Marumaru's TinyPlaza

(2011.07.03)(book)ファミリー・アフェア

『ファミリー・アフェア』/村上春樹


村上春樹の短編集『パン屋再襲撃』に収録の短編。話題になっているのは前々から知りつつもなんとなく読む機会が無かった作家でしたが、知人から短編をお勧めされた事もあり、それならばと思いさくっと読んでみました。

この人の文体って不思議ですね。状況を並べる事で心情を表現している気がする。

そんな事よりも、社交的でしっかりもので結婚を控えた妹と、偏屈で理屈っぽいプレイボーイの兄が居て、妹が兄にいつも事とを言っていると言う設定が(兄がプレイボーイと言う以外は)私のリアルにかなり近いので、読んでいて複雑な心境になってしまいました。

しかし、人間の書き方がリアルですね。妹が結婚する事になり、結婚相手の事を知らない親が仕事や出身校を始めとする彼の事を聞いたり、妹の彼を家に招待する時に大人らしい振る舞いを求める妹、それに反抗してしまう兄。この辺りの家族間の温度差の書き方が本当に上手いと思った。映画「サマーウォーズ」で祖母が無くなった後の葬式の手配をするシーンを思い出しました。

兄は、お互いいい年の大人なんだから他人のプライベートには干渉しない。と言うが、妹は「それは本当の大人の生活ではない」と言う、本当の大人の生活と言うのはもっと人がぶつかり合うものだと言う。この部分、読んでいて妙に考えてしまった部分でした。

正直、「面白いか?」と聞かれたら返答に困る話でしたが、そもそもこの作者の小説でストーリー云々を語るのは間違いなのかもしれない。それよりも、会話や状況の積み重ねで描かれる雰囲気や登場人物の感情の機微を楽しむのが良いのかもしれません。

村上春樹が好きな人からは「短編を1つ読んだだけで村上春樹を語るな」と怒られてしまいそうですが、短編を1つ読んだ時点での私の素直な感想です。




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