Marumaru's TinyPlaza

(2022.07.14)(book)にごりの月に誘われ

『にごりの月に誘われ』/本城 雅人


新聞の書評を読んでいて、ゴーストライターの話という事で興味を持ちました。

90年代半ば、ワープロの修理から始めた会社が成功して富を築いた社長が死を目前にして、自叙伝を出版する事になり、その執筆を今まで何度か自叙伝の執筆を依頼しているゴーストライターに頼むという話。

執筆の為のインタビュー内でのベンチャー企業時代の話が読んでいて一番面白かった。インターネットが復旧する前の混沌としたパソコン界隈の話って自分も多少経験として分かる分、読んでいて面白いです。混沌の先に輝かしい未来が待っていて、最初に行動をしたものが時代を掴む、そんな希望に溢れた時代。

内容としては期待していた程ではなかったかも。会長の親友・友人関係を絡めてゴーストライターとして執筆させようとした理由、その裏に潜む会社継承の策略……。

うーん。インタビューを通じて主人公が調査をして人間関係の謎を解き明かすという展開が魅力なんだと思いますが、物語のキモとなる托卵の部分が割と早くから予想は付いていた割に、それでずっと引っ張って最後のオチも少し弱かったかな、という感じ。

あと、この展開だったらザッピングでの視点切り替えはあまり要らなかった気もする。インタビューをしながら裏で意思疎通をする展開は熱かったんですけどね。

それと、出版業界の闇に切り込む!って帯でしたが、あまり切り込んでない気がする。



(2022.07.18)(book)痴人の愛

『痴人の愛』/谷崎潤一郎


たまに見かける話題で、相当に官能的な話であっても文学作品として出版されていれば名作として正当に評価されている、みたいなのがあります。要は文学作品って固そうなの多いけどエロいから読んでみろよ!っていう文学への導入ネタなんですが。

その中でよく挙げられるのが、川端康成の『眠れる美女』、そして谷崎潤一郎の『痴人の愛』です。他にもあるんですが、この2作は漏れなく入っている気がします。

私は、自分の知る中で川端康成の紡ぐ日本語は最も綺麗で嫋やかなもののひとつだと思っているので、その才能を遺憾なく発揮して書かれた『眠れる美女』の耽美的で倒錯した世界はとても好きです。「老人が眠っている少女を夜這いする話」と一言で要約出来ない事もない話ですが。

それはさておき、今回、後者の本を図書館でたまたま見つけたので読んでみました。

うーん。順番が完全に逆だけど、00年代に流行ったエロゲの空気を感じる!猟奇だったりグロだったり、耽美、背徳、退廃、哲学、この頃のエロゲってただ単純にエロスを求めるもの以外に、年齢制限付きの媒体でしか表現出来ないものを作り出す空気に溢れてた気がします。最近のを知らないので、ただの昔語りかもなんですが。

ここまで書いて、さあこれから本の感想を書くぜ!と思ったのものの言葉が出てきません。

魅力的な女性に出逢い、自分の価値観を根底から覆し、生きる意味になるよう蠱惑的な女性に出会える事は幸せなのか不幸せなのか。っていう一言に集約されちゃうんですよね。

その愛が自分だけに向けられているものではないと分かっていても、それでも猫のようにすり寄られると気にせずにはいられない、気づけば夢中になって現を抜かしている。そんなヒロイン、ナオミの蠱惑的な魅力を堪能する作品だと思いました。

多分、読む人によってすごく印象が違う作品だと思いました。奔放と言えば聞こえはいいですが、独自の貞操観念を持つナオミに嫌悪感を抱く人もいるでしょうし、見方によっては貢ぐ君になっている主人公を情けないと思う人も居るでしょう。

だけど、私はお互いの責任の上で人生を謳歌しようとしているこの二人の物語がとても好きでした。



(2022.07.26)初めての泊りキャンプに行ってきた

ってことで、初めて泊りのキャンプをしてきました。

知り合いから声を掛けて頂いて、定期的にキャンプをしているグループのキャンプに混ぜて貰いました。なんでも、キャンプの場所を日にちを決めて、それぞれが行きたい時間に設営して、帰りたい時間に撤収。でも夕飯は一緒に食べて語りながら飲みましょう、ってスタンスみたいです、色々と良いとこ取りで最高。

で、仕事を少し早く切り上げて向かう予定だったんですが、こんな日に限ってドタバタしていたので、場所に到着した頃には日が陰っていました。早くしないと暗い中での設営になってしまう!

何とかケース1つに詰め込んできました。で、慌てて設営をしていたら、周りの人が色々コツを教えてくれたり、手伝ってくれたりして何とかギリギリで設営終わりました。手伝って貰ったと言っても、大事なところは自分でしないとソロの時困るからと、メインの部分はやらせてくれる優しさ。

んで、今回、他の人が映ってたり忙しかったりで写真が殆どないです。

とりあえず翌朝に撮った自分のサイト周り。テントを初めて張れて満足です。

朝食風景。この時期でも早朝は半袖だと少し涼しいぐらいの気持ちいい気候。炭火で炙ったパンとコーヒー、そしてポタージュスープでかなり満足。

なんですが、参加者がみんな気をきかせて朝食を全員分用意してたもんだから、朝の6時とかから肉厚チーズハンバーガーとか、ハンバーグとか、チーズ入りウインナーとかシュウマイとか色々食べてかなり苦しい、でも幸せ。

家に帰って片付け。今回は焚火調理をがっつり出来たから、クッカーが良い感じの色に育ってきました。初めて導入したケトルも良い仕事してくれました。

で、色々を思った事を忘れないうちに箇条書き。

  • 最初はタープの下で初導入のコットを使って寝ようとしてたんですが、虫が多かったりで、テントにマットで寝ました。ソロテントの秘密基地感が素敵。ただ、荷物置く場所が外になるのは仕方ないけど少し残念。やっぱり前室がちゃんとあるテントがいいなぁ。
  • ワークマンテントのキャノピー、ポールを延長して使っても下に座って日差し除けに使うには少し低くて面積も狭いかも。テントの中で胡坐を組んだり、グランドチェア使うならいいのかも。
  • 今回一番感動した事。4合炊き飯盒で1合炊くのは少しスペースを持て余すんだけど、中蓋にお米入れて蓋をして直接火にかければ良い感じで炊けるんですね!メスティンみたいな感じ。中蓋を直接火にかける発想が無かったので、教えて貰って本当に助かりました。
  • 飯盒って、本体と中蓋とハンドル付きの蓋で、最大3つの調理が同時に出来る……なんて素敵なギア。
  • ランタンの芯が出なくなったから家でメンテナンスしてた。ばらして組み直すと仕組みも分かって愛着も湧く。
  • 椅子につけるポケットか、道具を吊るすハンガーが欲しい。テーブルの上が散らかって大変。
  • ほりにし最高。
  • 他の人が言っててすごく納得したんだけど、就寝時にお互いが自分のテントに入ってチャックを締める音が夜に響いてる時間ってキャンプって感じがする。
  • 夜露がすごくてテントやタープがぐっしょりしてた。家で乾かしてしまったけど、出来るなら自然に乾くぐらいの時間まで現地に居たいところ。
  • シェラカップが何にでも使えて本当に便利、もう一つぐらい欲しい。
  • 四角のターップって色んな張り方出来るんだね、ピラミッド張りってのが簡単で格好良くて実用性高そうだった。
  • 明るいメインのLEDランタン必要。オイルランタンは雰囲気。
  • 汁物を作るならお玉必須。
  • 100均のウォータバッグ大活躍。

いやー、でも本当に楽しかった。やっぱりテントで泊まってこそのキャンプって感じがした。テントの中でも割と普通に寝られた。

ただ、朝食食べてすぐに撤収してそのまま仕事だったから本当に疲れた。そんな日に限って最高に忙しいし。余裕持ってキャンプやりたい。



(2022.07.27)(book)信仰

『信仰』/村田沙耶香


新聞の書評欄で気になったので。

「信仰」をテーマにしたショートショートかと思って読み始めたんですが、私には詩集に感じた。ただ、最初の1編である『信仰』はショートショートだと思った。

自分が当たり前に持っている価値観、それは自分にとっては当たり前のものであっても、現代ではない時代、日本ではない国、そして地球ではない場所だと、大きく異なったものになる事は想像に難くない。そんな価値観を読者という神の視点から俯瞰する事で、当たり前だと思っている事の不確実性を気づかせてくれる。

そして、異なった価値観同士が意思疎通を行う事の危うさをテーマに綴られた詩集。そんな風に感じた。

「信仰」という言葉は難しいですよね。意志や信念より更に上位の存在。自らの考えではなく自然と思う・動く、本能のようなもの。そして、後付けで付与出来てしまうもの。

余談ですが、昔、関西にFaithっていうPCショップがありました。今はどうなってるんだろ。




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