Marumaru's TinyPlaza

(2019.12.16)(book)グランドシャトー

『グランドシャトー』/高殿円


すごく面白かった!一気に読んじゃった。『medium』に続き小説のヒットが続いて嬉しい。

しかし、高殿円さんの作品はジャンルは違えど、どれも登場する女性が強くて格好良い。芯をしっかりと持っていて行動的で、とても賢い。

と言うか、高殿さん自体がすごく賢い人だと思う。どの作品も構成が練られていて、広げた風呂敷は必ず綺麗に畳むから。そして途中の脱線や中だるみが無いんよね。それに純粋に文章がとても読みやすくて引き込まれる。

物語は大阪の京橋を舞台としたキャバレーの話。諸事情からそこに転がり込んだ女性の一生を描くお話。これだけ書くと、『女帝』みたいな感じなんだけれども、戦後の昭和から平成初頭までの激動の時代の中でキャバレーの在り方や、一度落ちぶれたキャバレーを再建したりと、池井戸小説のような要素が熱い。

でも、一番のテーマは、人生の中で拠り所となる大切な人についての考え方だと思う。ヒロインのルーにとっての拠り所となる真珠さんとの関係の描き方がとても心に感じるものがありました。

時間が経てば時代も移り変わる、周りの人の年を重ねる、自分自身も、そして自分の大切な人も。熱く激しく生き抜いていく中で、何が本当に大切で、何処が自分の安らげる場所なのか。自分は何の為に生きているのか。

ルーが華々しく活躍をして成功を収める横で、それを見守り、心の支えとなっていた真珠さんの存在。母性にも似た慈しみを感じました。だからこそ、最後の方は展開が分かっているのに読んでいて目頭が熱くなっていました。




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