Marumaru's TinyPlaza

(2023.05.02)(book)瓶詰の地獄

『瓶詰の地獄』/夢野 久作


Twitterの「好きな鬱小説」9位の作品。


鬱小説と言うか、3本の瓶の時系列はどうなのかが読者の判断に委ねられているからモヤモヤする。「瓶の順番」と言う視点で考えてる時点で作者の術中なんだろうな。そもそも瓶の内容が現実なのかどうかも分からないし。

ただ、結末だけは冒頭に事実として確定しているので、どう足掻いても最後は……。と言う意味では鬱になる。


理性の象徴たる聖書を燃やして妹のもとに向かった時、文化の象徴たる住み家も一緒に燃えてしまったというのが印象的。

3つの手紙が全て事実だったと仮定すると、3→2→1が話的に綺麗なんだけど、そうすると鉛筆の芯の件が整合性取れない。そもそも、整合性が取れないように出来ているんだろうし、1本目の瓶(の手紙)に出てくる船も現実なのか幻なのか、こうやって考えれば考える程に思考がグルグル巡るのが作者の思うつぼなんだとは思う。

シュレーディンガーの猫よろしく、重なり合う物語を瓶の順番を使って読者の手で確定させて下さい、っていう話なんだろうな、と。だけど、結末は確定しているので、せめて途中の物語は確定させないまま数多の可能性と一緒に島の中でそっとしておいてあげるのが良いのかもしれない。




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