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(2016.09.03)(book)ソードアートオンライン(18)

『ソードアートオンライン (18) アリシゼーション・らスティング』/川原 礫


第9巻から10冊に渡って続いたアリシゼーション編もこれで一区切りです。

主人公キリトが無双しながら活躍する、所謂、俺TUEEEEEEEEEEE!!を見事に体現した作品ですが、この巻はそれが特に顕著でした。アリシゼーション編の途中から半ば退場状態で久々の活躍だから仕方ないにしても、どれだけ万能の力を持っているんだっていうね。

ただ、その強さを受け止めて対峙してくれる敵方がちゃんと描かれていれば、どれだけ主人公が無双しようが読んでいる分には気持ちが良いものです。強さの理由もご都合主義と紙一重の伏線として書かれていましたし。むしろ、最後のこの展開に向けて物語の全てを収束させたのかも。

MMORPGモノの元祖的な扱いになっているソードアートオンライン(SAO)ですが、私はこのアリシゼーション編が一番好きでした。仮想空間の中ポリゴンで描かれたMMORPGとは違い、人の意思をデータ化したのものをサーバの中に展開する事により、夢を見ているような状態でプレイ出来るVRとは全く違うシステム。そして、それ故に人の想いの力が時としてシステムを超えて具現化するという設定にとても惹かれていました。(最初読んだ時に某アースのセフィーロが浮かびましたが)

そして、アリシゼーション編のもう一つのテーマである、仮想空間との現実世界との融合。利便性等の関係で、集会等が仮想空間の中でアバターを関して行われるようになった時、AIと人間の区別は一体どうやってつければ良いのだろう?そんなSFでは古典的なテーマですが、身近なMMRRPGベースの世界で行われると、やっぱり夢中で読んじゃいます。

更に、五感の全てを投じて行う仮想空間での生活は、認識という点において現実世界と何が違うのだろう?というテーマも同時に書かれています。この辺りは、アリシゼーション編の一つ前の短編であるマザーズ・ロザリオでも触れられていたように思います。結局は自分の認識しているものが全てなので、本人の意識と想い次第なんだとは思いますが。

このSAOシリーズは最初のアインクラッド編が終わっても、茅場晶彦が遺した意志とシステムを巡って話が進んでいき、この巻でも肉体はとうに亡くなったはずの茅場の意志に翻弄される展開がありましたが、ここまで引っ張ったのなら、キリトと茅場の直接的な絡みを書いて欲しかったなぁ、という希望もあります。天才の見えざる手に翻弄させる展開は好きですが(全てがFになるシリーズの四季のような)、最後にカタルシスを得させて欲しかったです。

それと、最後の一連の展開を素直に楽しめなかったのは、年を取った証拠なのかな?感じました。




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