Marumaru's TinyPlaza

(2018.04.08)(book)寮生

『寮生 一九七一年、函館。』/今野 敏


函館の男子高校の寮を舞台に繰り広げられるミステリ。

何が面白いって、タイトルにもある1971年っていう設定。携帯やSNSなんて当然無くて、電話も寮の設置電話に呼び出して貰う方式。だから必然的に会話は人と人が面と向かって行う事になるんですが、人を呼び出すまでの駆け引きであったりとか、先輩後輩関係入り乱れる中での会話の緊張感がたまりません。

それに、通信手段の無い狭いコミュニティの中で絶大な幅を利かせる「噂」という存在。時として「伝説」と呼ばれるものにも格上げされる、その存在の影響力、そして虚ろさ。

読みやすくさらっと終わり、少しの物足りなさはありましたが、それが1971年という時代の空気を表していた。と言うと言いすぎでしょうか。色んなものが無くて確かに不便ですが、その分、人間や物事の本質を澄んだガラスのように映し出す事は出来る、そして熱を持って何かをしないと何も始まらない。熱があれば無から何かを成せる時代。

あと、女子との甘酸っぱい関係が何とも。青春だなぁ。

そして、最後に振り降ろされる一刀の切れ味も抜群でした。




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