Marumaru's TinyPlaza

(2011.04.16)(book)変ゼミ

『変ゼミ』(5巻まで)/TAGRO


変態をテーマにした大学のゼミが舞台の漫画。

要約を最初に書きますが、この漫画は変態的な嗜好を描きたい訳じゃなくて、変態的な嗜好を接点として集まった人達の人間関係が面白い漫画だと思います。そして、舞台背景になっている大学時代のモラトリアムな雰囲気が楽しい漫画です。

ゼミの研究の名の下、毎回マニアックな嗜好が登場します。実写だとかなりエグい事になるであろう嗜好もデフォルメの効いた絵柄のおかげでそうでもないです。

絵柄に関しては、無駄な線がなくてデフォルメが上手いの絵を描く人だなと思って調べてみたら15年選手の漫画家さんでした。そりゃ上手いわ。デフォルメの効いた絵柄の人って同じような角度・構図が多い人をたまに見かけますが、いろんな構図のデフォルメを描ける人は本当に上手いと思う。

この話の面白いところは、取り上げられる変態的な嗜好は、社会人が実生活の中で趣味でやると見た目的にもイメージ的にも引くと思うんですけど、それを大学生がゼミ活動の一環として真面目やってるところだと思うんです。

それも文科系サークルのようなノリで、「ここに居るから○○をする」ではなくて「元々○○が好きな人が集った」という位置づけ。だから個人個人のキャラがとても立っていて、何よりビジュアル的にはエグい事をやっていても、お話の雰囲気が一貫して爽やかなんです。

大学の同じドアを開ければいつもそこに居る気心の知れた仲間、いつもの店に飲みに行ったり、バイトに勤しんだり、課題に追われたり、旅行に行ったり、気になる人に想いを寄せたり。いつまでも永遠に続くような穏やかな時間はいつか必ず終わりを告げます。このお話の中でも、刻々と流れる時間は描写として描かれているから、きっとそのうち何らかの形の別れが来るんだと思う。それが分かっているからこそ今の繋がりが余計に愛おしい。そんな事を考えながら読んでいると妙に切なくなる漫画でした。

この話にはもうひとつ面白いところがあって、それは主人公であり読者視点でもある松隆奈々子の存在。彼女はゼミ関係者内唯一の一般人で、どうしてこの変態ばかりのゼミに入っているかと言う理由はが明かされてないですが、彼女は周りの登場人物達の変態的な嗜好を理解する事は出来なくても、許容する事が出来てるんです。

これって実はすごい事だと思うんですよ。便宜上、「変態的な嗜好」=「能力」と言葉を置き換えますが、能力を持っていないのに、能力を持った人達の集まりの中に自然に溶け込んでいる。これって、その事自体が立派な能力と言っても良いと思うんです。だって、このゼミの人は「もともと変態の人達が自主的に集まっている」集団なんです。その中において一般人の奈々子の存在が周りに溶け込んでいて、何故だか分からないけれど周りからも認められているんです。

お話的に、読者視点の主人公が出来るだけ真っ白で、しかも周囲に違和感無く溶け込んでいるからこそ、周りを取り巻く登場人物達の変態が際立って、人間関係も面白く描けるんだと思います。

なんだか色々と書いてしまいましたが、純粋に内容だけ見ると本当に変態です(笑)




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