Marumaru's TinyPlaza

(2019.08.23)(book)女衒屋グエン

『女衒屋グエン』/日向夏


中国の妓館『太白楼』が舞台の物語。

鈴木健也さんのイラストに惹かれて読んだんですが、作者は『薬屋のひとりごと』の方でした(未読)。

章のタイトルが妓女の名前になっていたので、章ごとに違う妓女にスポットを当てた話なのかと思いきや、綺麗な伏線の張り方で最後まで一気に読ます見事な構成でした。

妓館、ひいては花街という女性が主役の閉じた世界というのは、物語の舞台として使いやすいですよね。どのキャラクターも非常に魅力的でしたが、個人的には思思(スースー)の最後が小気味よかった。

長らく助走をつけての最後の盛り上がりと、少し謎を残した終わり方で気持ちのいい読後感でした。長編で続けられそうな設定なのに一巻で綺麗に終わらせているのが好き。

もしアニメ化するんだったら一琳がヒロインになるんだろうなぁ。ただ、設定的にアニメ化は厳しいのかな。途中のエピソードを削ったら1クールでちょうどアニメ化出来そうな感じがする。あ、一琳のCVは悠木碧さんでお願いします。思思は能登麻美子さんで。



(2019.08.24)(book)さくら書店の藍子さん

『さくら書店の藍子さん 小さな書店のささやかな革命』/浅名ゆうな


写真が趣味のちょっとネクラな高校生主人公が、個人書店を経営している本の事に詳しい年上お姉さん(オタク)に惹かれる話。

設定が色々と某ビブリアをかぶってるんだけど、作中でメタ的にそれを仄めかすのはどうなんだ、と。

あと、作中で「滂沱の涙を~」って表現があったんだけど、滂沱って形容動詞じゃなかったっけ?なんか違和感があった。

高校の女友達(主人公が好き)が出てきたり、本屋の経営を立て直す為に色んな取り組みをするところが面白そう。が、経営改善については1巻だとまだまだこれからというところなので、結果が出るのは次巻以降になりそう。

おっとりとした眼鏡のお姉さん、本屋の改革、同級生との三角関係、この辺りの要素を上手くミックスさせると面白くなりそう。



(2019.08.25)(book)M 愛すべき人がいて

『M 愛すべき人がいて』/小松 成美


浜崎あゆみは私達の世代の共通言語で、好き嫌いは別にしても、誰も表立って話題には挙げなくても、通じるんですよね。時代を作る歌手ってそういうものかもしれない。

私も当時は、特に好きと言う訳でもなく、むしろ世間で流行ってるからって理由で毛嫌いしてる節もありましたが、それでも当時はまだ音楽番組がTVで普通に流れていて、私も林原めぐみさんがランクインするのを楽しみにCDTVをチェックしていたりすると、必ずと言っていい程に上位に入っていて、聞く気は無くても有名どころの曲は頭に残ってる、そんな歌手。

それから少しして、多少ぼかしますがごく一部で有名になった『awareness』の動画に浜崎あゆみの『monochrome』が使われており、オタク特有の手のひら返しでその曲を好きになっていたりしたぐらいの頃、『M』が出たのを覚えています。教会の中で輝かしい光を浴び、ドレスを纏い、舞い散る羽と共に歌っているMVはとても衝撃的で、CD初回にMVが付くと知ってすぐに買いに走った記憶があります。

前振りが長くなりましたが、そんな浜崎あゆみの「事実をもとにしたフィクション」作品です。と言うか、別にどこまでが事実だろうか虚構だろうかはどうでも良いです。もともと僕らが見ていたのは歌手でありアイドル、偶像としての浜崎あゆみなので、偶像として求める姿を提供してくれる方が大事。

で、内容なんですが、女の子が敏腕プロデューサに見初められ、稀代の歌手としての階段を上っていく段階でお互いに恋に落ち、そして訪れる別れ……。うん、アイドルとプロデューサの話ってエンタメの定番ですよね。ちょっと内容が薄い感じもしましたが。

ただ、浜崎あゆみの歌詞は全て本人作詞で、その経緯と、それらは全て浜崎あゆみからプロデューサへの公開ラブレターだったって件は面白かったです。歌の歌詞が一曲丸ごと挿入される場面が何度もあったんですが、確かにその歌詞の内容が物語の展開に沿っており、話を盛り上げていました。

そして、作品のタイトルにもなっている『M』の歌詞が作品の〆として物語と上手くリンクさせて使われてるのが、曲が好きな人として嬉しかったです。

浜崎あゆみがどうこうと言うよりも、この構成を考えて作品にした人がすごいな、と。そしてハードカバーとは思えない時間で読み終わりました。



(2019.08.30)出雲市街について

昨日の日記?で書き忘れた事があったので別エントリーにて。

一泊二日で島根に行ってきた訳ですが、黄泉比良坂がある松江市東出雲町に至る道のりで出雲市街を通ったんです。そこにあったのは目新しい全国チェーンの量販店や飲食店の店舗や看板に囲まれた、よくある典型的な地方都市の姿。そしてその中で原色のゆるキャラやマスコットキャラがここぞとばかりに目立っていました。

正直な話、その光景に全く魅力を感じなかったんです。

と言うのも、直前まで出雲の山奥で神話の舞台巡りをしていて、神社が自然の中に溶け込むように存在する景色、雨上がりの朝に雲が立ち込める幻想的な景色、古民家で雨の音を聞きながらゆったりと過ごす時間。そういったものを目にし、耳にし、体で体験し、出雲と言う場所の素晴らしさを全身で感じていました。

豊かな自然があって、人の営みが自然に溶け込んで調和している美しい景色、しかし、ひとたび自然が牙を剥けば訪れるであろう災いの怖さ、そんなものを目の当たりにしたからこそ、この場所に住む人たちは目の前の生きとし生けるものに八百万の神々を宿らせ、物語をつくって崇めそして畏怖していたんだと感じる事が出来ました。

そんな場所を見たからこそ、その後に訪れた出雲市街地の貧相な際立っていたように感じたんです。

うん、比較対象が悪いです。

しかし、同じ田舎に暮らす身として、地元の町に大手チェーン店やコンビニ等が入ってくると、差し当たっての普段の生活はとても助かります。観光客を呼び込んでお金を落としてもらうには、キャラクターや名物を開発して盛り上げる必要もあるでしょう。その大変さもよく分かります。

でもね、キャラクターを前に小洒落たカフェでインスタ映えするパフェを食べるような、そんな何処でも買えるような劣化都会なものじゃなくて、出雲の山奥で見て聞いて感じる「体験」が一番の価値だと思うんですよ。神代から現代へと続く壮大な神話(面倒なんでツッコミは受け付けません)の舞台が目の前にあって、そんな壮大な物語が生み出されるに足る環境である事を実感出来る。その環境の中で過ごせる時間こそがこの場所を訪れる価値なんだと思いました。

ただ、実際問題として地元で暮らす人の普段の暮らしもありますし、出雲の山奥を回るには車が必須でしょう。そもそも、山奥で過ごす時間というもの自体が好みが分かれるところでもあります。

が、本来ある昔からのものが一番魅力的なのに、どうしてわざわざ後から薄っぺらいものを作るんだろう、と。

その点、お世話になった残響さんのところは、古民家をリノベーションして民宿で周りの自然と調和した過ごしやすい空間と、山にいる野生動物を猟師さんと協力してジビエという形で味合わせて頂きました。本来あるものを今の生活に合わせた心地よい体験に昇華させるってすごい事だと改めて感じた限り。

とりあえず、出雲市街地は色々と勿体なかった。出雲大社近辺は好きなんですが。松江はお城や地元の偉人等、もとからある資産を活用して、それに合わせて街を観光都市に作り替えているような感じを受けて良かった。




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