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(2018.05.18)(book)ハミングバード・ベイビーズ(2)

『ハミングバード・ベイビーズ』2巻/朔田 浩美


面と向かって告白をして返事が貰える恋は、結果に関わらず、とても爽やかで青春してて恋に恋する自分よがりの恋。

それを若さだと、子供だと言うのなら、大人というのは雰囲気を察するもの。直接的な言葉は言わずに、雰囲気で状況の積み重ねで答えを類推するもの。

1巻とは打って変わって平とヨネを取り巻く恋愛模様が渦巻いている2巻、完結巻。地の文を使わずに会話と流れる雰囲気で語られる心情描写が良いです。恋愛や将来の事を、音楽と飯を通じて語る物語っていうのは新鮮でした。

心の奥に仕舞いこもうとしている記憶の扉が、ふとした何気ない一瞬に流れる情景に紐付いて開いてしまう。そんな心の機微を繰り返しながら、記憶は時間と共に流れていって心の琴線は手の届かない遠くへと沈んでいくのかもしれません。

鳥の囀りっていう名を冠した二人ですが、平は鳥は鳥でも鷭(バン)だったのかもしれない。底の見えない可能性と底知れない畏怖のようなものを纏った平、そしてその平には自分が必要だと感じて平をあきらないヨネ。ハミングバードベイビーズにはどんな未来が待っているのか……っていう話ではないんですよね。平もヨネもお互いにコンプレックスを抱えていて、そんな二人がお互いに音楽を通じて惹かれあっていく。そんな二人の心情を飯を通じて描いているが好きです。壮大なストーリーがある訳じゃなくて、普段の時間の流れを切り取ったような。

1巻は飯漫画+音楽+女性デュオ。っていう要素の組み合わせで見てしまったんですが、2巻収録分の内容から心情面の踏み込みが深くなったような気がします。もしかして1巻は準備期間だったのかな、と思う程。

魅力的で才能がある主人公(平)が居るのに、その才能部分に焦点を当てる訳じゃなくて、平の感情的な日常を描いてるんですよね。傍から見ると飲んでばっかり、っていうか音楽要素もある漫画なのに飲みのシーンが多すぎるだろ!って思ったりもしたもんですが、なんだろな、飲み(食事)っていう欲求を満たされる場で吐露される感情的な会話で場面が進んでいくって面白い。

正直、この漫画って最初から2巻完結の予定だったのか、2巻で打ち切りになったのかは分かりません。ただ、交差する人間模様の流れを切り取って傍から眺めるような、こんな漫画があっても良いよね、って思いました。




ちなみに、一番印象に残った……と言うかお気に入りのシーン。読んだ人には分かると思うんですが、想像におまかせするってこういう事ですよね。深く語らない事が一番の正解って言う。

『ハミングバード・ベイビーズ』2巻より




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