Marumaru's TinyPlaza

(poem)087_セーター

「セーター」

何も思わず普通に着ていたセーター
ううん”暖かい”ぐらいには思ってた

暖かさに包まれていることが嬉しくて
着ている事が幸せで
持っている事が誇りだった

だから何時しかセーターは解れかけていた事に
気づかないまま時は流れてた

小さな解れからシュルシュル毛糸は解けていって
気づいたら手元にあったのは
セーター一着分の大きな毛糸玉

季節が変わって春が来て
頭をよぎるのは
いつも記憶の中のセーターの事ばかり

ひと編みひと編みに込められた思い
あの時の私は分かろうとしていなかった
ただ目の前にあるセーターを
当たり前に着ていただけ

手の中の毛糸玉
セーター一着分のそれといくら眺めてみても
いくら涙を注いでみても
セーターにならない事は分かっている

あんなに暖かかったセーターに編み込まれいたもの
それがどれだけ大きいものだったか

今になってようやく分かった