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(2019.06.25)(book)悲観する力

『悲観する力』/森博嗣


図書館にリクエストしていたのですが、予約が入っていたのか借りられるまでに妙に時間が空いてしまいました。ちなみに県立からの取り寄せです。岡山の県立図書館は入館者数とかで度々ニュースになるだけあって、色んな本を検索した時に他の図書館には無くても県立だけには蔵書がある、というパターンによく遭遇します。そんな知の泉を一度訪れてみたいものです。多分、この本を勧めて頂いた方と行くのがテンション的に一番盛り上がりそうな気がします(私信)。

と言う訳で、「すべてがFになる」で御馴染みの森博嗣さんの著書です。

インパクトのあるタイトルですが、仰っている事は至極真っ当な事で、うんうんと頷きながら読んでいました。

自分の好きな言葉に「物事は段取りが9割」という言葉があります。次にやる事をイメージして、その中で必要なものを用意して、起こりえる事態を想定して先手を打って対処をしておく。そうすれば本番は予定調和としてあっけなく終わる。

そういう、先の事についての考えを巡らす事、起こり得るかもしれない事について想像する事、その中で生まれた将来のデメリットの種を早めに潰して行きましょうね、と。そして何事をするにしても、時間が一番汎用的なリソースである。時間に余裕を持った行動をして、結果として時間が余ったならその時間は次の事を考えれば良い。

いやもう本当にその通り。感情論の全く介在しない歴然たるロジックの通った正論です。

その中で個人的に興味を持った部分は、所謂ポジティブシンキングについてでした。気持ちを高めて前向きにしていれば良い結果が出る。という根性論には理屈が通ってないよ、と。

ここからは自分の思いですが、自分の人生だから誰が責任を取ってくれる訳でもない。結果が出ればそれが正解なのだけれども、ポジティブシンキングと言う名の楽観論に溺れて思考停止になるよりは、目の前の障害を思い描いて一個ずつ取り除いた方が理屈として成功の可能性は上がりますよね。そんな事を諭されているように感じました。

そして、デメリットを想定して対処するのはあくまで未来においての話。過去はどうやっても改変出来ないんだから、過去について「悲観」するのは意味が無い事かもしれない。過去は楽しい思い出だけを取っておいて、目の前に横たわる未来について思う存分に「悲観」しよう、と。何があっても死ぬ事より最悪な事はない。そしてみんな最後には死ぬのだから。

内容と言うか根底にある思想が、先日読んだ恋のツキと妙に被る所があるように私には思えました。

私の好きな言葉その2に「過去と他人は変えられない。未来と自分は変えられる」というのもがあるんですが、まさにそうだよなぁ、と。考え抜いて、段取りをすませば、後は人事を尽くして何とやらと言うか、何があっても少なくても自分は後悔をせずに自分の事を信じられる自身を持てるのかもしれない。そんな事を考えていました。

ただ、起こり得る不安を想定して対処すると言う「悲観」はあくまで自分の内面に対して行う行為であり、それを無闇矢鱈に「感情論的に」周りに触れ回るのは、ただの扇動者なので悲観をするのは自分だけで良い。他人の考えを簡単に変えようなんて事はおこがましい事なんだ。




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