Marumaru's TinyPlaza

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   D r o p   o f   p a s s i n g   m o m e n t .

     A n   e s s e n c e   o f   d a i l y   l i f e .

       T h e   c a n v a s   p a i n t e d   m y   c o l o r .

         E n c o u n t i n g   n e w   s e n s i b i l i t y .

(2025.10.20)同級生とキャンプしてきた

同級生と久々に泊まりキャンプをしてきました。この年になるとなかなか予定を調整して出掛けるのが難しくなるもので、先に日取りを決めたのは良かったんですが当日の天気が少し微妙な感じに。だけど、もうこの日しかないということで無理矢理決行してきました。

キャンプ地は山の上にある広場。空気が綺麗……な気がする。

そして設営。テントはこの日の為に準備したBUNDOKのソロドーム。個人的にテントはソロ用のコンパクトなものが好きなのですが、泊まりキャンプとなると夜露や日差しの関係で、どうしてもテントとは別にタープを用意することになります。

なのですが、この軍幕タイプのテントならソロ用のサイズにも関わらず前が大きく開くので、タープを用意しなくても日差しを防ぐことが出来て、インナーを張ってもテント全面に大きなスペースがあるので、夜はテントをフルクローズした状態でも前室部分に荷物を入れられるし、テントの横にもそれなりのスペースがあります。

夜にテントの前室に荷物をしまうだけなら、手持ちのBUNDOKソロティピーでも良いんです。こちらもテント後ろ半分にインナーを張って前面を前室として使えます。設営も基本的にはポールを1本立てるだけなので楽です。

今までのテントはフライがポリエステルなので、焚き火をする時はテントから少し離れたところになってしまっていました。手持ちのタープも同じくポリエステル製なのでせっかくタープを張ってもその下では焚き火が出来なかったり。

なので、テント一つでテントとタープの役割を兼ねていて、TC製故にテントの下で焚火も出来るこのテントがすごく魅力的に思えて買ってしまいました。

このテントはほぼタープと同じ張り方をするらしいのですが、今まではタープもダイヤモンド張りやリーンツーといったタープにペグを直打ちして、なるべくロープを張らない張り方しかしてなかったので、所謂一般的なタープを一人で張る方法(テンションをかけながら左右2本のポールを立てる)を初めて経験しました。

これがなかなか難しい。長さを測ったはずなのに上手くテンションがかからなかったり、テントの前後を間違えていたり、しまいにはメインポールとサブポールを間違えて設営してしまったり……。このテント、本当はメインポールの方が低く、サブポールによる前の跳ね上げはテントの天井より少し高くなるはずなんです。

結局、最後までメインポールとサブポールを逆に付けていたのに気づかずに、跳ね上げが少し低く、テントのサイドが地面から少し浮いてしまう変な設営になってしまいました。ただ、これも経験。自分の為に自分が設営してるんだから、自分が納得したらこれも正解って事にしましょう。次回直せばいいし。キャンプってこういう失敗も楽しめる試行錯誤が本当に楽しい。

でもまあ、それなりの設営が出来たんじゃないでしょうか。

何とか設営が終わったので一服。サッポロ赤星とジャイアントコーンで。

焚き火が準備出来たので、ウィンナーと友達が持ってきてくれたクジラのアヒージョの缶詰をいただく。美味しい。缶詰を直火にかけてますが、諸々分かった上で自己責任でやっています。

夕飯の時に合流する面子がいるので、ここでは軽くつまみながらのんびりと。

雨が降ってきたのでテントの下に避難。この時にソロベースにして良かったと実感しました。張り方を間違えて跳ね上げが少し低くなってしまったとは言え、大人二人が十分にテントの下で雨を防いで過ごせるスペースが確保出来ました。このテントがあれば、2人までならタープ要らないかも。

夜、無事合流出来たので、焚き火を囲んで鍋。

何度もやっていますが、円形のファイアーディスクソロで焚き火をして、その上にいろり鍋をトライポッドで吊るす。この絵面が本当に大好きです。私の中のキャンプにおける理想形の一つです。

風防のてっぺんに友達がLEDランタンをつけてメインの明かりにしていたんですが……何この映える感じは!?まるでゲームの1シーンみたい(ゲーム脳)。私はモンハンのベースキャンプ、友達はダークソウルのキャンプを連想していました。

友達がアヒージョのあまった油でパスタを炒めて、たらこパスタを作ってくれました。アヒージョの油は魚醤のような感じだったんですが、同じく魚介のたらことマッチしていて美味しかった。

そして焚き火を囲んでとりとめの無い話を。この時間が一番の贅沢です。

ルミエールランタンは最高の雰囲気アイテムだと思う。

そして よが あけた。

高原の朝。霧雨が降っています。

ちなみに夜はずっと暴風雨でした。風の音が凄かった。だけど、テント内には全く雨が入ってこなかったので音が凄かったのを除けば普通に寝られました。

朝ごはん。雨が降っていたので焚き火は諦めてテントの下でホットサンドとかカップ麺とかを。やっぱり簡単な調理ならシングルバーナーが便利すぎる。


そんな訳で久々の泊まりキャンプでした。気心の知れた友達とだから楽しくない訳がないし、他の人が居ると道具や食材をシェア出来るから便利だし楽しみも増えますね。

期せずして雨キャンプになりましたが、雨キャンプもたまにするぶんには雰囲気があって楽しい。……撤収が大変な事を除けば。



(2025.10.12)メダリスト展に行ってきた

義実たか(@black_and_short)さんと大阪は梅田のメダリスト展に行ってきました。例によって日帰りの弾丸旅行です。



朝、まだ暗いうちに家を出て新幹線に乗ります。暗いうちから動き出していると旅行の波動が高まります。冬に風が吹きすさぶ中、コートの襟を立てていたりすると余計に。

ひなたの湯


新大阪で合流して最初に向かったのは近所の銭湯。最近、日帰り旅行が多いので工程の最初に温泉を入れる事にしています。これがまた本当に気持ち良いのよ……。

一見普通のマンションの最上階に銭湯があります。最上階のペントハウスみたいな空間を改装したのかな?こじんまりとしていますが、それが逆に都会のオアシス感を出していて好き。

しかし、ビルの9階で眼下に広がる大阪の街並みを眺めながらお風呂に浸かれるって言うのはなかなか新鮮な経験。上を見ると飛行機が空を横切っていたりしてもう。

ちなみに、JAFカードを持参するとタオルセットが無料みたいです。

そしてお風呂上がりの一杯。朝から風呂入ってビール、本当に至上の幸福。まさに旅行の醍醐味。クラフトビールのスプリングバレーを頂きました。

飲みながら話をしていたら、ハッピーアワーが始まってお酒が300円になったので、しょうがないにゃぁ……とおかわりのハイボールを。

ハイボールは氷と割り方でどれだけでも少なく薄く出ますけど、しっかりとした味わいで非常に美味しかった。多分角を使ってると思う。お値段以上にしっかり楽しませるぜ!という大阪の気風を感じたような気がしました。

大丸 梅田店 『メダリスト展』

入り口前に展示のメインビジュアル。会場付近はかなり混雑していました。入場時間指定のチケット(滞在制限は無し)だったんですが、私も含めみんな好きな人ばかりなので真剣に見てるから場内が動かない。

でも、せっかく来た好きな作品の特設展、そりゃゆっくり観たいよね。

会場内は部分的に撮影可能だったので、撮影可能な部分を何枚か。特設展の最初に作者からの展示に際してのコメントがあるのはそれだけで嬉しくなる。

原作コミックはKindleで購入しているので、紙媒体の大きいサイズで作品を観られるのは新鮮でした。

怒涛の内容を象徴するかのような13巻の表紙イラスト、この表情だけで物語になっているのが凄まじいんです。

メインビジュアルを使ったPOP……ん?メインビジュアルって写ってないところも描かれてるってこと!?このメインビジュアルは本当に大好きなので個別キャラのPOPとして等身大で観られたのは幸せ。キャラクターの存在を近くに感じられます。

今回の展示、原作イラストに原作の台詞をかぶせてるものが多いんです。それ自体はよくある事ですが、場面とシーンのチョイスが本当に上手で、原作のハイライトが大きなサイズになって目の前で展開されているとテンションも上がるし、記憶が頭をよぎって目頭が潤んできます。

原作でも重要な要素になっていたバッジテストのバッジ。このバッジの重さたるや。こうやって現実と物語を繋げてくれる演出は有難い。

光さんと夜鷹純のペアは本当に好き。物語が進んで来るとこの二人のカラーが黒(モノトーン)だった事も今後の展開を見据えた伏線なのかと思ってしまいます。

私的序盤屈指の名シーン。台詞でいのりさんの心情を、テキストで司先生の心情を表現するという粋な演出。

作中の服を実際に再現したコーナーもありました。メイキング等も含めてしっかりと過程が紹介されていました。コスプレ勢には垂涎の企画だったと思う。

しかし、こうやって衣裳が展示されていると、こんな小さな身体でたった一人氷上に立っていたんだ、と解像度が高まりました。司先生のブロークンレッグもこの長身で繰り出されたら格好いいだろうなぁ、とか。

もうね、こんなの涙無しに観られないじゃない。二人分の人生を賭けて獲りに行こうとしている色が目の前に。

そして出口まで。これも屈指の名場面(名扉絵?)です。この二人の間をくぐって展示を出るという演出。下には「TO BE CONTINUED」の文字。そうなんだよ、物語はここから更に続いて行くんだよ。そして、この出口の先は物販に続いているから、来場者の物語も(物販へと)続いて行くんだ。


これ以外にも、アニメのスケーティングシーンを描く際のモーションキャプチャーから3Dモデルを動かして、アニメとしての補正をかけていく過程や、アニメを使った各種ジャンプの解説などがありました。

体感型の展示としては、司先生のパーカーの紐を実際に引っ張れるコーナー(引っ張ると超デカい音量で司先生が励ましてくれる)、ARを使ったキャラクターとの撮影コーナー、氷上を模した地面を歩くと軌跡が輝くコーナーなど、メダリストという作品の魅力を様々な方向から伝えてくれる企画が満載でした。

展示を通じて感じたのは、この企画をした人のメダリストにかける熱量。どんな企画も、これはファンが喜ぶやつ!っていうツボを押さえたものだったし、様々な場所に展示されている原作シーンと台詞が完全に「わかってる」チョイスなんです。

大好きな作品と現実を繋ぐ知識の架橋として作品に対する解像を高めてくれる、そしてメダリストをもっともっと好きになれる、そんな素晴らしい展示でした。

『メダリスト展』 つるま先生コーナー

そんな感じでメダリスト展の感想を書いたのですが、この感想は同展の大半を占める撮影可能部分の感想です。

ですが、これは本当に氷山の一角。この『メダリスト展』の本領は撮影不可エリアの中に設けられている『つるま先生コーナー』にあると言っても過言ではありません。メダリストではなく、メダリストを生み出したつるまいかだ先生自身について触れられているコーナーです。

正直、敢えて撮影不可という括りにしているコーナーなので、そこでの体験を含めて実際に来場した人の特権だと思っているので詳細な内容は語りません。

ですが、『乙嫁語り』の森薫先生や『ダンジョン飯』の九井諒子先生の展示の際にも感じた、突き抜けた作品を生み出す創作者が方向性は違えど共通して持つ圧倒的な熱量、言い換えれば一種の狂気のようなものを感じられました。

その場に展示されていた内容が、つるまいかだ先生という創作者の事を何よりも雄弁に語られていました。

と言うか、つるま先生コミティアで同人誌出されていたんだ。ネットを眺めると、メダリスト以前のまだ無名の時代に出されたその同人誌を、純粋な本の魅力で手に入れている人が結構居て羨ましい限り。

新梅田食道街

メダリスト展で心を満たした後、お昼もだいぶ回っているのでお腹も満たしておこうとお昼へ。せっかく大阪に来たからお好み焼きを食べよう、と言う事で近場にある有名らしいお好み焼きのお店に向かいました。

JR梅田を少し離れた阪急梅田駅の高架下にある『新梅田食道街』という中にありました。と言うか、JR駅近辺は綺麗で輝いている感じでしたが、阪急梅田駅が近づいてくるにつれて地元感と言うか下町感が出てきました。

この食道街もすごく狭い通路の中にカウンターだけの小規模店舗がひしめき合う活気のある場所でした。個人的にはすごく好き。



で、辿り着いた目当てのお店『SAKURA』なんですが、お店の前が長蛇の列になっていて1時間待ちだったので他のお店に行く事に。

串揚げ まつい酒場

お好み焼きがダメなら串揚げでも、ってことで食道街2Fの居酒屋に。てか、居酒屋が普通にお昼から営業してるのがすごい。

そして乾杯。どて煮が美味しい。しっかりした味でビールによく合う。

串揚げとかを。おすすめの果実酒を飲んでみたんだけど、甘くなくそれでいて果実の味がして美味しかった。

しらいし

せっかく雰囲気のある飲食街に来たから、河岸を変えて飲み歩くかーってことで歩いていたら、日本酒の立ち飲み屋を見つけたので入ってみました。綺麗な店内とずらりと並んだ日本酒メニューが圧巻。

ここ、立ち飲み屋なのもあってメニューがすごくお手頃価格だったんです。このお造り3種盛りが500円台。

日本酒も1合、グラス、60㏄とサイズを選べるので色々と試したい欲求に応えてくれます。お店のオススメ銘柄の中から『蔵王 秋あがり』を。フルーティーで美味しかった。

で、肴に魅力的なものが多いんです。飲みながら食べたくなるものばかり。これは、うざくっていう鰻ときゅうりの酢の物。これが300円とかですよ。立ち飲み屋とは言え梅田の真ん前ですよ、ここ。

雑談にも花が咲いて日本酒を数杯頂きました。こんなお店が近くに在ったらいいのに。店員さんも気さくな方でした。なんか、義実さんとの旅では、角打ちであったり日本酒立ち飲み屋さんで良い出逢いが多い気がする。

BRITISH PUB 『HUB』

最後にもう一軒だけ行きたいお店がある、と義実さんに付き合ってもらいました。チェーン店の英国風パブのHUBです。一杯会計なのが特徴。

関西に居た大学時代にちょくちょく行っていた雰囲気が好きなお店です。最近今酒ハクノ姐さんが取り上げていたのもあって行ってみたかったんです。

飲物を選んでいたら後ろが並んできたので、とりあえずエールを頼んだら、「ハッピーアワーなので云々」みたいに言われ、よく聞かずにじゃあそれで!って頼んだら1パイント(約570ml)でした(それがハッピーアワーで安くなってる)。もう結構飲んでるのでこの量は……。

あと、ここに来たらこれを!って事でフィッシュアンドチップスを。なんかフィッシュアンドチップスに妙な憧れがあります。

あと、普段は飲めないものってことで、アイラ島のシングルモルト、アードベッグを。これでもかと主張するピートの薫りが好きです。

そして、帰りに少し寄り道して土産話を……。



相も変わらずの強行軍でしたが、付き合って頂いた義実さん、本当にありがとうございました。旅は道連れ、同好の士と好きなものに繋がる体験をして、おまけに杯を酌み交わす。なんという幸せ。また機会を合わせて行きましょう。



(2025.09.22)(book)滅私

『滅私』/羽田 圭介


やっぱり紙の本ならではのギミックがあると嬉しくなる。電子書籍でも再現は出来るけれど、実際に紙をめくって味わった体験には価値があると思う。

所謂、ミニマリストについて書かれた小説。なのだけど、それだけにとどまらない小説としての面白さが良かった。タイトルの意味を最後に回収して考える時間を持たせてくれるのは個人的に大好き。

本を読みながらミニマリスト、断捨離みたいなものについて考えていました。最低限のモノしか所有しない事で得られる、空間、思考判断の手間、お金、etc……。そのようなリソースを使って何をするのかが大切なのかもしれません。

断捨離自体に快感を覚えて楽しくなるのは趣味として良いのかもしれませんが、過度な断捨離は体験や人付き合い、ひいては好奇心の妨げになるのかもしれない。そして、情報をデータ化して持っておくのも一つの手段ですが、モノが劣化する事によって生じる時間の流れだけは所有出来ないのかもしれない。

私が過度な断捨離について懐疑的なので上手く言葉に出来ませんが、ミニマリストという生き方はどこまで行っても縮小再生産なところがあると考えているので、一人暮らしならともかく、配偶者を持って家族を構成する際にはやっぱり難しいのではないかと。

特に、子供を持つのであれば、これから世界を知っていく子供に対して、人格形成が終了し価値観が形成されきっている個人のエゴを押し付ける事になるのではないか、と思いました。

畢竟、ミニマリストと言うのは独り身で過ごす際の一つの選択肢であり、それ以上でもそれ以下でもないのかな、と。



(2025.08.12)(book)りゅうおうのおしごと!20巻

『りゅうおうのおしごと!』20巻/白鳥士郎


20巻で本編が完結しましたが、長年このシリーズを追いかけていて良かった。心からそう思える内容でした。

今まで登場した数多くのキャラクターが総出演しての大団円。登場人物の中には、将棋を生業にできず、記者や解説者、小説家としての道を歩み出したキャラクターも居ましたが、皆それぞれ棋士としての熱い矜持を持っており、何より将棋が大好きです。そんな将棋好きたちによって作られ育て守られている棋界。

そんな世界の過去と今、そして未来を、幅広い世代の魅力的なキャラクター達によって、フィクションと現実が交わりながら描いてくれた素晴らしい作品でした。

ストーリーとしてのラストバトルは実は前巻の19巻での八一VS創多で終わっているんですよね。天衣によるAIの闇に取り込まれず、それを自らの糧とした八一と同じくAI世代の若き天才椚創多。

だから20巻での銀子とあいの戦いはエキシビジョンと言うか、RPGに例えるなら自分で操作するラスボス戦後のイベント戦闘のような感じでした。戦いを通じて、物語を当初描いていた場所へと着地させる為のイベント。大切な人と結ばれるための儀式。能舞台で行われた最終戦は情景が頭に浮かぶようでした。

銀子とあいが最後の戦いに向けてそれぞれのルーツを辿り、相手を知り、自分を知っていく。将棋が人間同士の戦いである以上、最終的には棋力以上にお互いの心の戦いなんですよね。最終決戦が番勝負ではなく一本勝負だったのも心の勝負に拍車をかけていました。

余談ですが、私の敬愛する棋士でありクリスチャンでもある加藤一二三先生の、大切な勝負の前は教会に赴き祈りを捧げていた。というエピソードが好きです。

なんだか本当に、それぞれのキャラクターがそれぞれの場所へ辿り着いて、物語が綺麗に幕を閉じた感じがします。全編を通じて好きなエピソードを挙げると、歩と釈迦堂さんが魂で繋がった純愛だなーとか(ロリがやたら取り上げられるけど、個人的にはこっちの方が衝撃)、桂香さんの棋士としての熱さ、供御飯さんの缶詰エピソード部分での八一に対するアプローチ辺りでしょうか。

特に最後の供御飯さんは、与謝野晶子の詩で気持ちを伝えてからの、「今なら全部こなたのせいにできやす。」の件が切な過ぎて。彼女も将棋という熱に取りつかれて憧れと恋心を混同しているのかもしれない、そしてこんな誘惑に八一が靡いてしまったら幻滅するのかもしれない、それは分かりません。が、八一もここまでされたら据え膳喰っとけよ!と。自分も大切な試合があるのに色んなものを犠牲にして八一に尽そうとするこのエピソードが狂おしく好きです。そしてその想いはちゃんと伝わり、著者近影を通じて滲み出ていたのも好き(その後の銀子の反応含め)。

そうそう、最後に20巻で言えば、捌きのマエストロこと充さんが本当に熱かった。飛車を右に動かして「俺の心が躍ればそれは振り飛車だ!(だったかな?)」の勢いが大好き。ただ、最終巻で明かされましたが今までの将棋部分監修はほぼ糸谷哲郎八段(元竜王)がされていたとのこと。だから、一見突拍子もない指し方に見えてもフィクションとは思わずに読めたのかな、と。

何はともあれ、最後まで熱量を保った本当に面白い作品でした。現実は小説より奇なりを地で行く将棋界において、時には現実に追い越されながらも、フィクションならではの観点で物語、そして将棋の未来の一つの姿を描いてくれた作品でした。この作品を通じて自分自身が将棋自体と棋界と取り巻く環境、そして棋士達の物語に興味を持つ事になりました。

そんな変化を与えてくれたこの作品に本当に感謝しています。



(2025.08.04)(movie)教皇選挙

『教皇選挙 CONCLAVE』


気になっていて劇場に観に行こうかと思っていたら上映が終わってしまい、かと思えば速攻でPrimeVideoに入ったので観ました。

まず、現代の中に生きる教会の姿の描かれ方が興味深かった。語弊を恐れずに書くなら、厨二心をくすぐられる非常に格好のいいものでした。コンクラーベを行う為に、世界各国の枢機卿達が法衣を纏い一堂に会する姿。教会の中の枢機卿達を迎えるに相応しい近代化されたホテルの中に存在する十字架や赤絨毯。

その人々がキャリーケースやスマートフォンといった近代の道具を使っている様子。そして集まって紫煙を燻らせる仕草。その枢機卿を支える為に派遣されるシスター軍団、そして近代的なキッチンで大量生産されるトラピスト的な料理。なんとなくヒラコーを彷彿とさせるようなワクワク感がありました(たぶん順序は逆なんですが)。

内容はまさに逝去した教皇に代わり次期の教皇を決める教皇選挙なんですが、閉鎖された空間の中での疑念や蠱惑、扇動が入り乱れる会話劇でした。しかし、ミステリならともかく教皇選挙でまさか殺人を行う訳にもいかず、最後の落としどころをどうするのかな?と思いながら観ていたところ、なかなか衝撃的な結末が用意されていました。

私はキリスト教に全く明るくないので雰囲気で観ていましたが、この結末はキリスト教ガチ勢にとってはかなりの波紋を呼んだんじゃないかな、と思います。これから見る世間の感想が楽しみ。

p.s.そうそう、みんな大好き『枢機卿(Cardinal)』という単語を聞きまくれるので色々幸せ。個人的に『枢機卿』『元老院』『辺境伯』は心ときめく3大ワード。




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