Marumaru's TinyPlaza

(2020.04.10)(book)スマホを落としただけなのに

『スマホを落としただけなのに』/志駕晃


映画化でタイトルを知って気になっていた作品。

タイトルの通り、スマホを落とした事から個人情報が洩れて色々と事件に巻き込まれる話なんですが、その事だけで話が終わらず、スマホを落とした事による情報漏洩は話の要素の1つに過ぎないと言うのが面白い部分でした。

メインのスマホによる情報漏洩の部分に関しては、スマホの情報からSNSや位置情報を把握して、と言ったクラッキング+ストーカー的な要素がありますが、専用ソフトを使って、キーボードをカタカタカタ、ターン!みたいな展開ではなく、ソーシャルハッキングと言うか、覗き見た個人情報を使って交友関係を割り出し、なりすましやフィッシングで情報を引き出すといった、非常に泥臭い事を行っていたのがリアルでした。

どれだけセキュリティが強化されても、所詮は人間が使う道具、堅牢なセキュリティを正面から突破するよりは、わずかな綻びから使用者自体の隙を見つけて侵入する方が簡単ですし、スマホのセキュリティを超えて、その本人自体の交友関係に侵食していく辺りが面白くも恐ろしい部分でした。

そして、スマホからのソーシャルハッキングだけでも話になりそうなのに、それを要素の一つとして、ミステリとしてのトリックの面白さ、更に最後のどんでん返しまで入ったボリューム満点の作品でした。それだけ色々と詰まっているのにすごく読みやすい。

ミステリ的な事が裏で進展しつつも、表の話はヒロインの結婚に関する恋愛話を軸に進んでいくので、そちらの方でも楽しめる贅沢さ。全体として、色んなジャンルの要素がどれに偏る事無く、どれも面白く詰め込まれていたので新鮮でした。これは即映像化の話が来るのも納得でした。

今の時代、スマホは本当に個人情報の塊なので、もし拾ったとしたら逆に怖くなるものですが、割り切って悪用しようとすれば、本当に何でも出来ちゃうなっていう怖さを改めて感じました。ただ、ちょっとフェイスブックに傾倒し過ぎかなという部分もあったんですが、実名SNSだし一番手っ取り早いのかもしれません。と言うか、自分がフェイスブックに疎いだけで、フェイスブックでやり取りをしているクラスタは沢山いますものね。




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