Marumaru's TinyPlaza
(2024.09.23)(book)君の地球が平らになりますように
『君の地球が平らになりますように』/斜線堂 有紀
図書館が毎年恒例の蔵書点検に入り暫く閉館になるから、と言う事で借りてきた本の一冊。
前回読んだ、夏の終わりに君が死ねば完璧だったからの作者の著書です。上記の本は、不治の病にかかった女子大生と男子中学生が心を通わす話で、正直よくある話でしたが、物語のストーリー自体よりも文章自体、そして愛と言う不確かなものの描き方が自分の好みでした。
さて、この本は5本の短編からなるオムニバスです。5本すべて女性が主人公で、テーマは恋愛と言って差し支えないと思います。ただし、どの話にも共通していると感じるのは、登場する女性が相手の男性からの愛を見つけられずに苦しんでいるところ。
一見幸せそうに見えるカップル、相手はとても大切に尽くしてくれているはずなのに、何が足りないのか。彼女たちは何を求めているのか、そんな内容が描かれています。
価値観が違っても、付き合ったり一緒に暮らす事は出来る。相手の気持ちは自分に向いているかもしれない、自分を思い遣ってくれているのかもしれない。だけど、価値観が違ったままだと言葉は心はすれ違ってしまい、進もうとする時も同じ目標にはたどり着けないかもしれない。
私の持論として、大切な人とは互いの目を見て話をし、互いに同じ方向を見て歩みたい。とどのつまり、愛情と言うものは、互いの価値観をどこまで共有する事が出来るか、異なる価値観に対して、理解は出来ないまでも許容出来るか。そしてその為にお互いがお互いを気遣っているか。その努力の先に生じるものではないかと思っています。
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君の地球が平らになりますように
- 陰謀論に嵌った彼氏と言うのは面白いテーマ。価値観の違いについてとても分かりやすい例だと思いました。
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転ばぬ先の獣道
- 誰に対しても優しい人は自分に対しても優しくしてくれる。ただそれは、無くなっても代わりがきく関係なのかもしれない。結婚という名前の契約に対する価値観の違いとか。
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『彼女と握手する』なら無料
- 地下アイドルの話。自分を一番愛して欲しいという承認欲求を分かりやすい尺度で求めると拗れるという話。「私と10秒握手するのに3千円」と言うのは、性的サービスに対価を計算してしまう夜職に通じるものがあります。
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大団円の前に死ぬ
- ホストと結婚したい女性の話なんですが、この話は男女関係よりも登場する女性同士の関係の方が面白かった。ホストのエースを狙う争奪戦を通じた不器用なコミュニケーションが描かれています。
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平らな地球でキスは出来ない
- 最初の話に絡めた短編。内容を踏まえて、タイトルの付け方が非常に秀逸でした。
何と言うか、全体的に二人の間に信頼関係が存在してないんですよ。基本的に男性側に問題がある。ダメ男にひっかかった女性の短編集……と言い切るのは簡単ですが、それだけでは割り切れない様々なシチュエーションが描かれていて面白かったです。ただ、『大団円の前に死ぬ』に登場する女性二人の間には確かな心の繋がりがありました。
ここまで書いて思ったんですが、この作品、すごく壮大な『だめんず・うぉ〜か〜』なのかもしれない……。