Marumaru's TinyPlaza
(2025.09.22)(book)滅私
『滅私』/羽田 圭介
やっぱり紙の本ならではのギミックがあると嬉しくなる。電子書籍でも再現は出来るけれど、実際に紙をめくって味わった体験には価値があると思う。
所謂、ミニマリストについて書かれた小説。なのだけど、それだけにとどまらない小説としての面白さが良かった。タイトルの意味を最後に回収して考える時間を持たせてくれるのは個人的に大好き。
本を読みながらミニマリスト、断捨離みたいなものについて考えていました。最低限のモノしか所有しない事で得られる、空間、思考判断の手間、お金、etc……。そのようなリソースを使って何をするのかが大切なのかもしれません。
断捨離自体に快感を覚えて楽しくなるのは趣味として良いのかもしれませんが、過度な断捨離は体験や人付き合い、ひいては好奇心の妨げになるのかもしれない。そして、情報をデータ化して持っておくのも一つの手段ですが、モノが劣化する事によって生じる時間の流れだけは所有出来ないのかもしれない。
私が過度な断捨離について懐疑的なので上手く言葉に出来ませんが、ミニマリストという生き方はどこまで行っても縮小再生産なところがあると考えているので、一人暮らしならともかく、配偶者を持って家族を構成する際にはやっぱり難しいのではないかと。
特に、子供を持つのであれば、これから世界を知っていく子供に対して、人格形成が終了し価値観が形成されきっている個人のエゴを押し付ける事になるのではないか、と思いました。
畢竟、ミニマリストと言うのは独り身で過ごす際の一つの選択肢であり、それ以上でもそれ以下でもないのかな、と。
