくのが遅れてしまいました。申し訳ありません。確かに不器用な恋愛をちゃんと描いた青春映画は珍しいですよね。察する事が出来るからこそ、若者みたいに感情だけで突っ走れないもどかしさ。最後、あおいは成長して、あかねは自分の道を見つける。綺麗に終わってますよね。想像の余地を残して上で爽やかに終わるから見終わった後の気持ちがいいですね。もう一度見たい。 (2019/11/12 08:30:04)

(2019.10.15)(book)三つ編み娘とヒゲ男

『三つ編み娘とヒゲ男』/遠藤平介


Twitterで触りの部分が流れてきて興味を持ち、調べてみたらKindleで無料公開と言う事で読むに至りました。

最初に、この作者さんの絵柄、特に瞳の描き方がとても好きです。瞼の輪郭をしっかり描いて瞳孔を小さく描く手法。90年代のアニメチックな描き方でしょうか。白い部分が多いので目を大きくデフォルメして描いても違和感が少なくて、大きな瞳で喜怒哀楽がしっかり描かれ魅力的な表情になっています。純粋に大好きです。

内容ですが、17歳高校生が29歳サラリーマンに惚れてアタックする話。なんですが、テーマ的には年の差に限らず障害のある恋愛を成就させる為の「覚悟」、そして自身に対する「許し」のお話だと思います。覚悟を決めて困難に立ち向かおうとする人達が、現在過去の事柄から心に抱えた重しに潰されそうになった時、そんな自身に対する許しをどこに求めるのか。かなりテーマ重視のお話です。

世間の誰からも咎められない、いわゆる一般的なカップル。そんな関係ならそもそも「許して」もらう必要なんてない。世間と違う事をして、その事に対する重圧、大切な人に打ち明けられない、分かって貰えない辛さ。だけど、それでも自分の選んだ答え以外に選択肢が見えないのなら、他を犠牲にしてでもその道を歩むしかない。そんな傷だらけの自分を誰が許してくれるのか。

結局、自分を許せるのは自分しか居ないんです。世間と違う、周りから咎められる、そんな事で自分の意思がぶれてしまうかもしれないけれど、幸せを掴む為にと踏み出した自分の道をせめて自分は肯定したい。

その結論に辿り着くまでの熱い過程と、出した結論の表現がとても素敵でした。



(2019.10.22)(book)medium 霊媒探偵城塚翡翠

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』/相沢 沙呼


死者の魂が見える霊媒師のヒロインと、推理小説家の主人公がタッグを組む探偵モノ。殺人現場において霊媒師であるヒロインは犯人は分かるけれど、それだけでは証拠にならないので、その間を小説家の主人公が探偵となって埋めていく、と言うお話。

と言うお話。

うん、すごく面白い話でした。

とりあえず、後半でフフフ…って声に出してにやけるぐらいには面白かった。

帯の「すべてが、伏線」と言う煽りに、またかーとか思いつつも、読み終わってみると確かに納得しました。途中に散りばめられた違和感が後になって回収されるのは確かに気持ちが良い。

それと、ヒロインの城塚翡翠がとても魅力的でした。オタク好みのあざといキャラです(笑)

多分、詳細を書くには「ネタバレ」とつけた方が良い類の話だと思うのでこの辺りで。井上真偽あたりが好きなら多分楽しく読めるのではないかと。

そして最後の後ろ髪を引かれる様な読後感がなんとも言えず切ない。青春小説って言っても良いんじゃないかと個人的には思いました。

多少、ネットのスラングやサブカル系に造詣があった方がネタを楽しめるのかも。今では一般用語なのかな、自分がネットどっぷりだからよく分からない。

最近のミステリ小説って古典を踏襲した上で新しい事をやらないといけないから、本当に大変ですね。

最後に、表紙イラストを含めた装丁がとても素敵でした。




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