Marumaru's TinyPlaza

(2023.08.11)(book)殺戮の狂詩曲

『殺戮の狂詩曲』/中山七里


御子柴礼司シリーズの最新刊。かつて「死体配達人」として殺人を犯した経歴を持つ弁護士と介護施設で正義の名の下に大量殺人を犯した被告の介護士タッグと言う事で期待していました。この状態からどんなどんでん返しを見せてくれるのか、と。

なんですが、読んでいて少し不安だったのが本が妙に薄い事。内容を読んでいても、介護士に殺害された老人達の関係者からを回っているうちにどんどん頁が進んでしまう。あれ?このペースで行くと裁判を書くページが無くなっちゃう。熱い法廷バトルを期待してるのに、もしかして次巻に続くの?とか色々頭をよぎりました。

なんですが、この小説が描きたかったのは、熱い法廷バトルでもなければ、大どんでん返しでもない。普通の人が知らず知らずのうちに洗脳される過程と、その犯人は意外と身近に居るという構成の妙。

そして何より、少し前に話題になった「上級国民」という言葉に絡めて、どんな身分の人であっても人を殺めてしまった事実は覆らない。どんな言葉で武装しても、それは正義にはならない。人殺しの罪と向き合う・償うこのシリーズに通じるテーマを語っている作品だと思いました。

読後の何とも言えないやるせなさが印象的でした。




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