Marumaru's TinyPlaza

(2025.12.11)(book)成瀬は都を駆け抜ける

『成瀬は都を駆け抜ける』/宮島未奈


成瀬の最新作かつシリーズ完結作。

帯かどこかで見かけた「令和で一番売れた小説」みたいなキャッチコピーが印象的でした。このコピーを書けるのは本当に強いな、と。このタイミングでしか書けないコピーだと思うので、色んなものを味方につけている作品ですね。

シリーズ3作目ですが、ざっくりとそれぞれの巻で成瀬の中学時代、高校時代、そして大学時代を描いています。興味深いのは、成瀬のキャラクター(自分の芯がブレる事なく自由に進む)は、中学時代は良くも悪くも「出る杭」としてある種異質なキャラクターですが、高校そして大学時代になると、個性的ではあるものの中学時代のような絶対的なアイデンティティとはなり得ない事。

人生のステージが進み、関わってくる集団の母数の数も増え、それぞれが成長していく中で、成瀬のキャラクターは確かに痛快ですが、それだけでは物足りなくなってきました。これは進学した大学が特に個性の強い人が集まる京大だったのもあるかもしれません。

ですが、そんな成瀬の活躍を追っている中で、成瀬の行動の結果として成瀬自身にも数多くの誉れや技能が身に付き、何よりも成瀬が関わった人達の間で輪が広がり、様々なコミュニティが成瀬を中心に繋がっている。そんな様子を見られた事が読んでいて一番面白かった。

もちろん、相変わらずの文章の上手さや、小気味いい読みやすさ、時流を取り入れる感覚など、ヒット作となる要因は数多存在する作品ですが、素直に、真っすぐに、ポジティブに歩んだ結果の人間関係を目の当たりにして、読んでいる自分も元気を貰えて、少しでも気持ちを前向きにしようかと思える、そんな作品でした。

これで完結と思うと少し寂しいですが、このシリーズはここで終わるのが綺麗なのかもしれません。



(2025.12.22)(book)オルクセン王国史6

『オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~6』/樽見京一郎


遂に6巻となったこのシリーズ。『白銀の場合(ケース・ジルバーン)』もいよいよ決戦と相成りました。

この巻ではグスタフとディネルースはそれほど登場しません。グスタフの今までの段取り、アンファウグリア旅団の華々しい斬り込みを経て、戦争という大きなものがジワジワと確実に進行していく様子が描かれています。言うなれば非常に泥臭い展開が描かれた巻でした。

ですが、戦いは華々しい英雄だけでは薄っぺらく感じてしまうもの。それを支える一般兵達の泥臭さが戦いの描写に奥深さを出す事を、私達は過去から学んでいるはずです。

何よりも、オルクセン軍、エルフィンド軍両方の様々な兵士達の散り際が格好良かった。状況だけ見るとオルクセンが圧倒的優勢で終わると思われる戦いであっても、実際に軍がぶつかり合う戦争となれば、各戦地の前線では苛烈な白兵戦が繰り広げられているはずです。どれだけ兵站を整えて銃後の守りを行っていても、前線ではそれらを消費しながら戦い合っているのだな、と。

決戦という言葉の意味と覚悟を再認識した巻でした。

そして、いよいよ戦いは終わりへと向かう気配です。戦いの終わり、そしてグスタフの言うオークならではの弱さとはいったい。続きが気になって仕方ない。そして発刊ペースの早いコミカライズでこの戦いを読み直したい。そんな気持ちで一杯です。




<(2025.11.23)(movie)実写版 秒速5センチメートル (2026.01.04)正月休みにキャンプしてきた>