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(2016.11.01)(book)上流階級 富久丸百貨店外商部II

『上流階級 富久丸百貨店外商部II』/高殿 円


大手百貨店で働く叩き上げのバツイチ女性が主人公の外商物語続編。

雑誌連載の為、一章毎に区切りをつけながらも、複数の話(問題)が同時進行しながらも最後に綺麗にまとまっていく構成は、流石高殿節と思ってしまいました。読んでいてテンポが良いんですよね。

最後に主人公が長台詞を語って、「……実はそれも分かっていました。」と言わんばかりに収束に向かう展開は、安楽椅子探偵モノを読んでいるような気持ち良さでした。1巻は綺麗に話を終わらせていましたが、この2巻では、各方面の問題にひとまずの区切りを付けながらも、次に繋がっていくような余地を残していました。多分、続編が出ると思うので期待が高まります。

作中で主人公の鮫島が「外商は何を売るのか?」と問われ、「恩です。」と言い切っていましたが、この台詞がとても印象に残りました。恩を売るって言葉だけだと色んな意味に取ることが出来ますが、売り手を人間として頼って、この人だから買いたい、この人から買いたいと思ってもらえる事なんですよね。

結果として売買する媒体はモノなんですが、どうして良いのか分からない時に懇意にしている外商さんに頼って、その人が知識と経験に基づいて薦めてくれたものなら安心して買える安心感の重要性。何より、何かあった時にその人の事が浮かぶ、モノを買うまでの会話も含めて満足してもらえる。モノだけなら、様々な方法ですぐに手に入る時代だからこそ、モノに付随するサービスや、モノを媒体とした人との交流って大切です。モノの値段が上がれば上がるほど、それは顕著なんだと思います。

高殿さんの描く女性は、物語を問わず本当に格好良い。




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