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(2014.06.23)一竹辻が花展に行ってきた

矢掛にある郷土美術館で辻が花展があると言う事で行ってきました。


辻が花と言うのは、着物に柄を付ける工程における絞り染めの技法です。布を糸で絞って蓋をかぶせ、その上から染色をする事で蓋をかぶせていないところが染められずに地の色が残ります。この絞りを例えば花の輪郭や、山の稜線そって施す事で柄に立体感を出す事が出来ます。

室町時代辺りでは染めと言えば「辻が花」とまで言われていたそうですが、なにぶん柄に応じた絞りを一つずつ作りそのあと染めると言う工程が非常に手間な上に、染色後に糸を解いてみるまで柄の全容が分からないと言う作成難度の高さから、江戸時代に一度衰退してしまいました。

その代わりに染め技法として台頭したのが友禅だと言われています。糊を使って防染する友禅は辻が花に比べれば模様を描きやすく、刺繍や箔も柄付けの手法として用いられるになったのも一因と言われています。

つまり、それまでは糸で絞って上からカバーをかぶせて染料が付かないようにして染め別けないといけなかったのが、糊をマスキングテープのように用いて色を乗せられるようになった訳です。このことにより、様々な柄が自由な発想で描かれるようになり柄に絵画的な魅力が生まれました。

そんな経緯でロストテクノロジーとなってしまった辻が花ですが、若かりし日に辻が花に魅せられた久保田一竹(1917-2003)さんが古典の辻が花の技法に氏の感性や技法を織り込み「一竹辻が花」として現代に蘇らせました。

その一竹辻が花は山梨にある久保田一竹美術館で堪能出来る訳ですが、矢掛町合併60周年事業の一環として矢掛にやってきました。矢掛なら比較的近場なので本当に辻が花を見る為に行ってきました。

そうして見てきた本物の辻が花は迫力がありました。あまりの綺麗さに圧倒されました。花や風景の柄に合わせて絞って色を付ける。言葉にすると簡単ですが、その絞りを振袖一枚分施し、色を付けて、尚且つひとつの作品として完成させる。それがどんなに技巧的に難しくて、手間的に大変で、芸術的に素晴らしいものであるかは誰が見ても一目で実感として納得出来るんじゃないかと思います。

そうなんです。実際に見て思ったんですが、一竹辻が花は芸術作品なんです。大名に掛けられた振袖一面を使って一枚の絵画のごとき風景をつくりあげる芸術。

だから、振袖自体がすごく力を持っているので、着る人を選ぶと言うか……誰にでも着こなせる代物ではない、そんな気がしました。そして、振袖としてのトータルコーディネートもすごく難しそう。

何にせよ、本物をこの目で見ることが出来たのは良い経験でした。




<(2014.06.17)金剛体とか和弓とか笛とか (2014.06.29)(tips)CubaseでMIDIファイルを鳴らす>