Marumaru's TinyPlaza
(2021.01.28)(book)盤上の向日葵
『盤上の向日葵』/柚月 裕子
初代菊水月の名駒を軸に繰り広げられる将棋指しミステリー。ミステリーと言っても読んでる途中で展開は分かっちゃうんですけどね。
時代の違う2つの視点を交互に繰り返しながら話が進んでいき、最後に綺麗に繋がるのは気持ち良かった。構成が綺麗で読みやすいんです。ページ数の割に本当にさくっと読めた感じ。
2017年の作品と言う事で、藤井聡太さんが出てきた頃ですよね。将棋ブームの中で作られた作品と言う感じがしました。羽生さんを模したキャラクターも出てくるし。しかし、りゅうおうのおしごと等々で将棋の基礎知識が付いたおかげで、将棋作品を将棋部分も含めて楽しめるようになった気がします。
作中で賭け将棋の「真剣」が出てくるんですが、将棋が勝負の世界と言う事もあってその辺りと相性が良いんだと思います。読んでいて「3月のライオン」「ハチワンダイバー」の要素を思い出しつつ、「りゅうおうのおしごと」で描かれている勝負の世界の鋭さを改めて実感しました。
繰り返しになるんですが、構成は本当に綺麗なんです。が、綺麗過ぎて読後感が少し薄いかも。主人公よりも真剣師の東明さんの格好良さが引き立っていました。向日葵に絡めて主人公とゴッホを重ねているんだと思うんですが、ガンダムSEEDの種割れ的な感じで使われていた"向日葵の花が咲く"演出がぽっと出でイマイチ消化不良な感じ。伏線を綺麗に回収する為に主人公すらも便利に使われていた感がありました。特に後半。
改めて奨励会3段リーグって地獄なんだなぁ、と。
余談ですが、北国のひなびた温泉に行きたくなる作品でした。