Marumaru's TinyPlaza

(2013.05.16)(movie)花咲くいろは HOME SWEET HOME

『劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME』


※ネタバレを気にせず書いていますのでご注意下さい。







いやー。良かった。もう本当に文句無し。

まさに本編を観た人に向けてのファンサービスのような内容でした。前情報を入れずに観て本当に良かった。

てっきり本編終了後の後日談かサイドストーリー辺りで無難にまとめるのかと思っていたら、まさか緒花の母親である皐月の話だなんて。完全に予想外で驚かされました。

緒花と祖母のスイがクローズアップされる本編中ではあまり語られなかった、皐月が東京へ出るキッカケ、夫との馴れ初め、心にずっと持っていた「輝きたい」と言う想い。それらの「皐月が母になる前、大人になる前」のエピソードの断片に触れる緒花と言う構成が素晴らしい。

スイ・皐月・緒花と親子三代に渡って続く四十万の女性の系譜、そして脈々と受け継がれている確かなモノについて描かれているストーリーだなんて。普通、そんな話が劇場版で語られるなんて思わないって!まさに「HOME SWEET HOME」(素晴らしき我が家)と言う副題に相応しい内容でした。

しかも、緒花出生のエピソードで緒花の名前の由来が語られますが、オハナはハワイの言葉で「家族」って言う意味と言う事じゃないですか。またここで「家族」ですよ。

恥ずかしい話ですが、この映画を観ている時に何度か泣いてしまいました。暗い劇場の室内と大音量で鳴る音響の効果もあるのかもしれませんが……涙腺が弱くなったものです。

だけど、明らかに感動するであろうシーンで感極まって涙が溢れてくる感じではなくて、何気ない本当に普通のシーンが流れている時に気が付いたら涙が頬を零れ落ちているんです。それも何度も。両目から涙が流れるなんて10年ぶりぐらいの経験でした。

それくらいに銀幕の中を駆け回りながら、喜んだり怒ったり哀しんだり楽しんだりする登場人物達の姿が胸に刺さったんです。


書きたい事は沢山あって、それこそシーン毎に語りそうな勢いなので、特に印象に残った部分を箇条書きのような形で書いて覚書兼感想にします。

まずは結名様。まさかの大活躍で大歓喜!持ち前の明るさで物語を良い意味でかき回しながらも最後は上手く良いところを持っていきましたね。言葉はきついけれど決して悪人ではない結名様のキャラクターが上手く描かれていました。まさに女将の才能ですね。

次に巴姐さん。何と言うか……完全にギャグ要員でした(笑)独身ネタひっぱりすぎだろ!それに顔芸がお達者になってしまわれて。足の裏の角質の下りは中の人と絡めて妙にリアルでした。能登さんって他の作品ではおっとりとしたお嬢様系の役柄を多く演じられているので、いろはでのはっちゃけっぷりは新鮮でした。完全に新境地を開いた感がありました。

全体的に、本編中で作られたキャラクターの特徴を更に尖らせたような演出だったので、そういう意味でも本編を見た人へのファンディスク的な作品ですね。何の説明も無く飛び出す「ぼんぼる」「ホビロン」等の台詞。後者については中々登場しないのでちょっと心配になっていましたが、ここぞと言う場面できっちり出ていたので満足です。

電六さん。観終わってから思ったんですが、この劇場版の主人公って実は電六さんなのかもしれませんね。劇場版って言ってみれば、長年喜翆荘で働いていた電六さんの目から見た親子三代に渡る絆の物語、その回想録と言う感じですから。

今回のメインヒロインと言うべき皐月さんですが、本編中で母親としてずっと登場していただけに、最初にセーラー服姿で登場した時に「コスプレ?」って心の中で突っ込んでしまいました。

それは置いておいて、私が思う皐月さんの魅力って、一目惚れした時に「好きになったかも」と口に出して発言出来る素直さと勢いだと思います。考え事って口に出すとまとまるし、自分の意思になると思うんです。だから、口に出せるようになるにはそれだけの想いの大きさとそれを押し出す力が要ると思うんですが、それをワンステップでやっている皐月さんは素敵だと思いました。彼女に関してはシーンで言うと色々書きたい事があったんですが、結局ここに行き着くと思ったので。

徹さんがつぶやく「女って夜中になると興奮するのか?」ってシーンが面白かった。それぐらい、いろはの話って女性達の物語ですね。何より、業務日誌で皐月の過去の触れて気持ちが高まった緒花が、気持ちを発散する為に「叫びながら走る」って手段を取るのが流石、四十万の女。若いって素晴らしい。

過去に一度、ぼんぼり祭りで作品の舞台を訪れている事もありますが、映画を観終わった後にもう一度、湯涌に行きたいって思いました。訪れて見覚えのある景色や旅館をバッグに登場人物達が活躍していると、この温泉地にまた行ってゆっくりしたいなって思います。当然、旅館の仕事って実際は本当に厳しくて華やかな部分だけでは無いとは思います。だけど、花咲くいろはって湯涌温泉、ひいては旅館自体のこれ以上無いPRになっていると思いました。

66分と言う尺の都合上、時間的に多少物足りないなぁと言う気は正直しました。と言うか皐月の東京へ出てからのエピソードがもっともっと観たかった。だけど、この話はあくまで電六さんが書いている業務日誌を緒花が見つけて読んだ時の回想なんです。だから、電六さんは喜翆荘での仕事を通しての皐月しか知らないから仕方ないですよね。むしろ、全てが白日の下に晒されるよりは想像の余地が残っている方が良いのかもしれません。

想像力は至上の画家であり作家です。「花咲くいろは」と言う作品自体はもしかしたらこれで一区切りになるのかもしれませんが、本編で語られなかった行間の部分に対して想いを馳せる事で、いろはの物語はずっと心の中に生きている。この劇場版が描きたかったのは各キャラクターの詳細なエピソードではななく、喜翆荘を取り巻く人々や家族の繋がりだと思うんです。そんな恥ずかしい台詞を臆面も無く書けるぐらいに心に感じるものはありました。

最後に、EDテーマの「影踏み」について。アップテンポの格好良い曲でした。nano.RIPEがインディーズの頃から暖めていた曲らしいのですが、バンド色の強い曲でした。楽器の音が重なるところや最後の〆、うねる様なリフが最近のnano.RIPEしか知らない自分には新鮮でした。なんとなく落ち着いた曲をイメージしていたんですが、歌詞の内容と合わせて本当に良い歌でした。

何より、劇場の帰りの車の中で「影踏み」のCDを聞ける幸せ。先日買ったCDですが、音楽CDの方は劇場を見るまで聞いていませんでした。やっぱり1回目は劇場で聞きたいし。岡山での上映開始は少し遅くなりましたが、この点では良かったかもしれない。

あ。そうそう。劇場特典のシール台紙(って言うのかな?)は巴さんでした。


余談ですが、今回映画を観るために始めて訪れた、「TOHOシネマズ岡南」の内装が近未来的で格好良かった。黒背景に赤文字で館内が統一されていて、通路には赤色LEDが道を示すように敷き詰めてあるんです。それに館内の構成も分かりやすく且つスタイリッシュでした。

黒+赤って配色は警告色のようでドキッっとするから緑か青の方が……とも思ったりしたんですが、そもそも劇場なのでこれから観る映画に期待と不安を感じさせる非日常的な色の方が良いのかもしれません。少なくても近々観に行く予定のシュタゲ劇場版にはすごい合っていそう。




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