Marumaru's TinyPlaza

(2012.05.15)(game)比翼恋理のだーりん(ネタばれ有り)

『STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん』/PSP


 ※STEINS;GATE本編及び、比翼恋理のだーりんのネタばれありで書いています。未クリアの方はどうか読み飛ばして頂けると幸いです。クリア済みの肩はどうか読んで頂けると幸いです。感覚的には全部クリアした人と飲みながらグダグタと話している感じの文章です。

ネタばれの無い感想はこちら。
























本編だと、オカリンは自分の好奇心から送ったDメールによって過去を変えてしまい、その結果違う世界線に移動してしまった。その世界線の中ではまゆりが死んでしまうと言う未来が訪れる。そしてアトラクタフィールドの収束により、その世界線の中に留まる限り何をしようがまゆりの死亡という未来は訪れてしまう。その未来を回避する為に今まで送ったDメールの内容を取り消し最初に居た世界線に戻る-と言う流れで話が進んでいきます。

そもそも、過去に送ったDメールの内容はそれぞれのラボメンが叶えたかった願い実現する為のもの。そのメールを取り消す事は即ち、ラボメン達の願いを無かった事にしてしまう事。しかしDメールを取り消し世界線を変えないとまゆりは死んでしまう……。その為にラボメン達の望む世界を見た上でその世界を無かった事にするオカリン。そして観測者としてリーディングシュタイナーを備えるオカリンには記憶を維持したまま世界線を渡り歩く。

ああ、あらすじを書いているだけで記憶が蘇ってきてウルっときてしまう。とにかく本編での各ラボメンルートのエンディングを選ぶと言う事は必ずしも幸せな事だけではないんですよね。色んなものを捨て、心に覚悟を刻んでラボメンと道を歩んでいく、そんなエンドが多かったように思えます。

しかし、比翼恋理はファンディスク。本編ではあり得なかった世界線の上で展開する物語。登場人物が全員生存しているハッピーな状態で更にルートのラボメンとの新しい物語が進んでいきます。これは本当に嬉しい事です。なんていったって純粋にラボメンとの幸せな物語に頬を緩ませていれば良いんだから!と言うか、ギャルゲーだとそれが普通の展開のはずなんですが、まさかシュタインズゲートでそんな展開を見れると思っていなかったので嬉しい限りです。

Dメールにより改変された世界に対する観測者としての責任

比翼恋理のシナリオをプレイしていて、シュタゲ本編とは明らかに違う何かをずっと感じていてその違和感が何なのかを考えていたのですが、やっと分かりました。(※本編はラボメンルートシナリオに限定します。)それは、シュタゲ本編ではDメールによって変わった世界は「ラボメンが望んだ世界」なんです。そもそも世界を変える為にDメールを送った訳ですから。

ですが、比翼恋理では新ガジェット12号機を腕から外す為にDメールを送った結果、世界線が変わり今までと違う状況の世界になってしまいます。そこでオカリンは動画サイトに投稿する為にバンド練習をしていたり、女のルカから好意を持たれたりと身に覚えの無い事に巻き込まれますが、決して「Dメールで世界線を越えて来たから、この世界での今までの記憶がない」と釈明をしないんですよね。

いくらこの世界の自分が過去にした事とは言え、記憶にない過去の行動と今の世界を受け入れるオカリン。これって何気にすごい事だと思うんですよ。何故なら、私は自我とはそれまでの記憶の積み重ねで構成されると思っているんですが、急にその記憶の一部が欠けている状態になって、だけれども周りの人達は欠けた記憶を込みでの自分を見ている。

これって怖い事だと思いますよ、自分の考えが本当に自分の考えなのか、過去に居たはずの自分ならどう考えたのか。そもそも過去の自分は何を考えていたのか。よしんば他人から聞いたとしても、自分にはその実感が無い……。何と言うか自分の心が壊れてしまいそう。部分的に記憶喪失の人ってこんな感じなのかな。

そんな中でオカリンは訪れたそれぞれの世界線の中でオカリンである事を貫きます。厨二病だけれど、仲間を大切にし、仲間を信じて、仲間の為なら愚直に頑張れる。この辺りは声優さんの演技力もあるかもしれない。ゲームの台詞と言う会話の「間」が使えない演技なのに台詞中の間や感情の込め方が本当に上手い。これはオカリン役の宮野真守さんに限らずシュタゲの声優さん全般に言えることですが。

結局

オカリンは色んな世界線を渡り歩いてヒロイン全員と結ばれてキスしたのか、このリア充め!ギャルゲーだと当たり前な展開のはずなのに、シュタゲでそれをされるとすごい違和感を覚えてしまう。それに普段はだらしない格好だけれど、ちゃんとした格好をすれば超絶イケ面とか、何そのゲームみたいな設定(※ゲームです)。

ちなみにクリアした順序は以下の通り。

  • 紅莉栖→萌郁→フェイリス→るか→まゆり→鈴羽

まゆりを最後にすれば良かったかもしれない。

紅莉栖ルート

シュタゲ本編での事実のメインヒロインを張っていただけあって、比翼恋理ではお笑いラブコメ要素の強いサイドストーリーらしいサイドストーリーでした。とは言え、良いツンデレを堪能させてもらいました。ツンデレって言葉は使いやすい事もあって私もたまに使いますが、普段の厳しい態度があるからこそ、時折垣間見える照れた態度を取った時のギャップが映えますね。

それと個人的に紅莉栖ルートの肝は、「紅莉栖ルートに至るDメールは紅莉栖自身が送信した」と言う事。実は何だかんだで紅莉栖ルート以外へのルートはDメールの送信ボタンをオカリン自身が押しているんですね。だけど、紅莉栖ルートだけはオカリンの優柔不断に業を煮やした紅莉栖が携帯を取り上げて送っています。

つまり、紅莉栖ルートへ至るトリガーは(結果的にですが)紅莉栖が引いている。そしてその世界線の中でオカリンは紅莉栖に気持ちを伝えている……って考えるとちょっと面白くないですか?(笑)紅莉栖は自分の望む世界を自分の手で作り上げて、オカリンを自分に惚れさせた、とまで言ってしまうのはちょっと妄想入っていますが、実はマッドサイエンティストだったのは紅莉栖だった、みたいなね。紅莉栖ルートをクリアした時にそんな事を考えてしまいました。

正直、シュタゲ本編を全部使って紅莉栖の魅力を伝えてもらったような気がするので、比翼恋理のシナリオはサイドストーリーらしいサイドストーリーでしたと言う月並な感想です。

萌郁ルート

萌郁は本編で個別ENDが無かった事やもともと敵方のキャラクターと言う事もあり、シナリオを展開させるのが難しいキャラのように思えます。CDドラマの「暗黒次元のハイド」にゲームとしての体裁が付いたというような感想を持ちました。比翼恋理の萌郁ルートとドラマCDだと設定は全く違うんですけどね。普段無口な萌郁のメールを通じて語る時のハイテンションのギャップ、同じく普段無口な萌郁がデレた時の健気な感じ。そして萌郁が無口になった理由。FBとの絡み。萌郁のシナリオはどうしてもそうなりますよね。

カップルとして見た時に、男性であるオカリンより年上の働く女性であり、お酒好きで片づけられない性格で食事はインスタント中心と言う公の場では格好良い働くお姉さんだけど、私生活では隙があるっていうのが魅力です。プレイヤーはその公私の姿を共に神の視点から見ているから、「普段はしっかりしているお姉さんだけど、私生活では……」と色々考えさせてくれる設定。すぐに浮かぶキャラだとエヴァのミサトさんや花咲くいろはの巴さんに近い位置づけ。

余談だけど、萌郁さんって胸が大きいよね。白カッターシャツとの合わせ技が素敵。

フェイリスルート

面白かった。本編のファイリスルートも好きだったけれど、比翼恋理ルートも良かった。普段は萌えキャラで振舞っているけれど、根は賢くて経営者の純真お嬢様って言う留未穂の設定自体が好きです。王道は上手く味付けをすれば至上の旨みを引き出す素材なんです。

猫耳と名前をペルソナにして、普段はメイド喫茶の萌えメイドを演じる留未穂。生い立ちと境遇故に、話し相手の瞳の中を読んで自分の瞳は読ませない留未穂。そんな留未穂が心を許したオカリンに垣間見せる健気さが良いんです。そして留未穂に心を開かせたオカリンの心遣いと真っ直ぐな信念がまた格好良いんだ。性格のギャップに関しては「ツンデレ」が有名になりすぎた嫌いがありますが、こういうギャップも良いと思うんだけどな。

比翼連理のフェイリスルートと言えば、留未穂がオカリンにかけた2段階の魔法。即ち、「(オカリンが)本名(留未穂)で呼んだ人の事が好きになる」魔法、だけど実際は……「(フェイリスが)本名(留未穂)で呼ばれた人の事が好きになる」魔法。あーもう、この部屋をゴロゴロしたくなる甘い展開は何なのよっ!?

この台詞自体は言葉遊びに近いものがありますが、つまりは「惚れさせてあげようと思ったら何時の間にか自分が惚れてた」留未穂の健気さにこちらまでメロメロです。そして2つ目の魔法を自分で冗談と笑い飛ばすところまでがお約束。もう魔法の力なんて借りなくても、留未穂とオカリンの間には確かなものがあるのだから。

それにしても、書いてて思うんですが、これは感想と言うより自分のキャラクター愛の垂れ流しですね。自分のサイトの日記だから今更気にしませんが。

るかルート

正直、男のままのるかにオカリンが本気で転ぶとは思わなかった……。外見や性格は置いておいて、やはり男性が男性に恋愛感情的な好意を抱くシナリオと言うのは理解しがたい部分があります。「男なのに仕草が可愛いからドキッとする」と言った相手からの行動に対してこちらの感情が動く、ならまだ分からなくもないのですが、男性の相手に向かってこちらが恋愛感情を向けるのは上級者向け過ぎました。

正直、男の娘や両性具有辺りのムーブメントに関しては、(広くは無い)世間的にどれだけ盛り上がろうが、良さが分かりません。と言うか別に分からなくても良いや。しかし、そう思っているからこそ、その高く厚い壁を「男だろうが女だろうが問題ではない」と言う信念のもとに軽々と越えてしまったオカリンに人間としての器の大きさを感じました。いや、これは割と本気で。

まゆりルート

事実上、今回のメインヒロイン。

シュタゲ本編だと、紅莉栖ルートとトゥルーENDに行く為に複雑なフラグ立てが必要で、それ以外は順当に行けば最終的にまゆりルートに行きつく流れでしたね。比翼恋理だと順当に進めば各ラボメンENDとセットで紅莉栖ルートをクリア出来る流れになっています。そうしてメール返信によるフラグ立てが必要なのがまゆりルート。

本編はまゆりと幼馴染の状態から始まり、途中で紅莉栖と出会う→紅莉栖死亡から物語が始まり、物語の大きな流れがまゆりの死亡を防ぐ事なので、各エンド終了時の状態は次のようになります。

  • 紅莉栖END →紅莉栖消失(出会っていない事になる)、まゆり生存
  • まゆりEND →紅莉栖消失(出会っていない事になる)、まゆり生存
  • トゥルーEND→紅莉栖生存、まゆり生存

状況だけ見ればシュタゲ本編における紅莉栖ENDとまゆりENDってほぼ同じなんですよね。違いは、紅莉栖がオカリンに気持ちを伝えるかどうか、紅莉栖がオカリンを好きな状態で別れを選ぶ、という部分なので心情的には違いますが。

本編では、まゆりの死亡を回避するのが物語の大きな目的であり、その為の動機となるオカリンがまゆりを人質に取った理由、オカリンのまゆりにたいする気持ちは描かれていましたが、オカリンとまゆりの関係を描いた描写はすこしなおざりになっていました。対して、オカリンと紅莉栖の関係はタイムマシン開発に始まり世界線移動、トゥルーへ向けた紅莉栖死亡回避と本編を通じて描かれていたのでシュタゲ本編を通してみるとどうしても紅莉栖がメインヒロインの扱いになってしまいました。

ですが、比翼恋理ではまゆりのオカリンに対する気持ちが描かれていたのが良かった。人質になった時から今に至るまで、少しおバカな言堂の裏に秘めたオカリンへの想い、そして紅莉栖と言うライバル登場が登場してからの嫉妬心、自己嫌悪。そして雑誌モデルの撮影を通じて改めて気づくまゆりの成長と女性としての魅力。

そして、まゆりの引越しと言う環境の変化を通じて改めて気づく、オカリンのまゆりに対する気持ち。「まゆりだっていつまでも子供じゃないんだよ?」紅莉栖のこの台詞が良い味出してました。ロボまゆしぃの台詞でひっぱる伏線もベタだけどウルっと来てしまいました。

だけど何より、(勘違いしていたとは言え)オカリンのプロポーズですねー、やっぱり。オカリンのいざって時の行動力と勢いが本当に主人公らしくて格好良いし羨ましい部分です。

全体的に見れば幼馴染とのベタな話かもしれませんが、まゆりの死亡が無くなった世界線の上で、二人の気持ちが繋がってハッピーエンドに向かう展開は見てみて本当にニヤニヤ出来ました。

シュタゲ本編ではまゆりの悲しみを、ドラマCD「無限遠点のアークライト」ではまゆりの強さを、そして比翼恋理ではまゆりの想いを感じることが出来ました。シュタゲの展開的には紅莉栖のメインヒロインは仕方ないけれど、オカリンとまゆりには本当に幸せになって欲しい。

ここまで書いておいて何ですが、まゆりの写真撮影の時のドレス姿とオカリンの妄想の中のまゆりは可愛すぎて世界がヤバイ。とりあえずセーブデータは保存した。

鈴羽ルート

ちょっと違うけれど、田村ゆかりさんの母娘1人2役が聞けるシナリオ。鈴羽の母親である阿万音由季が後ろ姿とは言え登場している貴重なシナリオ。なんでも設定資料集では阿万音由季のイラストが普通に登場していたらしいんですけどね……って書いたところでちょっと気になって調べてみたら、カードゲームのキャラクターカードとして普通にイラスト化された画像が出てきてしまった。探しておいてなんだけど、こういうのは想像の中で楽しんでいた方が良かったのかも。阿万音由季の外観が想像とちょっと違っていました。

それは置いておいて、タイムトラベルものにおける過去改変とループは考え出すと頭が痛くなりますね。過去に起こったAという事象はこれから自分たちが過去に行って行ったBと言う事象の結果です、みたいな展開。つまり、これからの未来に過去で実行した事の結果が現在に既に反映されている状態が発生していると、頭の中も考えがループしてこんがらがってしまいます。

タイムトラベル物を考える時は、キャラクターの自我をどこに置いて楽しむのが良いんだろうか。深い事を考えずに今読んでいるシナリオのキャラクターの事だけ考えて、他の世界線に居るキャラクターの自我なんて考えなくて良いんだろうか。

鈴羽ルートと言いつつも、実質ダルとリアル嫁の馴れ初めの話でしたが、恋は盲目ですねぇ。ダルのシナリオ中での表現はかなり誇張が入っていますが、似たような状況は誰もが共感出来るような事。オカリンの忠告もシナリオ中では「お前が惚れたのはお前の娘だ!」っていういかにもシュタゲ的な笑い話ですが、ダルの立場だと他の人からの進言はこんな荒唐無稽の事に聞こえるんですよ。って言う比喩で描かれている気もしました。

結局は鈴羽への一目惚れを脱して、コミマ会場で出会った阿万音由季に一目惚れして史実通りに戻る訳ですが、抱きつかれるよりは、馴染みのコミマ会場で転んで怪我してハンカチで手当てしてもらう方がシチュエーション的には上だよなーと妙に納得しました。そりゃ、持ってる花束でそのままプロポーズするわ、と。

だけど本当にすごいのは、そんな状況でも引かずに「友達から始めましょ」とある意味天然な対応を返した音由季さん。流石ダルの嫁ですね。しかし、新進気鋭のコスプレイヤーをデビュー時からお友だちになれるなんてダルが羨ましすぎる(笑)




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