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(2020.10.22)(movie)劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編

『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』


他の映画がコロナの影響で延期・中止になりまくった関係で、上映会数をこの映画に全集中せざるを得なくなって、1日の上映スケジュールが電車の時刻表みたいになった結果、まさに無限列車とか上手い事言われてる話題の映画。

本当は封切り日に観たかったんですが、仕事終わりの時間が満席だったのとレイトショウが22:40開始みたいな感じでちょっと次の日がしんどそうだったので、今日の休みに観てきました。(上映開始時間が19:50、19:55って明らかに「レイトショウにさせないぜ!」って意志を感じる……。)

しかし、IMAXシアターとは言え、平日の朝一上映の劇場がほぼ埋まってる光景はなかなかに新鮮でした。普段は平日朝一なんて貸し切りみたいな感じなのに。メンズデーと夫婦の日がかぶってる日と言う事もあり、男性のソロや、学生カップルやリタイヤされた夫婦らしき人の姿が目立っていました。老夫婦と形容されるような人も散見され、これが封切り3日で46億の社会現象映画の力か、と思いましたね。まさに経済の柱になってる(この表現気に入ったらしい)。

そんな訳で、何とか初動と呼べる段階で観に行けた鬼滅の刃の劇場版ですが、最高でした。

……他に言いようが無いんです。面白いから是非観て!!と勧めたい気持ちよりも、ただただ最高だった、と自分の中で気持ちを噛みしめています。

※以下、ネタバレにつき未見の方は注意して下さい。































もうとにかく構成が素晴らしかった。アニメ2クールに続く話だから、アニメを見てない初見の人にも内容が分かるようにという配慮なんでしょうが、アニメ2クールで語られた設定やストーリーの部分を極力排して、多くの人が共感できる普遍的な感情の話を中心に据えたのが最高でした。鬼滅のキャラを使った道徳的な物語に仕上げていたのが良かった。

普遍的な感情とは「大切な人の死」、「死にゆく者が託す次代への希望」、そして「母と息子の愛情の物語」。炭治郎の部分で言えば「家族との絆」も入るでしょうか。こういう誰もの涙腺を無遠慮に崩壊させる、物語におけるジョーカーのような卑怯とも言える素材を、続編ならでは導入を省いた状態で2時間かけてじっくりと語って、それに極上の絵とアクションを乗せた映画ってなかなかないんじゃないかと思います。

何が言いたいかと言うと、煉獄さーーーーーん!!!!って事ですよ。

本当に煉獄さんの為の2時間、煉獄さんの為の映画だったと言っても過言じゃ無いと思います。スタッフロールも背景絵もずっと煉獄さんだし、EDテーマ曲の「炎」も煉獄さんの為の歌詞のように聞こえたし。(感極まってちゃんと歌詞聞けていないので、後でじっくり聞きたい。)

印象的だったのが上映後の劇場の空気。基本的に展開が全て涙腺を抉ってくるので、途中からも鼻をすする声が聞こえてきたりしていたんですが、煉獄さんの壮絶な死からのEDスタッフロールの後、劇場の灯りが戻った時の感じが、完全に煉獄さんの追悼式でした。後半の感動シーンですすり泣く映画は数あれど、上映後の劇場で多くの人がすすり泣く映画は珍しいんじゃないでしょうか。

話題の映画を観に行ったと思ったら、煉獄杏寿郎の追悼式会場に座っていた……だと!?

ちなみに私はマスクで口元が覆われてたのもあって、ボロボロと泣きまくってて肩を震わせてました。見終わった後、マスクが涙と鼻水でぐっしょりになってました。

繰り返しになるんですが、TV版アニメで無限列車に乗車するところまでやってるから、いきなり列車のシーンから物語を進められるのって大きいですよね。この前に観た同じく閉ざされた列車が舞台の「オリエント急行殺人事件」でも、列車に乗るまでの導入で20分以上は取ってたというのに。

そして、呼吸や型、鬼の血気術を「そういうもの」という事にして敢えて説明を入れていない英断。王道バトルものの利点ですね。いや、そりゃ見りゃ分かるんだけど、と言うか完全に映像で説明しようとしているのが素晴らしい。だいたいTVシリーズ続きの劇場版って解説が長々と入ったりするものだし。

で、丹次郎の過去も回想でさらっと触れるだけ。お館様とその周りはストーリーテラーとして多少登場したものの、ラスボスの鬼舞辻無惨は一瞬だけの登場、残りの柱の面子もED前にワンカットずつという割り切り方。普通だったら次のTVシリーズとかに備えて、多少なりとも柱を動かしたりするよね、と思ったんですがそれも無し。全てが煉獄さんの為に捧げられた2時間の物語でした。

映画を観る前は「え?無限列車のエピソードだけで2時間やるの!?列車で戦うだけでしょ?」とか思ったものですが、うん、そうだったよ。「列車で戦うだけ」の2時間を最高の形で描いてくれてたよ……。

少し話は逸れるんですが、この映画を観て2つ程、頭に浮かんだエピソードがありました。1つは聖闘士星矢のアイオロスがアテナを星矢達に託すシーン。最強を誇る黄金聖闘士が次代の青銅聖闘士に遺志を、と言うのがまさに柱と鬼殺隊。もう一つはSoundHrizonの楽曲「11文字の伝言」煉獄さんの母が語る、我が子を想う母の気持ちのシーンで。

これは鬼滅の刃の物語全体に言える事なんですが、この話ってキャラが結構死にますがみんな死を恐れていないんですよね。正確には、組織として部族としての自分の役割を皆が自覚しており、自分の責務を全うした結果として自らが命を落とすのであれば、大きな目的な次の代が果たしてくれると信じている。自らの意志を大切な人、伝えるべき人に遺志として伝えて、次の世代に続けていっているんですよね。

個人主義が叫ばれて久しい中で、家族やもっと大きな単位の組織の中で、下のものを守り大きな目標の為に進んでいく。自分の代で成しえないかもしれない事も、次の代、その次の代がきっと遂げてくれると信じて、次の代に伝えていく。王道っちゃ王道なんですが、そういう事をセリフで行動で叫び続けてる作品って珍しいと思います。煉獄さんが言った「若い芽を摘ませない!」というセリフがとても印象に残っています。

それと、アクションシーン、本当に素晴らしかったです。流石、劇場版。呼吸法と血気術によるいかにもなジャンプ王道バトルなのに、本当に格好いい。TV版からあった見栄えのする和風エフェクトアクションに更に磨きがかって、何と言うか安っぽくないんですよね。意志を繋ぐ、遺志を伝える大きな物語の上に、この最高のアクションが乗っているからこその、この劇場版の仕上がりなんだと思いました。

最後になりましたが、余計な導入や説明無しで、ただただ最高のアクションと煉獄さんを楽しめた至上の2時間でした。列車で戦うだけの2時間で肩を震わして泣くとは思わなかった。

追記。

上映後、あまりに茫然自失で劇場を去ったもので、入場特典の冊子を席に忘れてきたという失態。内容を1Pも見てないんですが、友達のBlogを読むと煉獄さんのモデルの人について書かれてるですって!?




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