Marumaru's TinyPlaza
(2021.06.13)(book)悪徳の輪舞曲(ロンド)
『悪徳の輪舞(ロンド)』/中山七里
最近はまっているシリーズ。今回もとても綺麗な構成。綺麗過ぎて、あれ?これで終わり。と思ったぐらい。
構成は綺麗なんですが、シリーズの最初の方で感じた二転三転のどんでん返し+登場人物全員が事件に関わっていた感じが少し薄れたかもしれない。
主人公の御子柴も、悪魔に魂を打ったような血も涙も無い(ように見える)勝ちにだけ拘った裁判手法がヒール的で魅力だったんだけど、シリーズが進んで事件に関係者が関わる事が増えてくると、情に絆されたような描写が増えてきて、「これが…感情…?」みたいな展開になってきて、それはそれで好きではあるんだけど。あれか、壮大なツンデレを見せられているのか。
何だかんだで楽しんで読ませて貰ってます。シリーズ物でこれだけ面白さを保てるのはすごい。
(2021.06.17)(movie)映画大好きポンポさん
『映画大好きポンポさん』
最近、主線や影を彩度の高い色で入れる描き方をちょくちょく見るんだけど、個人的に大好きなのでもっと流行って欲しい。
それはさておき、物議を醸しそうな部分を先に書いときます。
原作漫画だと、映画への逃避から始まって映画が大好きで、映画に全てを捧げたジーン。それを映画版では「余計なものを切り捨てた」と解釈して表現してるんですよね。
漫画のジーンは映画に対し、愚直で泥臭くにどこまでも真っ直ぐ挑める人。だから2巻で脚本を書く時にスタートとゴールを決めゴールに辿り着くまで試行錯誤する、という方法を自分に合ってると言える人なんです。そういう好きなものに対しては良い意味での視野狭窄になり、倒れるまで頑張れてしまう。そして映画の優先順位をどこまでも上げられるいい意味での映画バカ。そんな狂気を孕んだジーンを通じて描かれる創造の狂気(3巻は特に)。
そして、少なくとも映画版の元になった漫画1巻では、そんな映画バカが「ポンポさんに喜んで貰う為だけに作った90分のフィルム」と言うところが話の見どころだと思っていました。
劇場版でもアレンがジーンに向けた「お前は下を向いていた訳じゃない、ずっと映画の方を向いていたんだな(うろ覚え)」というセリフまでは本当にその通りで、お、新キャラ良い味出してるじゃん。と思ったものでしたが、映画「MEISTER」の主人公をジーンが自分に重ねて、好きなものの為に他全てを切り捨てる。本当に大切なもの(MEISTERになぞらえてアリアと言っていましたが)の為に他の全てを切り捨てる。というところを通じて創作の狂気を描いていたような気がします。それがつまり劇場版のキャッチコピーである「幸福は創造の敵」なんでしょう。
うーん。私の解釈だと漫画版はMEISTERを90分に編集した事について、有名俳優復帰作の話題作だからと言って豪華絢爛の大作志向にするよりは、伝えたいエッセンスを素直に伝える90分映画にする。そしてポンポさんに喜んでもらえる映画にする。と言う比較的前向きな編集作業だと認識していました。
これは映画版の解釈(構成)なので良い悪いの話じゃないのは分かるんですが、映画版はMEISTERの映画を撮り終わって、主人公を自分に重ねている事に気づく。そして追加撮影の為に周りを巻き込んで奔走する。編集作業の途中で倒れる。でも、本当に大切なものを伝える為、自分の気持ちを映画で表現する為に、本当に大切なもの以外の様々なシーンを切り捨てて90分にまとめる。って感じにしてるんですよね。
何と言うか、1巻の内容に2巻3巻のエッセンスを加えようとした感じがします。それと物語に起承転結を付ける為に演出を強めた感じ。だけど、1巻の状態だとジーンが映画を90分で仕上げた理由は、いつも製作者だったから観客として映画を素直にエンドロールまで観られなかった少女=ポンポさんに喜んで貰う為、ポンポさんの事だけを大切に想って作った映画だった気がするんですよね。
と言う解釈の違いはあるものの、それはそれでこういうのもありかなって感じで割と楽しんで観れました。完全に原作漫画をなぞるだけじゃ面白くないとも思うし、結論を先に出してそこまでの経緯を後で描くっていう手法を多用してるのもアニメならではって感じで楽しめました。
ここからは細かいところ。
ポンポさんの声が本当に違和感なくてびっくりした。PV見た時はちょっと違和感あったんだけど、作中で聞いたら本当にぴったりはまってた。マーティンさんの大塚明夫さんも、本当にこの人しか居ないってキャスティングですね。
ミスティアさんの「〇〇にゃ~」が実際に聞くととても可愛い。ナタリーは(他の意見の受け売りだけど)作中を通じて新人さんが成長していく過程が感じられてよかった。
映画の着色が非常に鮮やかに彩られていただけに逆に気になっていた「あのシーン」。そうだよねー、一度モノクロにするよねー、って感じで。漫画版への尊敬を込めての演出かもしれませんが。映画版の構成だとあそこって大切なシーンの中の一つだもんね。
アレンのプレゼンのシーン、役員達のわざとらしい演技は演出として面白かったんだけど、クラウドファウンティングの為に会議を生中継する件はあまり好きじゃないかも。まあ、アレン自体が映画版のオリジナルキャラだしねぇ。
漫画の時はあまり思わなかったけど、劇場版だとポンポさんの「妖精感」がすごかった。浮世離れ感と言うか。
(2021.06.17)(movie)機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』
閃光のハサウェイ観てきました。が、原作小説読は未読です。高校の時に友達が読んでたなーってぐらいの感じ。なので細かい設定等は後から勉強します。
以下、取り留めのない殴り書き。
南国っぽいリゾートを舞台に行われるハサウェイとギギ、そしてケネスの会話・立ち振る舞いが格好いいんですが。と言うか、ハサウェイが落ちつき過ぎてて、どこの人生2週目って感じ。いや、第二次ネオジオン抗争生き延びたり、ゲリラで活動してたりして色々人生経験豊富なのは分かるんだけど、立ち振る舞いが賢者モード過ぎて怖い。
それを言うとギギもなんだけど、貴族だかがパトロンだったりしてるらく大人びた振る舞いと、扇情的なドレスっぽい服(スカートの丈短すぎるよね。でもエロくなってないのは流石)でこれガンダムだよね?と思いつつも、富野御大の小説原作なんだから人間をしっかり描いてるんだろう、と。読んだこと無いけど。
お互いにそれなりの立場のボーイミーツガールで物語の歯車が回っていく辺り、何となくガンダムUCを思い出したり、新型MSを宇宙空間で受領する辺り劇場版ガンダムWを……とか色々思ったんだけど、原作小説の出版年を考えると、後のタイトルの方がオマージュだもんね。下手な事言うもんじゃない。
それにしても、ハサウェイがマフティーだっけ。ゲリラに入った経緯が全然分からないのに(読解力無いだけ?)物語としてまとまってるのはすごい。3部作の1作目としてじっくり最初を序盤を描いてるなって感じで。なんでも逆シャアとはちょっと世界線が変わってるらしいんだけど、ハサウェイが第二次ネオジオン抗争(逆シャア)で1機撃墜したって言ってたけど、逆シャアだとチェーンのリ・ガズィとクエスのアルパの2機落としてるよね、多分事辺りの事だろうから後で確認しとこう。
で。これが一番言いたかったんだけど、逆シャアってシャアがララァの面影を追いかけながらアムロっていう好敵手との純粋な戦いを望む話だけど、閃光のハサウェイもハサウェイが思いっきり12年前のクェスの面影に囚われてて、特にハサウェイなんてマフティーとかに良い娘がいっぱい居そうな感じだったのに……いいぞもっとやれ、って感じで観てた。
しかし、ギギと言いクェスと言い、ちょっと生い立ちが複雑そうな不思議系ヒロインが物語を引っ張っていく構成、大好きだ。PV見た時に思ったんだけど、ギギの声ってクェスの川村万梨阿 に似てる気がする。敢えて寄せてるのかな?って思ったり。それか、ああいう感じの役柄はこういう声質が合うって事なのかもしれないけれど。
それと戦闘シーン。もう本当に格好良かった。10年前にガンダムUCを見て戦闘にシーンでゾクゾクしたのを思い出した。こういうMSの戦闘シーンの描き方って時代と共に進歩してるよねーっていう実感を持ちながら見てた。特に今回は大気圏下での実弾多めの戦闘だったから見ごたえがあった。
セル画でしか出来ないオーパーツ的な表現も魅力だけど、こと戦闘シーンに関してはCGを駆使した新しい作画手法との親和性が高い部分だとは思う。それよりも、今回登場するMSのΞガンダムとペーネロペーって両方肩パットみたいなシルエットが特徴な事もあって、ゲリラ故に夜間戦闘が多い劇中シーンだと、初見の自分は正直どっちがどっちかちょっと混同しちゃったり……。
んで、連邦。市街地を背負った陣取りで優位に立ったかと思えば、連邦側がそれを無視して攻撃して逆にマフティー側が戸惑ったり、上司の命令とは言い捕虜を人質にしたりと連邦の酷さを際立てる表現が多かったけど(カードの件も然り)、後の展開への伏線なのかな。しかし、連邦っていつも反乱されまくってるね、どんだけ腐敗してるんだと。そう言えば、アナハイムさん、またコウモリムーブっぽくて死の商人っぷりも健在。
そんな感じで続きが楽しみなガンダムでした。
余談1。会計監査局って聞くと、どうしてもカムランさんを浮かべてしまう。同じ眼鏡キャラだし。
余談2。風呂上がり(だっけ?)のハサウェイがギギのパトロン仕込み誘惑ムーブを、そんな女嫌いだと軽くあしらうくせに、クェスの事になったら冷静になれない辺り……若い頃に心の奥に刻まれた傷って深いなぁと。
余談3。ペネローペから落下した人質をΞのコックピットにダイレクトキャッチするシーン。この時代はコックピットへのダイレクトアタックが流行ってるのかと思ったりもしたけど、別に男同士でやられてもねぇ……女史の皆様が大歓喜!?とか思ったりしたけど。
(2021.06.20)(book)復讐の協奏曲(コンチェルト)
『復讐の協奏曲(コンチェルト)』/中山七里
最近はまっていたシリーズ、ようやく現状の最新刊まで追いついた。今回は事務所の事務員さん、洋子さんの冤罪を晴らす話。ちょっと恋愛要素もあって好きな感じ。
怒涛のどんでん返しがあって読みごたえがあった。やっぱり本筋の物語はシンプルで、その裏にある真実を暴く為に伏線を張る展開が良い。登場人物が綺麗に伏線として消化される構成が美しいと思う。
しかし、御子柴のツンデレっぷりが炸裂してるのも良いけど、そんな御子柴を信用している洋子さんも素敵。洋子さんは何となくのイメージでずっと五十路ぐらいだと思っていたから、30代半ばと知ってちょっと驚いた。
御子柴が過去に犯した殺人。そこからの更生、贖罪。被害者の関係者達とのあれやこれやがずっと付きまとう事で物語が進行していくシリーズ。過去は変えられないけど、自分を変える事で未来を切り開いていくような感じが好きです。
このシリーズって、1巻1巻を書こうと思えばもっと長く書けるはずなのに、さくっと読める長さでまとめてくれているのが良いなぁと思ったら、メフィストに連載していたんですね。個人的にメフィスト関係は好きな作品が多い気がする。