Marumaru's TinyPlaza

(2019.12.23)(book)作曲少女2

『作曲少女2~転調を知って世界が変わる私たちの話』/仰木 日向


前作、作曲少女の続編。

もう、本当に、最高の本でした。この本と巡り会えた事が今年の幸せの中の一つだと断言できるぐらいに。

そもそも、前作からの変わらないスタンスとして「作曲する為のモチベーションの作り方」そして「音楽理論は作曲出来るようになった人が楽をする為のもの」がある訳なんですが、今回は音楽理論についての話が結構入っていました。私も作曲に興味を持った時に、まずはという事で音楽理論やコード進行についてを勉強したんですが、もう本当にチンプンカンプンで、書いてある事の日本語の意味は分かるけれど、それが何なの??と頭に疑問符が浮かんでいました。目の前に書いてある理論と作曲が全く繋がらない状態。

しかし、この本はそんな疑問を見事に払拭してくれました。まずはコード進行について。王道進行やカノンコード進行、それを度数で表した様々なパターン、まるで数学の公式のよう。それを組み合わせれば綺麗なコード進行なんだろうけれど、曲を作りたい!って気持ちからコード進行についての繋がりが分からなかったんです。結局コード進行って何をもって目の前の理屈になっているのか。

でも、この本はそんな悩みに明確な答えをくれました。曰く、「コード進行は心の流れ」なんだと。心の流れ、つまり心情を表したものがコード進行で、その曲で自分が表したい気持ちを表現するようなコードを鳴らせばいいんだと。本当に目から鱗でした。

さらに書いてありました。そもそもコード進行に理論なんてものはない。ただ、今まで作られた膨大な曲を後からまとめた時に、これは効果的に心情の流れを表せる、として体系化されたものに名前が付けられたのが王道の進行なんだと。

言われてみれば当たり前の事なのかもしれませんけれど、まさに霧が晴れたような感じでした。ルールから外れているからダメとかじゃなくて、曲で表したい自分の気持ちを表現出来るコードを探してそれを使えば良いんですね。

更に、音楽理論を勉強していると必ずと言っていいほど現れる、五度圏(サークル・オブ・フィフス)について。これ、音楽をやっている人ほど、とても美しく完成された図で、音楽史に残る発明。みたいにとかく礼賛しています。音楽にとって5度離れた音が重要な役割を果たしていて、それが綺麗にまとめられているのは分かるけれど、結局これって何に使うの??って思っていました。

そんな「これって何なの?」に対する明確な答え(の一つ)は「転調する時に、目立つ転調、自然な転調、親和性のある転調を教えてくれる表」でした。今まで転調と言えば(ソフト上で)パートを全部つかんで1つ上に持ち上げる、と同義でしたが、この表を使えば自分のイメージに近い転調を簡単に見つけ出せます。そうやって自分にピンとくる範囲での意味というか役割が分かった時に、この無機質な表がとても大切なものに見えてきました。

これは余談ですが、その後で同じく音楽理論に出てくるトニック、サブドミナント、ドミナントの「これは何なの?」に対する疑問が氷解した後でもう一度この表を見て、色んなところで書いてある、「選んだ音をトニックとすると、左隣がサブドミナント、右隣がドミナント」っていう言葉の意味が分かりました。今までは全てのキーのドミナントやダイアトニックコード一覧が乗った表を見ていたことが、この図を見るだけで一目にして分かってしまうんですね。つまり、曲を作る時にとても便利な一覧表ってことなんだ、と。

加えて、代理コードが一目で分かるので、ギターの弾き語りをしていて多分キーボードで作曲してギターで弾く事考えてないだろ!みたいな難しいコードに出会った時、今までみたいに「○○(コード) 代理」とかググらなくてもいい。そのコードの反対側を見ればそれが代理コード!

そして、この本で一番素敵だと思ったのが、フィーリングで作曲するキャラ、音楽理論から作曲するキャラ、そのどちらも否定せずに、お互いの良いところを伸ばし分からないところを教えあっているところ。フィーリングで作る人にはそれに役立つ理論を簡単に教えて、理論で作る人にはイメージの膨らませ方を教え、とにかく作曲は楽しいから自由にやろう!っていうところ。更に詞から先に作る方法とかも紹介していて、とにかく作曲は楽しいよ!嵌ると深い沼だぜ!って。

そんな作曲を通じて青春を謳歌しているキャラクター達の楽しそうな姿が、読者として一番のモチベーションになっています。お互いの曲を聞き合い、曲を通じて気持ちを伝え合える関係って本当に素晴らしい。けいおん!に影響されてバンド始めた人、弱虫ペダルでロードを始めた人、色々居ると思いますが、きっかけは何だって良いんですよね。夢中になれるものに出会い、一緒に楽しめるのなら、そんなの大好きになるに決まっています。

と言う訳で、「創作におけるレベルアップはとにかく作品を完成させる事、それがどんなに小さい作品であっても。逆に壮大な構想だけではいつまでだってもレベルアップしない」という風な言葉に感化されて、ジングルを作ってみることにします。


※追記 クリスマスジングルらしきもの




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