Marumaru's TinyPlaza

(2012.01.21)(book)僕はかぐや姫

『僕はかぐや姫』/松村 栄子


ネットを眺めていると、「今年(2012)のセンター試験の現国がヤンデレ」みたいな記事を見つけました。

嬉々として問題を読んだのですが、ヤンデレ部分が思ったより少なくて落ち込んでいたところに、「2006年の国語は僕っ娘!」と言う情報を見かけました。今度こそと問題を読んでみたところ、文芸部のメンヘラ厨二病のヒロインが出てきたので、期待に胸ふくらませて原作の小説を読んでみる事にしました。

何というか酷いきっかけですが、テストの問題がきっかけで興味を持った作品は意外と数多くあります。例えば、辻 仁成の『海峡の光』や、今村 仁司の『近代の思想構造』等ははテストがきっかけで出会いましたが、問題を解いているうちに内容が気になってしかたなくなってしまい、今でも自分の本棚に並んでいる本です。

学生時代というもともと多感な時期に加えて、テストの緊張感の中で集中して読んだ作品の印象は普段に増して強く心に刻まれるんだと思います。実際、テストを解く段においても、登場人物の気持ちに自分の心情を重ねる事が出来れば勝ちですものね。逆に、間違って変な妄想をしてしまうと完全に終わってしまいますが……。


閑話休題。『僕はかぐや姫』の感想ですが、誰しもが思春期に一度は考えるであろう、私(自我)とは何か?に端を発する自分自身への問い掛け、それに対する回答を登場人物の視点で綺麗に描かれています。

綺麗。そう、言葉が綺麗なんです。まるで詩集のような澄み渡った透明な言葉遣いが読んでいて本当に気持ち良かった。図書館で借りた本じゃなかったら、読みながらアンダーラインを引いていたであろう、そんな本でした。

気持ちを自分の内側に向けた時、自分の真ん中で輝いている魂の輝きはとても美しいけれど、それはとても傷つきやすくて脆いもの。だから、少々の事では傷つかないような殻で魂を覆う。それが大人になると言う事。それが「私」になると言う事。

冒頭で厨二病とか言ってしまいましたが、流石にセンター試験で抜粋されるだけの作品でした。出来れば、15年ぐらい前、それこそ学校でテストをしていた時代に出会いたかった本だったなぁ、と。




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