Marumaru's TinyPlaza

(2025.07.02)カオマンガイを作ってみた

先日、ふと思い立ってタイ料理のカオマンガイを作ってみました。理由はジークアクスで興味を持ったから。



作り方はコウケンテツさんのレシピを参考に。



鶏の胸肉を用意して、胸肉の切れ端とニンニク、ショウガをフライパンで炒めます。これがポイントらしい。

炊飯器にお米と水を入れ、開いて下味をつけた鶏肉と先程炒めたものを入れて炊きます。鶏肉の下にネギを敷いておくといい感じらしい。

炊きあがりを待つ間にタレ作り。タイ料理なのでナンプラーがポイント。ナンプラー初めて買った。

完成。要は鶏肉の炊き込みご飯なんですが、最初に入れた鶏とニンニクのおかげでご飯全体に香ばしい風味がついています。そして酸味の利いたタレが美味しい。ナンプラーを使うと一気にタイ料理な味になりますね。タイ料理食べた事ほとんどないから完全にイメージで言ってますが。

何よりさっぱりしてる。すっと大量のご飯が食べられてヤバい。炊き込みご飯だからこれで料理が完結していて手軽で良い感じ。また作ろう。



(2025.07.02)新しい焚き火台を買った

Amazonを眺めていた時魅力的な焚火台を見つけたので衝動買いしてしまいました。

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ソロ用の焚火台はピコグリル型が一つの完成形だと思っていたんです。市販の薪がそのまま置けるサイズ、収納するとA4薄型、何より火床広げて独自ギミックで展開した足に乗せるだけという簡単な設営・収納。

しかし、この焚火台は更にその上を行っています。なんと、「広げるだけ」。広げるだけで足と火床が出来ます。昔、折り紙で小物入れを作ったことがある人はそれを想像してみて下さい。このありそうでなかった焚火台に感動しました。

ってことで、この焚火台を使う為に河原に行ってきました。

河原、良いです。この写真に好きなものが全て詰まっている。

焚火台に火入れ。良い感じじゃない。

セセリを塩コショウで。

タレ付ハラミ。


で、肝心の焚火台ですが、かなり使いやすかったです。これからの一軍になりそう。ソロ用で使っているColemanファイヤーディスクソロ、パチグリル達と比べてみての印象はと言うと。

何よりも、設営、撤収が早い。本当にワンアクションで設営・撤収が完了します。

次に、火床が案外しっかりしていました。パチグリルは火床が薄い分、薪を積むと少し不安になるんですが、こっちは少々積んでも大丈夫です。ファイヤーディスクとパチグリルの間ぐらいです。

ただ、火床がしっかりしている分、収納時の厚みがパチグリルより少しだけ厚いです。ただ、ファイヤーディスクよりは全然薄い。そして、折り畳みの関係で収納サイズがA4より少しだけ大きいです。ただ、これも誤差の範囲。薄型コンパクトの焚火台というカテゴリに入ると思います。

この辺りは、火床を二つに折り畳めるピコグリル形式に分がありますね。そして、火床のサイズがピコグリルより少し小さいので、市販の薪を置くと少しだけ両端が出ます。ただ、これも個人的には気にならないサイズ。ソロ用の焚火台として十分なサイズは確保してあります。設営した姿がちょこんとして可愛いげがあります。

あと、火床を折り畳む構造上、火床の真ん中に穴が開いています。これは一長一短で、スパッタシートが必須になるんですが、もともと使っている私には関係ありません。それよりも、灰が真ん中の穴から落ちてくれて火床に余計な灰がたまらないというメリットの方が大きく感じました。ソロ焚火台で焚火やると灰が凄いことになるんですよね……。

構造上、ヒンジを使った可動部が多いので、焚火の熱で長時間熱せられた時、可動部が壊れたり、動きが悪くなったりするんじゃないかという不安はあります。これは何度か使ってみないと分からないところですが。ただ、もともとの値段が安いので、ある程度使って壊れたなら、それは仕方ないと割り切れる部分ではあります。

結論、かなり良いと思うので、ソロ焚火やってる人はぜひ使ってみて!



(2025.07.03)(book)栞と嘘の季節

『栞と嘘の季節』/米澤 穂信


先日読んだ『本と鍵の季節』 の続編。

前作は根底のテーマが繋がっている短編集でしたが、今回は1冊まるっと使った長編小説です。

いやー、もう本当に面白かった。本に没頭する時間の幸せ。

高校が舞台で、図書委員の仕事中に偶然見つけたトリカブト入りの栞を巡る話なのですが、日常に潜む非現実感の描き方が巧みなんです。どこにでもある学園生活の中で生じる違和感、その謎を追っていくうちに話はどんどんと広がっていきます。しかし、気づいてみれば物語の風呂敷は綺麗に畳まれ、また普段の日常に戻っていきます。

実際はこんなに上手く行かないかもしれない、こんなに綺麗に全てが繋がる事なんて有り得ない。だけど、物語の中ぐらいは、日常と地続きの危険と謎に身を投じて奔走し、そして全てが綺麗に繋がって収束するストーリーがあっても良いと思う。

ミステリというと、とかく殺人事件が発生するものですが、危険な匂いを漂わせながらも結果的に誰も天に召される事のない、そんなミステリがあっても良いと思う。それが青春ミステリと言われる所以なのかもしれません。

今作は、前作の最後で姿を消した友達、詩門の謎に迫る物語かと思ったら、詩門はあっさりと戻ってきていました。そして、失踪した原因について二人の間で交わされた言葉と仕草が最高に格好良かった。人生何回転生したらこんなコミュニケーションを交わす事が出来るんだろうか。詩門の失踪についてはこれだけで一本書けそうな気がするから、また読める日が来るのかな。

構成に関しては、まさにチェーホフの銃が活きる展開でした。その関係性をミスリードさせる伏線も張り巡らされていて、まんまと綺麗に騙されました。なんてやさしい嘘。

あと、表紙と装丁の雰囲気がとても好き。余談ですが、本についている栞の色も表紙に合わせてあって素敵。このタイトルで栞がついていないと片手落ちですよね。

ワクワクしながら読め、青春っていいなと思わせてくれる物語でした。



(2025.07.08)(book)バカ女26時

『バカ女26時』(10話まで)/遠野めざ/彩乃浦助


友人に勧めて貰った本。いやー、漫画読みの人が自分の好みを考慮して勧めてくれる作品が面白くないわけがない。自分では発見できなかったであろう作品を教えて貰える喜び。

話ですが、まず1話の掴みがすごかった。主人公アツコが腐れ縁の女友達ユリと深夜のファミレスで愚痴を聞いてる、というよくある話かと思えば、愚痴を聞かされているアツコは実はユリの旦那を殺していた――。まるでミステリ小説の冒頭を思わせるような始まり。Webコミックと言う事で気楽に読み始めたら、がっつりと心を掴まれました。

そして、そこから始まる二人の逃避行、行き先はベトナム!私、逃避行モノって大好きなんですよ。逃避行に振られた「バカンス」のルビはまさに言い得て妙でした。

逃避行の魅力と言えば、今まで住んでいた場所や慣習、そして人間関係のようなものを一度リセットして新しい場所へ赴く事で、新しい世界・文化・価値観に触れる事が出来る。その新しさが自分にフィードバックされ、今までの自分を覆っていた殻を壊してくれる。そんな新天地での厳しくも刺激的な旅路の物語が好きです。

更にこの物語のアクセントは、逃避行先でお世話になるアツコの知人フートゥイ。この人が規格外のお金持ちで男女関係にも奔放な、既存の価値観に縛られない人。フートゥイが関わる事で二人の逃避行は更に加速する。既存の知り合いが誰も居ない異国の地で、二人の女性が今までとは全く違う世界の中を駆け抜ける。そのギャップが読んでいてとても心地よかった。

そして、そんな中で明かされていくアツコの過去。勢いだけで飛び出したように見えた逃避行の裏に隠された意図。そんな中で突如生まれるユリの嫉妬。謎を孕んだまま怒涛の勢いで進む物語。

ところで、この話、逃避行と言うからには二人一緒に逃げている訳なんですが、この二人の女性の関係は百合と言っていいんだろうか。結論を言うと百合だとは思うんです。が、現状は百合要素を堪能するよりも物語の怒涛の展開について行くのでいっぱいいっぱいな感じ。

余談ですが、タイトルの『バカ女26時』の26時が作品の内容を象徴していて面白いな、と。同じように深夜の時刻が入ったタイトルは色々とありますが、当然その時刻によって表現される内容が違ってきます。

例えば、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『24時』これは、一日が終わり眠りにつく前の時間に今の自分を振り返りながら、明日や将来の事について思いに耽っていたら眠れなくなったという、まだ今日が続いている時間の歌です。

次に、キンモクセイの『車線変更25時』では深夜の時刻を自分の年齢に例え、深夜に道を疾走する感情を語りながら、大切な物事が今まさに分水嶺を迎えており、新しい道に向かって走り出す情熱を歌っています。

漫画では、てぐれ(絵)/ぎどれ(話)の『27時のシンデレラ』という作品があります。イラストレーターを志望する青年が、偶然出会ったVtuberの中の人との関係を描いています。主人公は彼女のメンヘラ気味で小悪魔的な仕草に翻弄されます。日付はとおに変り、夜明け未だ遠い夜の淵の中で必死に藻掻くさまが描かれています。

そして、この『バカ女26時』はどうでしょう。純粋に最初に深夜のファミレスで話していた時間かもしれませんが、深夜のファミレスの雰囲気、そして全てを捨てた逃避行の旅を今まさに突き進んでいく。そんなターニングポイントを超えて動き出した直後の勢いを感じる時刻だな、と思いました。



(2025.07.15)(book)All You Need Is Kill

『All You Need Is Kill』/桜坂洋


色々ネタバレしてるので注意






















少し前に観た映画の原作小説。映画を観た後、原作が面白い!と方々から勧めて頂いたので原作を読みました。

まず、映画版との比較なんですが、映像表現に関しては映画版の方が派手で格好良かった。小説版では登場人物が少なくシンプルな人間関係でしたが、劇場版では所属する部隊のメンバー全員を掘り下げていましたから。とにかく機動ジャケットという装備を映像化するにあたり、ハリウッドの力はすごいと思いましたね。メカメカしく派手で大人数の戦闘を見事に描いていたのは流石劇場版と思いました。

そして、ストーリーですが、これも劇場版の方がシンプルになっていました。小説版だとキリヤとリタの関係にフォーカスを当てて描かれており、タイムループを繰り返す中で、二人にもギタイと同じくアンテナ機能が備わってしまった。すなわち、2人のうちどちらかが死なないとループの無い未来へは行けない。とう二者択一を迫る中での心の機微が描かれていました。

対して劇場版はその設定を丸っと消してましたね。小説版で言うギタイサーバとバックアップをα、βと名付け、二人を両方殲滅すればギタイのループは終わり戦闘は終わる。つまり、とにかく敵を倒してしまえばハッピーエンドが訪れる。力こそパワー、U・S・A・!なストーリーでしたね。どちらが良い悪いという話ではなく、それぞれのメディアに応じた見せ方があるという話かと。

しかし、小説原作作品の映画化って大抵コケるのに、どちらともそれぞれに面白い、と言うのは稀有な事かもしれません。

次に原作小説のストーリーですが……。これは多分、タイムリープしながら経験を積み状況を改善してトゥルーエンドを目指しループの円環を断ち切る、っていう仕掛け自体が一番の面白さだと思うんです。だから、その部分を含めて先に映画版(しかもアクション表現はこちらが上)を見てしまうと、どうしてもループという仕掛けに対する目新しさは薄れてしまいます。

何より、これも完全に見る時期の問題なんですが、この原作小説が発刊されたのは2004年。当時としてはとても目新しくてワクワクする内容の物語だったであろう事は想像に難くないのですが、先にSTEINS;GATE(XBOX版2009年、PC版2010年)に触れてしまっているのがどうしても……。なので、この物語の仕掛けについてはあまり公平には語れないです。

これ、同じような感覚を、各種デスゲームものの作品に触れた後で『クリムゾンの迷宮』/貴志祐介を読んだ時に感じました。

なのですが、原作小説は二人の関係の描き方、最後の余韻がジャンプJブックスらしくてとても甘酸っぱいものでした。ジャンプJブックスは『おいしいコーヒーのいれ方』でも読めるように、青春の瑞々しさを描かせたらピカイチのレーベルだと思っています。

それと、当時はまだループものが珍しかったからという配慮なのか、全体のループの流れが章で区切った形で図説されていてとても分かりやすかった。まあ、分かりやすい反面、最高のネタバレとも言えますが……。多分、最初に発刊された版には書かれていなかったんだろうな。

最後に、小畑先生のイラストが非常に魅力的でエロかった。



(2025.07.18)(movie)「鬼滅の刃」無限城編 第一章

劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来


鬼滅の刃の無限城編第一章観てきました。封切り日に。個人的にこのレベルの大作映画の封切り日はそれ自体がお祭りみたいなもだと思っているので、踊らにゃ損の感覚で封切りに観てきました。

いやー、普段は休み前の水曜レイトショウで行く事が多くて、ほとんど貸し切りレベルで観ることが多い最寄りのシアターですが、流石に今日は人でごった返していました。前日にチケット予約してほぼ満席だったのには驚きました。

普段、人出がまばらな見慣れた場所が人で溢れているのを見るのは、嬉しさもあり、驚きもあります。何より、集まっているみんなが初見だろう状態特有のあの期待に包まれた雰囲気が好きです。上映が終わって階段を下っている時の話声とかも含めて。

ここからネタバレ




























ここからネタバレ感想。


映像表現について

しかし、予想していた事とは言え、映像が凄かったですね。TVでも劇場版並と言われていたものが、本当の劇場版では限界を更に超えてきた感じですね。恐らく今の国産アニメ映画の最高峰の一つであろう映像表現を劇場スクリーンで味わえるだけで観に来た価値は十二分にありました。

で、何がすごいって無限城全体を3Dモデルで作ってるってことですよね。TV版の遊郭編も吉原の町を3Dモデルが話題になっていましたけど、今回のは規模が違う。完全に予算と人月をぶち込んだ圧倒的な力の暴力を感じました。ハリウッドのアクション映画に真っ向から対抗するようなこの姿勢、良いぞもっとやって。

そのとてつもなく広い無限城のモデルを余すところなく演出に組み込んでいるのが熱いです。更に城のワイヤーフレーム表現や、人物感知の表現みたいなのもあって、鬼滅でこんなメカ系の表現を見るとは思わなかった。だけど、自然に溶け込んでいて格好良かった。

オリジナル要素

観ていて全体的に思ったのが、「あれ?これって原作にあったっけ?」って感覚。もともと鬼滅の原作は1回流して読んだだけなので、正直細かい部分はあまり覚えていないんです。

で、ただでさえ鬼滅の映像化は良い意味で内容を引き延ばしてるし、原作だと数コマ分だった表現の内容を補完するように映像化しちゃうから、原作にあった内容なのかオリジナル要素なのかが観ていて分からなくなるんですが、今回は特にそれが多かった。と言うか大きな流れ以外ほとんど全ての場面で思ってた。

ただ、それぐらいの補完された内容や、オリジナルで追加された内容が原作の雰囲気や流れを壊さないように作られているって事だから、いい事なんですが。なんだけど、原作の回想シーンは流石にここまで長くなかった気がします。

回想シーンについて

で、戦闘の合間を縫う様に随所で挿入される各種回想なんですが、鬼滅の映像化については炭治郎のモノローグ説明台詞と回想シーンに占める割合が多すぎて、これらが無いと鬼滅のアニメでは無いような錯覚すら覚えてしまいます。

そんな中でもやっぱり印象に残るのは猗窩座の回想シーンです。長かった……のは別にいいんですが、まあ、お涙ちょうだいエピソードでしたよね。

なんですが、私の嫌いな「お前らこんなの好きだろ、さあ泣け!全国が感動の涙に包まれろ!」みたいなあざとさを感じる泣き演出ではなくて、人物を掘り下げる回想を真っすぐに真っ向から作ってるんですよね。だから、その結果として心が動いて涙が出てしまう。

ええ、泣きましたとも、劇場でボロボロ泣いてました。号泣するのは良いデトックスだと思っているので、劇場では涙を我慢しないようにしてます。と言うか、周りも泣いている人が多かったように感じました。斜め後ろの方が声を上げてすすり泣いていらっしゃって、なんだその、うん。少し感情移入しにくかった。

周りの席に若い女性が多かった事もあってか、猗窩座はもとより、善逸や炭治郎父親のエピソードで泣いてる人が多かったように思えます。なんですが、個人的には胡蝶しのぶの戦闘シーン、そして鬼殺隊の若手が育っている系のエピソードが琴線に触れました。やっぱり世代を超えて繋ぐ想い系には弱いです。

童磨戦

しのぶの件の台詞は次編に持ち超しかー。残念、早見沙織ボイスで聞けるのを楽しみにしてたんですが。

そんな訳で無限城での今回の戦いにおいて、童磨戦だけは今回決着がつかなかった訳ですが、ここって原作でも途中が長かったり、途中で別エピソード入っていたんでしたっけ?もう完全に忘れてる。

ところで、カナエの羽織姿について、しのぶよりカナエの方が背丈が高い分、カナエが羽織った時よりも後姿が妙にちんちくりん、と言うかコスプレ感を覚えてしまってそればかり気になっていました。

後ろ姿だと袖と裾の黒い部分が縦に重なって映るから、余計そう見えたのかもしれませんが。一度気になったら頭から離れずに、せっかくの感動シーンだったのに少し水を差された感じがしてしまいました。

しかし、宮野真守の胡散臭い演技は本当に最高ですね。TVだと最後の予告で一言喋っただけだった気がしますが、もうずっと宮野真守の童磨ボイスを聞いているような安心感がありました。

主題歌2曲

良かった。とにかく良かった。配信始まったらじっくり聞きたい。


p.s. 鳴女がノリノリだった。義勇達が猗窩座と遭遇するや否や、髪を振り乱し琵琶をかき鳴らして無限城をシュンシュンと組み替えて特設ステージをつくってるし。水柱の為に噴水の演出もばっちり。そして、同じく水色の照明のスポットライトも完備。多分、鳴女が一番楽しんでいたんじゃないのかな。何となくマッドマックスのあいつを思い出した。



(2025.07.19)(book)それいけ! 平安部

『それいけ! 平安部』/宮島未奈


『成瀬は天下を取りにいく』『婚活マエストロ』の宮島未奈さんの新刊。新聞の書評で知って発売直後のタイミングで図書館にリクエスト入れたのに10人待ちぐらいだったのは流石の人気っぷり。

読み始めて、最初の導入が成瀬と同じメソッドじゃん!と思わず突っ込んでしまいました。ヒロインが高校でちょっと変わった友達に巻き込まれて新しいことを始めるという導入。この話だと、平安文化に興味がある主人公・安以加に誘われて、平安文化を学ぶ『平安部』を立ち上げます。

『成瀬』と違うのは、主人公が"なろう系"的な才能を持って居る特別な人物ではなく、今回だと平安時代に詳しくはないけれど平安文化を学びたい!という情熱を持っている普通の少女だということ。

なんですが、この情熱だけを原動力に突き進んでいく感じが、まさに青春を感じられ読んでいてとても気持ちいいです。話し合いの中からアイディアが膨らんで、周りのツテを手繰って何とか実現する。いい意味で周りに頼っている立ち振る舞いが等身大の学生生活を感じさせてくれます。

部活を作ろう!と思い立ってからメンバーを集め、部室を確保して、顧問を見つけ、対外的な活動を経て、文化祭で〆る。まさに王道の青春ものですが、そこが良かった。

そして、相変わらずのテンポがよく読みやすい文章。気軽に読める青春エンタメとして最大公約数の人に訴求できる内容を書けるのは、まさにベストセラー作家の実力だと思います。

雑誌を読むような感覚で読めるので、気軽に読んで楽しんで欲しい一冊でした。



(2025.07.22)(book)オルクセン王国史 5

『オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~』5巻/樽見 京一郎


グスタフから関係者への贈り物とそれに伴う書簡、そして各部隊の些細な呟き等を挟み込んで、全体の雰囲気を俯瞰させるような構成は上手いな、と思う。

それはさておき、ついに総力戦が始まりました。今までは兵站と戦争に至るまでの準備、そして進軍過程がこれでもかと詳細に描かれていて、それこそがこの小説の醍醐味だと思って読んでいます。

ですが、実際に戦いが始まると、今まで備え貯え準備したものを湯水のように消費しながら戦いを続ける訳で、そして何よりも両軍の兵士達が戦いの中で数多く散っていくんですよね。戦争だから仕方ないんですが、何だろう、シムシティでせっかく発展させた街が天災で大損害を受けるようなこの虚しさは。そして、戦いが近代戦に近づくにつれて、弾の消費と共に「効率的に無慈悲に」敵兵を屠れるようになるんですよね。当たり前ですけど、戦争なんて物語の中だけで十分です。

そんな戦いの中、エルフィンド軍がまさかのゲリラ戦を展開したり、軍規に厳しく極力無駄を排しているオルクセン軍をもってしても、最後は銃剣による突撃なのかー、とか。両軍が様々な戦略で戦いを繰り広げる様が読んでいて面白かった。近代兵器による火力が増せば増すほどに、塹壕がもたらす威力は計り知れないものがあるんだな、と。大量に弾薬を消費させた時点でリソース的には勝ちだもんね。

しかし、近代兵器と魔術が両立する架空戦記を描き切っている作品なので読んでいて本当に面白い。しかもそれも、兵站に重きを置いて様々な理由を説明しながら描いてくれているのだから余計に。

最後に、激戦の合間を縫ってグスタフの寝台車に逢瀬に来てくれたディネルース、彼女が去った後もその「匂い」を感じているから前線に留まる事を厭わないみたいな描写に、グスタフ可愛すぎだろうと思ってしまった。そういう話ではないと分かっているんだけど、この二人の惚気は正直もっと読みたい。




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