Marumaru's TinyPlaza

(2025.03.05)(book)あのこは貴族

『あのこは貴族』/山内 マリコ


東京生まれのお嬢様として何不自由なく暮らしてきた華子。しかし、適齢期を過ぎ結婚への焦りを感じていた。婚活や友達の紹介の末に出会ったのは、同じく東京生まれ、慶応幼稚舎からエスカレーター進学の現在弁護士、政界との繋がりも深い御曹司・幸一郎。二人はあっと言う間に婚約関係に至る。だが浩一郎には別の関係があった。慶応繋がりで出会った地方出身の苦学生・美紀。彼女のはすっぱな性格に惹かれ、都合の良い付き合いを続けていた。そんな3人の関係をそれぞれの女性の視点から描いた物語。

この話で興味深いのは、所謂「お金持ち」の世界、生き方についての描写。自分の家を守るという名目で、馴染みのお店も、友達付き合いも、生き方自体がクローズドサークルとも言えるとても狭い世界の中で完結している。その、狭い東京の中での普通は一般の普通とは乖離している世界。その「お金持ち」の末裔達は、時代が変わっても、その考えや志は何一つ変わらずに生き続けるのだろう。

そんな中で、幸一郎と結婚するも、自分を殺して旦那に使える妻としての生き方に疑問を呈し、鳥籠を自分で開けて広い世界へと羽ばたいた華子の物語。華子の今までの生き方は何も間違っていなかった。今までお嬢様として過ごしてきた時間の経験があるからこそ、付け焼刃ではない本当の所作があるからこそ、華子は自分の人生を切り開けた。

自分の意志で未開の未来を切り開いた華子の歩む道は、狭い世界で過ごす人達とはそれほど交わらないかもしれない。けれど、華子は今までの人生やそこで出会った人達を否定したりはしない。それらは全て自分の糧なのだから。

自分の知らない世界を追体験出来、話の内容もとても気持ち良い。変わらない相手と過去に囚われず、自分と未来を変えて往く。そんな気持ちのいい作品でした。




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