Marumaru's TinyPlaza

(2022.07.18)(book)痴人の愛

『痴人の愛』/谷崎潤一郎


たまに見かける話題で、相当に官能的な話であっても文学作品として出版されていれば名作として正当に評価されている、みたいなのがあります。要は文学作品って固そうなの多いけどエロいから読んでみろよ!っていう文学への導入ネタなんですが。

その中でよく挙げられるのが、川端康成の『眠れる美女』、そして谷崎潤一郎の『痴人の愛』です。他にもあるんですが、この2作は漏れなく入っている気がします。

私は、自分の知る中で川端康成の紡ぐ日本語は最も綺麗で嫋やかなもののひとつだと思っているので、その才能を遺憾なく発揮して書かれた『眠れる美女』の耽美的で倒錯した世界はとても好きです。「老人が眠っている少女を夜這いする話」と一言で要約出来ない事もない話ですが。

それはさておき、今回、後者の本を図書館でたまたま見つけたので読んでみました。

うーん。順番が完全に逆だけど、00年代に流行ったエロゲの空気を感じる!猟奇だったりグロだったり、耽美、背徳、退廃、哲学、この頃のエロゲってただ単純にエロスを求めるもの以外に、年齢制限付きの媒体でしか表現出来ないものを作り出す空気に溢れてた気がします。最近のを知らないので、ただの昔語りかもなんですが。

ここまで書いて、さあこれから本の感想を書くぜ!と思ったのものの言葉が出てきません。

魅力的な女性に出逢い、自分の価値観を根底から覆し、生きる意味になるよう蠱惑的な女性に出会える事は幸せなのか不幸せなのか。っていう一言に集約されちゃうんですよね。

その愛が自分だけに向けられているものではないと分かっていても、それでも猫のようにすり寄られると気にせずにはいられない、気づけば夢中になって現を抜かしている。そんなヒロイン、ナオミの蠱惑的な魅力を堪能する作品だと思いました。

多分、読む人によってすごく印象が違う作品だと思いました。奔放と言えば聞こえはいいですが、独自の貞操観念を持つナオミに嫌悪感を抱く人もいるでしょうし、見方によっては貢ぐ君になっている主人公を情けないと思う人も居るでしょう。

だけど、私はお互いの責任の上で人生を謳歌しようとしているこの二人の物語がとても好きでした。




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