Marumaru's TinyPlaza

(2015.08.11)(book)塩の街

『塩の街―wish on my precious』/有川浩


有川浩さんの初期作品。今の作風からみるとびっくりするぐらいのSFファンタジーでした。

東京湾に巨大な結晶が落下してきてから、世界は人間が塩に変わる「塩害」が発生し、日本は人口の半分が死滅した荒れた果てた世界になっていた。そんな世界が塩に変わろうとする世界の中で繰り広げられる、少女の恋のお話。

エンターテイメントのお手本のような作品。起承転結がしっかりあって、話の展開もうまいし、登場人物が少なくて読みやすい話でした。恋愛要素もしっかり入ってるし。電撃小説大賞の大賞受賞作らしいですが、そりゃ大賞も獲るわって作品でした。

突然飛来した結晶(というか隕石)によって人々が塩になってしまう。そんな極限状態の中の話ですけど、何故そういう状況になったかとか、それが何なのかとかは全く書かれていないんです。ただただ、その極限状況の中で必死に生きて恋をしようとする少女と、それを取り巻く人たちの話。これって所謂「セカイ系」になるのかな?読んでいて、頭の中にずっと「最終兵器彼女」が回っていました。

しかし、「少女の願いが世界を救う」(物語的にはだいぶ違います)という王道テーマは、王道だからこそ上手に調理してあると、本当に美味しくいただけました。繰り返しになりますが、電撃大賞を受賞したのが納得の作品でした。

これは文庫版ですが、後から内容を修正、加筆したハードカバー版が出たそうです。



(2015.08.13)(book)フェルマーの最終定理

『フェルマーの最終定理』/サイモン シン(著)、青木 薫(翻訳)


私がフェルマーの最終定理にまつわる物語を知ったのは、以前にネットで読んだまとめサイトからでした。

フェルマーの最終定理証明までの話を、関わった人達に焦点をあて、ストーリーとして読みやすく、面白くまとめられていました。

上記サイトで最終定理について興味を持っていたので、この文庫本を読んでみました。

この本は、人物もそうですが、古代ギリシャのピュタゴラスから脈々と受け継がれ進化を続けている、数学の歴史に焦点をあてて書かれています。

物語としての進行に支障がない範囲で、数々の数学理論について分かりやすく説明をしてくれているので、フェルマーの最終定理が証明される過程で生み出されたテクニックについての理解が深まって、尚更楽しめました。

巻末に補遺として、より突っ込んだ内容の解説があるんですが、そこが分かりやすく書かれていて面白かった。補遺の最初で、有名な三平方の定理の証明があったんですが、この証明って改めてみると本当に綺麗です。いきなり、証明で感動させるとかずるい!って思ってしまいました。

余談ですが、私は学生時代に数学が苦手で「なんでこんなのやるの??」と思っていました。ですが、この本で数学の色々な概念が生まれた理由を知るとすごく納得出来たんです。それと数学が解けるのはまた別問題でしょうが、少なくてもとっかかりの印象は違ったはずです。

今更こんな事を書くのもすごく恥ずかしいんですが、数学の平方根(ルート)や虚数(i)は、今の時代に一から勉強しようとすると、その存在に疑問を持ってしまいました。

例えば平方根、2乗すると2になる数は無限に続く少数なので、その正確な値は数字だと標記出来ない。だから、2乗して2になる数を表す方法として平方根という概念を新しく作る必要があった。

例えば虚数、2乗すると-1になる数は、数字では表せない。だけど計算上必要になるから、2乗すると-1になる数を表す為に新しく出来た概念だったんですね。

数学ではすべてのものを定義し表す必要がある。だから今までの方法だと表現出来ない値が出てくる度に、新しい概念を作って拡張してきた世界だったんですね。「なんであるんだろう?」じゃなくて、「必要だから新しく作った」のだと理解した時に、考え方が変わったような気がしました。

学生時代はそんな事を深く考えずに、公式に当てはめてただ問題を解いていましたが、当時こういう事を考えていたら、数学を途中で挫折しないですんだの……かもしれません。

しかし、今になって思い返してみると、文系だから数Ⅱと数Bまでしかやってないとはいえ、高校数学ってかなり高度な事をやってたんだなぁ、と。一般人的には、数学の必要性とは、新しい概念を理解して吸収する力を鍛える学問のような気がします。

本の感想とは関係ない事を書いてしまいましたが、非常に好奇心を刺激される面白い本でした。



(2015.08.25)数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数

『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』/結城浩


先日読んだフェルマーの最終定理に触発されて図書館で借りて来ました。

sinやcosの三角関数について、「そもそも、sinとは何なのか?」「sinを足すとはどういう事なのか?」を、そもそも円周率は何ぞや?というところから詳しく説明してくれてました。

この本の良かったところは、説明を1ステップずつ図解しながら説明してくれているところです。紙に書かなくても順を追って図を見ながら説明を読めば理解する事が出来ました。

高校時代は、公式を覚えて計算を解くだけの三角関数でしたが、そもそも何を表したいが為のものなのか、その意味を丁寧に説明してくれたので、三角関数自体に興味を持てました。会話形式で進むので読みやすいのもいいです。

でもこれって、高校時代に数学好きな人が読んでおくと、一番為になる本のような気がしました。



(2015.08.30)校長、お電話です

『校長、お電話です』/佐川 光晴


問題のある前校長の後釜として、母校の中学校に校長として着任した、シバロクこと柴山緑郎(46)の熱血校長ストーリー。

最近、人情味溢れるストーリーはよく見かけるけど、校長が主役というのは珍しい。校長という役職上、外聞に気遣い、普段は職務に追われる中で、学校や生徒の為に燃える姿は読んでいて応援したくなりました。

前校長のパワハラにより精神的な病に陥ってしまった教師と、その教師を慕う生徒達の話を軸に進んで行くので、ストーリーがぶれる事なく綺麗にまとまっていました。個人的には少し読み足りないので、シリーズ化して他のエピソードも読みたいところ。一巻だけで終わらすには勿体ない設定です。

余談ですが、この校長は酒が好きという設定で、作中で様々な酒を美味しそうに飲んでいるので、読んだ後に晩酌をしたくなりました。ギネス良いよね。




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