Marumaru's TinyPlaza

(2018.01.25)(book)弟の夫

『弟の夫』/田亀源五郎


今度、NHKでドラマになるらしい漫画。作者の名前はネットをやってる人ならどこかで聞いた事がある人が多いんじゃないかな。BLではない、所謂ゲイ漫画を描いてる人の一般紙での作品で、同氏のエッセイ本を書評で見かけて、そっちを読んでいる時に、この本の事を作る為の話が掘り下げてあったので先にこちらから読みました。

で、感想なんですが、これ道徳の教科書に丸ごと載せれば良いんじゃないかな?と言うのが素直なところ。

主人公の弟はゲイで、同姓婚が認められているカナダで結婚をしていたんですが、シングルファザーで娘を育てている主人公のもとに、先日亡くなった弟の"夫"が現れるところから始まる話。

最初は、この作者が描くごっつい男性の同姓婚の話に、正直ちょっと引いていた部分があったんですが、主人公がまさにその立場の人で自分の分身のような立ち振る舞いをしてくれました。そして、主人公の娘が子供ならではの非常にニュートラルな立場。

面白いとか面白くないではなくて、自分の周りに存在しないとなかなか身近な存在として考えたり想像したり出来ない概念について、家族という深い繋がりをもつコミュニティを舞台にして、様々な立場の人を交えながら考えを語ってくれた作品です。

LGBTに限らず、大人と言う体のいい蓑を何時の間にかかぶっていると、自分の知らない概念について最初は無条件に突っぱねてしまうものです。だけど、まずはその事について真剣に考えて、想像をする事から何事も始まるのだな、と。自分の中に概念を落とし込んだ時に、それでもやっぱり理解をする事は出来ないものもあるかもしれない。だけれども、自分の大切な人を取り巻くその概念を受け入れる事は出来るかもしれない。

大きく言えば社会のルール・法だったり、身近で言えば世間体だったりで、自分より大きな枠組みが決めている事だからと無条件に善悪を決める事は簡単です。けれど、それは流されているだけであって、自分で考える事を放棄しているのかもしれません。

自分で考えた末に辿り着いた答えが、社会・世間が現状において良しとするものと違ったとして、それでも自分が大切なものの為に、自分の答えを回りに向けて発言する勇気があるんだろうか。そんな事を考えました。

当然、考えた末に自分の中に仕舞っておくというのも立派な答えです。が、この本はその答え(=敢えて言う必要はない)に対して、「どうして、敢えて隠すの?」と疑問を投げかけているんです。この「敢えて言わない」と言うのは非常に日本的な考えです。迷ったら言わない方が角が立たない、という非常によく分かる考えです。ただ、それを「敢えて隠す」と感じるぐらいに自分の身近な事として考えている。この本が語っているテーマはそれくらいに大きな事なんだ。と思いました。




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