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(2023.08.08)(book)りゅうおうのおしごと!18巻

『りゅうおうのおしごと!』(18巻)/白鳥士郎


登場人物が微妙に現実とかぶっていたり、現在の将棋界の時流を取り入れていたり、現実に追い越されそうになっていたり、色んな意味で将棋の"今"を描いているので、今この時にリアルタイムで読める事にとても幸せを感じているシリーズ。

最新刊ですが、このところはフィクションならではの展開で、天衣がAI将棋に注力し将棋というゲームの答えを見つけかけるところまで来ていました。それは相入玉による持将棋。そんな既存の将棋とは全く異なる展開に帰結しかけた将棋の姿。

その未来を天衣から見せられた八一は、将棋の未来が見せる地獄のような焼け野原に絶望しかけていた。そんな現実とは少し異なるIFの世界を描いていた最近の展開に、面白さを感じながらも一抹の疑問も覚えていました。

ですが、この18巻はそんな不安を払拭してくれました。AIとの対戦では地獄のような焼け野原であっても、鎬を削り合っているライバルとならば、そんな地獄も案外悪くないのかもしれない。そして、(現実とは少し違う)入玉宣言法を作った人は、相入玉という普段なら滅多に出ないであろう場面まで事細かに想定してルールを作っていた。それは紛れもない将棋への愛に他ならない。

そんな、AIによって地獄のような未来が見えたかに思えた将棋という競技ですが、結局は棋士と棋士との対戦そのものの熱が一番の魅力であり面白さである。藤井聡太先生の言葉を借りれば、棋士達が紡ぎ出す「盤上の物語」こそが将棋なのである。そんな結論に導いてくれたこの作品に本当に感謝しています。

あと2巻で完結を迎える事が発表された作品ですが、最後まで物語の行く末を見守っていきたいと思います。しかし、本当に登場人物が悉く将棋でしか物事を語れない将棋馬鹿ばかりで愛おしい。




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