Marumaru's TinyPlaza

(2018.03.27)(book)パレードの明暗

『パレードの明暗 座間味くんの推理』/ 石持 浅海


警察官の愚痴を聞く事に関しては日本一、そんな座間味くんと大迫警視長、そして女性特別機動隊である南谷結月の3人で繰り出す飲み会の中での話。座間味くんシリーズの続編の短編集です。

ストーリーテラーの大迫警視長が語る話を頷きながら聞く南谷。話を聞き終えて「こういう話だったんですね」と〆ようとすると、意味深なセリフを吐いて場を凍り付かせる座間味くん。「それはどういう意味かね?」そして始まるどんでん返し。

話を聞いて既に完結しているであろうストーリーを別の側面から捉えて再構成し、全く別の物語に作り変えてしまうどんでん返しが座間味くん、と言うか石持作品の魅力です。その逆転劇のキーとなる言葉は既に一度会話の中で登場しているのに、最初の会話の中では普通の意味として読めてしまうのが面白いところです。流石にこの作者の作品をよく読んでいるので、その部分に意識するようになって気付く事が増えましたが。

与えられた条件をもとに話を組み替えるとこんな風にもとれる。だけど、その新しい道筋が正しいとも限らないし、今となっては分からない、真実を明らかにする気も無い。ただ、与えられた条件をもとに組み上げたロジックに破綻はないよね?そんな屁理屈の骨頂とも言える話の展開が何とも言えず好きです。

屁理屈だって理屈の一つ。感情論で上から潰す事は出来るけれど、理屈を覆すことが出来るのは違う理屈だけ。そんな事を考えてしまう自分も大概面倒な人間だとは思います。

ただ、収録されている最後の話「F1に乗ったレミング」に関しては、座間味くんが話を覆した時の「彼女は思慮深い」という発言に、座間味くんの推理とは別の結末を想像していました。彼女の思慮深さの目的は、園児を助ける為ではなく、自分だけが青年警察官海外研修制度に推薦さえる為のものかと思ってしまいました。

多少マンネリ感はあるものの、安心して読めるシリーズでした。雑誌の読み切り連載シリーズという事を考えると、本当に安定のシリーズだと思います。




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