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(2024.06.09)(book)成瀬は天下を取りにいく

『成瀬は天下を取りにいく』/宮島未奈


2024年本屋大賞を始め数々の受賞により15冠を達成した異例のデビュー作。みたいな触れ込みで紹介されていたので気になって借りてきました。が、その時点で図書館の予約20人越え。話題の本は知った瞬間にリクエストかけても結構な予約が入っていました。みんなチェックしてるんだね。しかし、田舎だから20人程度の予約で済んだのだ、と好意的に解釈する事にします。

そんな訳でやっと順番が回ってきたので読みました。ちょっと個性的な女子高生が活躍する短編集です。とにかく文体が読みやすい。最初の1ページでがっつりと引き付ける導入は流石の15冠作品。短編集です。

話の内容も面白かったんですが、主人公の性格が好き。とにかく何でもやってみて、ダメだと思ったらそこでまた考える。もしダメだったとしても「やった」という事実が残る。この考え方は本当に素敵だしその通りだと思います。

例えば、漫才コンビを組んでM-1に出ようとする。頑張って漫才のネタを考えて実践して改善していく。結果はM-1の予選落ちかもしれないけれど、「漫才コンビとしてM-1の予選に出た」と言う事実は残る。

例えば、「髪は1か月に1㎝伸びる」という通説を確認する為に丸坊主にして一か月ごとに長さを計る。結果的には途中で前髪が鬱陶しくなって切ってしまう。けれど、自分の一か月に伸びる髪の長さを知れたという事実は残る。

そうなんですよね。まずやってみようと思う事が大切で、細かい部分はやりながらトライ&エラーで直して行けばいいんです。直すべきところも実際にやってみないと見えてこない。やろうと思い立つ事、それを実際にやってみる事。そんな姿勢に羨ましさを感じながら、そんな成瀬が活躍する青春を読みながら追体験する事はとても気持ちよかった。

そして特徴的だったのが、2つ目の例を実験を途中で止めると決めた時、周りの友達が「なんで止めたの?成瀬はやり切ると信じていたのに」と言葉をかけるんですが、この言葉って優しいように聞こえて本当に自分勝手な無責任なんですよね。実際でもこういう事ってよくあります。やってない人ほど安全な場所から身勝手に無責任にあれやこれや言うものです。




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