Marumaru's TinyPlaza
(2015.06.05)(book)ザ・サークル
『ザ・サークル』/ Dave Eggers (著), 吉田 恭子 (翻訳)
去年の年末に読んだのに感想を書くのを忘れていた一冊。
グーグル社をモチーフにしたと思われるIT企業に入社した若手女性社員を主人公にして、これから来るであろう近未来の一つの形を描いたお話。
個人情報は全てクラウドに一元管理され、買物やSNSや家電にまでその解析情報が使われ、それが「可視化」され「共有」される世界。
使われているのは、今よりもっと高性能のスマフォ、数え切れない程の無線カメラ、ウェアラブルデバイス、ドローン、etc……。今の技術でも実現可能な事を、倫理の壁を取っ払って、低コスト化、小型化、省電力化して世界中にばら撒くとこんな事になるっていう未来を描いています。技術自体は今にもあるものだから非常に想像しやすいフィクションです。
これ、感想を書くなら本が出た当初だと思っていたんですが、気づいたら新年も半分近く過ぎて、更にドローンを使った事件が起こってと微妙に書く時期を逃した感があります。
便利さと引き換えにプライバシーを提供する事を求められるのは分かります。自己承認欲求を満たす為に自分のプライバシーを切り売りするのも分かります。だけど、普通に生活をする為にプライバシーの提供が義務化される世界は?自分の行動履歴が全てネットワーク上に残り、それを周りが当たり前のように参照する世界。
考え方は色々あるでしょう。が、親しい人や提供するもの以上の利便性が見返りにある場合は除いて、自分の行動を無差別にネットにばらまれるのは気持ちいいものではありません。
その情報に価値があるか無いか、誰が見ているか見ていないか、とかではなくて、見ようと思えば・調べようと思えば、それが可能な状態におかれているということは、ストレスに繋がります。
相手の情報が全てステータス化され、ログ化されている状態でのコミュニケーションというのは、相手のことを見ているって言えるのでしょうか?その状態だと相手の意識や自我ってどこにあるの?っていう攻殻機動隊的な事を考えながら読んでいました。
最後のオチがちょっと以外だったので、その部分を含めて他の人にも読んで貰いたい本でした。